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毎日授業で爆睡している俺だが、何故か餌付けされている件について

作者: おかゆのおにぎり

季節は秋、10月上旬。


夏休みが明け、はや一ヶ月と少しといったところだ。


道行く人々は薄手の長袖に身を包み、いかにも秋といった様子の服装だ。並木道を走る自転車に乗った高校生も、夏服とはまた違った雰囲気の明るめの茶色をしたブレザーを着て、颯爽と過ぎ去っていく。仲睦まじく手をつないで登校するカップルもチラホラと見られ、それがまた街の雰囲気に華を添えている。

そんな中。


「あー、頭いてえ。やっぱ見たいアニメがあったからって、2徹したのは無茶だったか。クソ、今日までいけると思ったんだけどなー」


そんな雰囲気も何もあったもんじゃない、朝からどうしたんだよと聞きたくなるような不機嫌な声のトーンで何やらブツブツと独り言を呟く不審者が一人。


誰であろう、この俺だ。いや、ほんと高校の制服を着てなかったら通報されていたのではなかろうか。


まあともかく、そんなわけで深夜アニメを月曜日の前日(というか当日の夜明け)まで見ていたダメ学生の見本こと、白坂健人でーす。


この一連の流れからも分かる通り、俺はかなりのオタクだ。それも、自分の趣味のためなら周りからどう思われても構わないとか思っているタイプの、オタクの中でも厄介な種類のオタクである。


当然のことながら、友人はいない。や、別にコミュ力が無いわけではないんだが、高校に入ってからずっとこの生活を続けているせいで、そういった友人関係を構築するということができなかったからだ。


別に深夜までアニメを見ていようと、友達を作ること位できるだろうと思うかも知れないが、俺の場合は話が変わってくる。


まあ、その辺の話は学校についてからでもするとしよう。


現在俺が悩まされているのはそういった対人関係のことではなく、もっと別のことである。


いや、これももしかするとある意味対人関係に含まれるのかも知れないが、ともかく、俺の悩みを聞いてほしい。


結論から言おう。俺は、クラスの女子に昼ごはんを食べさせられている。


・・・いや、待ってくれ。そんな意味不明なものを見る目で見ないでほしい。話を最後まで聞いてくれ。別に今まで昼食を取ってこなかったとか、そういう話では無いんだ。


そうだな、、、わかりやすく言うと、俺は昼休みになるたびにクラスの女子に、俗に言う「あーん」というものをされているのだ。

待て待て、落ち着け。自慢ではない。ただ純粋に、どう反応したらいいか分からないんだ。それに、俺に対して恋愛感情を持つひとがいるといわけでは無い。と思う。


そして、ことの経緯を話す上で、先程言った俺の友人関係の構築についての話も関わってくる。


ーーーっと、いつの間にやら学校に着いてしまった。ちょうどいいタイミングだし、ここで一つ俺の学校での過ごし方を話そう。

それで全てに説明がつく。とまでは言わないが、おおよその原因は把握してもらえると思う。

俺は常に寝不足だ。それは、さきほどまで俺がボヤいていたことからも明らかだろう。


さて、ここで質問をしよう。学校につく。授業を受ける。つまらない。寝不足。眠い。さて、どうする?


答えは簡単、「寝る」、だ。

もういっそ清々しいまでに欲望に忠実に、睡眠を貪るのだ。


俺はこれを高校に入学してから一度も欠かしたことがない。

そりゃあヤバイやつ認定されて、誰も話しかけてこなくなるのも無理はない。挙げ句には教師まで呆れ果て、授業中の俺の居眠り(というより睡眠)を注意しなくなった。

テストではそこそこの成績が取れているので、小言を言われることも無くなった。

こうして、はれて俺はなんの気兼ねもなく趣味を謳歌できる!と思っていた。

現に今もこうして一人語りながらも着々と睡眠を取る準備を進めている。ホームルームに来た担任に睨まれるのも日常茶飯事だ。


こうして4時間の時間を休息に使い、昼休みを告げるチャイムが鳴った。

普通の生徒には福音に聞こえるこの音色も、俺にとっては不愉快なものでしか無い。


ツンツン


ああ、ほら、始まった。


チョイチョイ


サワサワ


ノビーッ


最初の方は寝たふりをしてどうにかやり過ごそうとするも、繰り返し与えられる刺激に脳が否応なしに起きてしまう。


「・・・何だyモゴォッ!?」


頭を上げ、半目で軽く睨んで刺激の方を見て抗議しようとすると、有無を言わせず口に唐揚げをねじ込まれた。

驚いて視線を上げると、ニヤニヤしながらこちらを眺める色素のうすい茶色い髪の女子がいた。クラスメイトの天音咲だ。


「ちょ、待・・・」


たまらず文句を言おうとすると、


「だーめ。口に食べ物が入ってるときは、喋っちゃダメだよ。よく噛んで味わわなきゃ。ほら、もぐもぐ、もぐもぐ」


と言って咀嚼する動作をしてきた。振り回されるのにはある程度慣れているので、それ以上は反抗せず顎を動かした。


・・・モグモグ・・・モグモグ・・・ゴクン


「はい、よくできました。どう?美味しかった?」


俺が飲み込むのを見届けると、咲は味の感想を求めてきた。


「・・・美味かったよ」


何だか素直に認めるのは癪だったので、敢えて不機嫌そうに返した。が、そんなことは気にも留めずに


「そっかそっか。美味しかったか。良かった良かった。」


と、本当に嬉しそうに微笑んでくるので、こちらとしても対応に困ってしまう。そうこうしているうちに、次のおかずが俺の口へと運び込まれていく。


「はむ・・・もぐもぐ」


「ポリポリ」


「もふもふ」


・・・・・・美味しい。茶化すような表情をしているのに、料理は上手なんだから厄介だ。これが、もし相当なメシマズだったなら思い切り拒否ってやったのに。


「もぐもぐ・・・ゴクン」


おにぎりの最後のひとかけらを飲み込み、嚥下し終えたのを見届けると、最後に今日一番のいい笑顔で、


「全部食べたね。偉い偉い。じゃあ、私になにか言うことは?」


くっ、こいつにこんな事を言うのは負けを認めたようで嫌だが、仕方ない。


「・・・ごちそうさまでした」


「はい、お粗末さまでした」


そう言って咲はご機嫌で自分の席へと戻っていった。


分かっていただけただろうか。これが、俺の悩み、もとい、俺を非常に困らせている出来事だ。

俺は、昼休みになるたびにクラスの女子に餌付けをされている。それも、クラスの女子が毎日交代で弁当を作ってくるので、バリエーションも豊富というオマケ付きで。

そもそも、なぜこんなことになったかというと、あれはそう、夏休み明けてからすぐのことだったーーー


その日も俺はいつものように授業では惰眠を貪り、昼食の時間もぱぱっと済ませて後は眠ろうとしていた。

そんな俺に、


「白坂くん、白坂くん。起きて」


わざわざ俺の体を揺すってまで起こそうとするやつがいた。当時席が前だった女子、西蓮寺未菜だ。彼女はクラスのアイドルと名高いほど見目麗しく、俺なんかに話しかけるなんて今考えてもおかしいと思う。


「・・・?」


学校で話しかけられるなんて初めての経験だったので、そのときは不満よりも困惑のほうが大きかった。それも、未菜ほど可愛い女子ならなおさらだ。

すると、不思議がっていることが伝わったのか、未菜は少し早口で


「あのさ、良かったらお弁当、食べない?朝、作り過ぎちゃって。」


そんな提案をしてきた。悪いけど、もう弁当あるから。そう言って断ろうとした矢先、俺はあることに気づいた。

・・・ん?今日、弁当買ってなくね?と。いつもはコンビニで弁当やらサンドイッチやらを買ってくるのだが、今日に限っては買うのを忘れていたようだった。


「あー・・・、スマン。じゃあ少しだけもらうわ」


「少しだけと言わず、沢山食べてね!」


と、どこからか取り出した弁当箱を俺の机の上に乗せ、蓋を開くと、おもむろに


「はい、あーん」


と、ウインナーを掴んだ箸をこちらに向けてきた。教室の空気が凍った。そりゃそうだ。学年で見ても一二を争う容姿の未菜がこんなボッチに「あーん」をしたのだから。

だが、未菜はそんなことは気付いてもいないかのように、「あーん」の体勢で動こうとしない。そして、俺も寝ぼけていたのだろう。それを何のためらいもなく口に含んだ。またしても凍りつく教室内の空気。俺たちはそんな空気はスルーして、昼食を続ける。


「はむ・・・もぐ・・・。・・・!うっま」


卵焼きやミートボールなど、具材自体はありふれたものなのに、いつも食べるようなおかずの何倍も美味しかった。


「・・・・・」


「?。未菜さん、どーかしたの?」


「あ、ううん。何もないよ。美味しかったなら良かったなーって」


「そっか」


もぐもぐ・・・もぐもぐ・・・もぐもぐ・・・


「ん、ごちそーさま」


食べ終えた俺はそう言ってまた夢の世界へと旅立っていった。


ヒソヒソ・・・ヒソヒソ・・・


クラスの女子の話し声が聞こえた気もしたが、何を言っているのかは聞き取れなかった。



ここまでが、俺の昼休みの過ごし方の変化の原因と思われるやり取りだ。何でこんな事になったのか。

一つ確かなことは、これからも俺はクラスの女子に餌付けされ続けてしまうということだった。

ヒロイン視点のも後々出す予定なので、待っててもろて。

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