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第六百七十二話『炎と雷の戦場』

――背後から轟音が聞こえた。大方、ミズネとゼラがエルダーフェンリルとやりあっているのだろう。そこまではヒロトが先に立てた計画通りだし、二人ならやってくれると信じるしかない。それよりも問題なのは、あの狼が意外とカリスマのあるタイプだったという事なわけで――


「……炎よ‼」


 両手に炎の剣を浮かび上がらせて、あたしは雄たけびを上げる。その隣では、アリシアが雷を迸らせて地面を蹴っていた。


 眼の前にいるのは、この濃密な魔力に引き寄せられたサルのような魔物たちだ。一匹一匹はそんなに力量がないのだが、いかんせん数が多い。すぐに捌いていかなければ、あたしたちはなすすべもなく猿の大群に呑み込まれてしまうだろう。……皆が頑張ってくれているというのに、そんな結末を迎えるわけにはいかなかった。


「や……あああッ‼」


「ふ……っ‼」


 隣に立つアリシアと呼吸を合わせ、炎と雷の剣劇を同時にサルの群れへと叩きつける。それを防ぐ手立てを持たないサルたちは、そのひと振りで一気に吹き飛ばされた。


 しかし、後続が来るまでにそれほど時間はかからないだろう。どこからこんな量の魔物がなだれ込んできているかは分からないが、来るのならば対応するしかないのが現状なのだ。


「……アリシア、まだへばってないでしょうね?」


「当然だよ。……ネリンこそ、緊張しすぎて転ばないでよ?」


 お互いに一言交わしあい、そして頷きを交換する。それだけあれば確認は十分、次に意識するべきは前から迫るサルたちの状況だ。


 一撃でかなりの数を弾き飛ばせてはいるが、しかしそれでも数が減る気配がないのが恐ろしい。……だけど、あたしたちはヒロトから戦場の露払いを任されている。……ヒロトが頭を回してくれている以上、あたしたちが気張らないわけにはいかなかった。


 小さくなった炎の剣を絶やさないように火を足しながら、あたしは再び身を低くする。隣を見ればアリシアも電気を纏いながら足に力をためていて、その姿があたしにさらなる火をつけた。


 ほんと、ヒロトの采配も的確よね……。『息が合ってる』とかの理由が一番大きくはあるんだろうけど、それ以前にあたしたちはライバルだ。……アリシアが気張っているのを見ると、嫌でもあたしの中に火がついてしまう。いつ何時でも、『負けたくない』という思いはこんなにも強い原動力になる者なのか。


 炎をともすたびに、自分の中から何かが抜けていくような虚脱感は少しずつ大きくなっている。だけど、それがあたしの足を鈍らせたり思考を止めさせたりはしない。……それ以上に、あたしの中で燃える炎があたしの全身を軽くしている。


「……それじゃあ、行くわよ」


「ああ。……こんな魔物たちはとっとと片付けて、ほかのみんなも助けに行かないといけないからね」


 わずかな目配せと言葉に応じて、アリシアがコクリと頷く。打てば響くようなその反応が心地よくて、やはりアリシアは天才なのだと思ってしまう。……まあ、そんなアリシアだから負けたくないって思えるわけなんだけど。……アリシアがいてくれるから、あたしはどこまでもいける気がしているのだけれど――


「――さあ、まとめて吹っ飛びなさい‼」


 そんな思いとともに炎の剣を思い切り地面に叩きつけて、その爆発で迫りくるサルたちを一斉に吹き飛ばす。宙に舞ったサルの体を追って、雷を纏ったアリシアが超高速の突きを放った。


 その猛撃に耐え切れず、サルたちの体は一つ、また一つと霧散していく。……それはミズネたちに比べたら小さな戦火だけど、間違いなく誇れる私たちの戦い方だった。



 ここからしばらくは様々な人物に視点が移動していくことになるかと思います! それらがどこに向かって収束していくのか、お楽しみにしていただければ幸いです!

――では、また明日の午後六時にお会いしましょう!

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