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第六百六十話『過去にあり、今にはなく』

――異世界人であるということがばれかけた。そんなショッキングなニュースを伝えられるのは、俺の正体を正しく知ってくれているあの三人しかいないわけで。三人に真っ先に放したいと思ってしまったぐらいには、その経験は俺にとんでもない衝撃を与えたわけで――


「……異世界人と充魔期の関連性、か。そんな爆弾があっちゃ、充魔期のことを赤裸々に明かせないのもまあ納得できる話だね」


「そうだな。……まあ、それがたまたまヒロトの前で明かされるのはとんでもない偶然ではあるのだが」


「ヒロトが異世界人だってバレなかったことだけがせめてもの僥倖ね……。バレてたらどうなってたやら」


 昼間から宿の一室に収まって開催された緊急会議で、三人は三者三様の反応を見せる。大方驚きであることには変わらないが、そのベクトルは少しだけ違うように思えた。


「それにしても、ここまで三人も異世界人がいたとは驚きだね。聞いた話だけを考えると、百年周期の中で一回だけ充魔期が起こらなかった三百年前が少し気になるところではあるけど」

 

 腕を組みつつ、アリシアは興味と戸惑いを共存させたかのような口調でそう零す。……そういわれてみると、確かにそこに違和感はあるな……。


「それに関しては神のみぞ知ることだな、本当の意味で。……だがまあ、考えるべきは今のことだ。それを受けてこうして私たちを集めたということは、新しく考慮しなくてはいけないことが増えたということだろう?」


 そのまま雑談に傾いていきそうだった空気感を、ミズネの疑問がすぐさま本題へと引き戻す。その流れにありがたく乗ることにして、俺は話をつづけた。


「……わかりやすく言うと、エルダーフェンリルの強さレベルが俺の中で跳ね上がったって話だよ。今までも転生者たちが現れる度に充魔期は起こって、そのたびにエルダーフェンリルは現れてきた。……んで、毎回討伐されてきたわけなんだが」


「王都が無事である以上、まあそうでしょうね。……だけど、それがどうして強さを跳ね上げることになるの?」


 俺の前置きを聞いて、リリスは話がつかめないと言いたげに首をひねる。その反応に俺は小さく息をついて、話をさらに続けた。


「……異世界人には特典が与えられるって話、前にしただろ? 俺はそれで図鑑をもらったんだけどさ、それで武器とか魔力とかを授かった人もいるんだよ。というか、多分俺以外はそういう系統のものをもらってる」


 今思えば、神がやたらと慌てていたのはこういうことになるのを予期していたからなのかもしれないな。どんな人生を送るにしても武力が必要になってしまう以上、それを全く持たないというのはリスクになりうる。……まぁ、そりゃなんとか心変わりさせようともするか。


「つまり、今までのエルダーフェンリル狩りには転生特典としての武力がいつもくっついてたってわけだ。だけど今回は違う。俺に与えられたのは異世界図鑑ただ一つで、おまけにその中には充魔期のこともエルダーフェンリルのことも書いてない。今回の作戦に関してだけいえば、この図鑑はただの紙束同然だ」


 肩をすくめながら、俺は三人にそう打ち明ける。こんなことならもっと網羅範囲を増やしてもらっておくべきだったのかもしれないが、それはそれで旅がつまらなくなりそうなのが考えものだった。


 まぁ、過ぎたことを言っても図鑑がアップデートするわけでも他のものに入れ替わってくれるわけでもない。明確なのは、この作戦が今までのエルダーフェンリル戦とは違うということだけでーー


「俺たちは、実質転生の恩恵がない状態であの狼と戦うことになる。……ロアを引っ張り上げるためだけに考え出したこの作戦は、結果的に過去の英雄たちを超える戦いでもあるってわけだ」


 三人に対してそう纏めながら、俺は事の重大さを改めて実感する。……一度の接敵を経てもなお底知れないあの狼の存在は、俺の中でやたらと大きな存在として映し出されていた。

 さあ、事態は雪だるま式にどんどんと大きくなっていきます。果たしてヒロトたちは過去の転生者たちが超えた壁を縛り付きで超えることができるのか、ぜひ期待していただければ幸いです!

――では、また明日の午後六時にお会いしましょう!

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