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第五百二十話『買い集めていたもの』

「……そう言えば、昨日から少し気になってたことがあるんだけど」


 屋台広場での買い物を終え、ロアの案内で次の観光スポットに向かう道のりでのことだった。唐突にロアの方を向いてそう話を切り出したネリンに、ロアは軽く首をかしげる。


「……はい、何でしょうか? ああ、そろそろ次の観光地のことについてお話ししてもいい頃ですね」


「いやいや、そうじゃなくって。昨日からロアのこと見てて少し思ったことがあるから、それについて少し聞きたいなーって思って。まだ歩く時間は長そうだし、話のタネとしてはちょうどいいくらいなんじゃないかなーって感じの話題なのよね」


 わざわざ腰を落ち着けて聞くには話題がふわっとしすぎてるし、と言いながら、ネリンは早とちりしたロアの言葉を訂正する。それを聞いてロアは少し顔を赤らめたが、すぐに元通りの表情に戻ってネリンを見つめた。


 それを肯定の合図と取ってか、ネリンは軽く咳ばらいを一つ。そして、ロアの腰回りについている小さな鈴のようなチャームをじいっと見つめると――


「……ロアって行く店行く店でチャーム買ってるみたいだけど、もしかして集めるのが趣味だったりするの?」


 まさか全部付けられるわけでもなさそうだし――と。


 ロアの全身を見つめながら、ネリンはそんな事を口にする。……そう言われてみると、ロアが訪れた店で物色していたのは確かにチャームの類だ。剣とか防具とかもっと見るべきものはあっただろうに、確かに違和感を覚える部分ではあるだろう。かと言ってレストランとかで話すことでもなさそうだし、それこそ行きがけのこういう時間に話すのにはちょうどいい内容のようにも思えた。


「……ああ、その事ですか。確かに、皆さんにはお伝えしていなかったかもしれませんね」


 腰のチャームに触れながら、ロアは柔らかい笑みをネリンに返す。その表情が穏やかなこともあって、それは中々に楽しそうな話題に聞こえた。


「私は剣や防具にはあまりこだわらない……というか、まだこだわる資格がないと思っていまして。だから自然に目線はチャームに向くんですよね。そのせいで、いつの間にかチャームの知識に関してはちょっと自慢できるくらいの物にはなってるんですが」


 少しだけ胸を張って、ロアはチャームについてそう語る。剣や防具を選ぶだけの資格がないってところには疑問を呈したいところではあるが、結果としてそれが自慢できることに繋がってるなら悪い事ばかりじゃないってことだろう。災い転じて福となす……と言うのとは、また少し違うような気もするけどさ。


「……確かに、チャームの目利きとかして店主さんに驚かれてたもんね。豊富な知識があったからこそのコミュニケーションだったってわけだ」


「はい……と言い切るには、少しだけ気恥ずかしさがありますけどね。普段はチャームを見繕う相手もいませんし、そんなに今まで人の役に立つ使い方が出来たためしがありませんでした。……ですが、いならまた違いそうですね」


 どこか楽しそうにそう呟いて、ロアは唐突に足を止める。それに続いて俺たちも足を止めると、ロアは一本指を立てて――


「……次の目的地には、王都で一番大きなチャームショップがあるんです。皆様に合うチャームも、今なら選べるんじゃないかななんて思う訳ですが、いかがですか?」


――結果として次の行き先に繋がる情報を、楽しそうに俺たちに伝えてきたのだった。

あちこちでしれっと集めていたチャームたちは、ヒロトたちにどんな恩恵をもたらすのか! ロアの特技が生きる瞬間、是非ご注目いただければ幸いです!

――では、また明日の午後六時にお会いしましょう!

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