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第五百四十八話『当たり前なんかじゃない』

「……それは、流石にノリが良すぎないか……?」


「冗談だって思うでしょ? 実話なのよねえ、これが」


 思わず口をあんぐりと開けてしまった俺に、ネリンは楽しそうな笑みを向ける。その語り口は、どこか誇らしげにも思えた。


「それでね、そこにいた冒険者たちが次々と案を出してくれるのよ。……でも、やっぱり大人ってのもあって古いゲームばっかり出てきちゃって。あたしが提案したやつもよく分かってなかったみたいで、むしろみんなの方が首を傾げちゃってたのが面白かったわ」


「冒険者の仕事上、流行を追いかけるのって相当難しいだろうしな……それに関しては同情するよ」


 むしろゲームがすんなりと出てきたことの方を称賛するべきなんだよな……。小さい頃に遊んでたゲームとか、俺の歳でもはっきりと思い出すのは難しいんだし。


 何はともあれ、話が予想外の方向に転がっていっているのは事実だ。……まぁ、困ってる人を放っておけないあの人たちらしいと言ったららしいんだけどさ。


「……それで、結局そのゲームは持っていったのか?」


「もちろん。その人たちに借りたりしながら、お薦めしてくれたやつは大体アリシアと遊んだわよ。……まぁ、結果はお察しだけど」


「『一回たりとも勝てたことない』ってのは、お前も言ってた話だもんな……」


 ミズネが一旦突破型の天才なら、アリシアは万能型の天才だ。なんでも初見でそつなくこなしてみせるその姿には、俺も何回舌を巻かされたかわかったものではなかった。


「ああ、だけど困惑はしてたわよ? 『急に古めかしいルールのゲームばかり持ってくるんだね……?』なんて言っちゃって、首を傾げてたのが懐かしいわ」


「いきなり大人チョイスのゲームに変わってるんだもんな……それに気づけるあたりはさすがだけどさ」


 幼くして大人たちの力を借りられるネリンもすごいのだが、そうやって考え出してきたものに即適応するアリシアが凄すぎる。普段はあまり使いたくない言葉ではあるが、こればかりは『相手が悪い』という表現がしっくりくるような気がした。


「そうね……アリシアは昔からすごいし、あたしはいつもその背中を追いかけながら過ごしてたわ。……だけどね、その中でも気づいた事はあるの。それがあるから、あたしは大きくなってもずっとアリシアに挑み続けられたのかもね」


「へえ、そこまで断言できるのか。……それが何かってのが、俺に伝えたい事ってやつか?」


「ええ、そうね。……多分、今のヒロトには刺さると思うわよ?」


 俺の問いかけに、ネリンは悪戯っぽい笑みを浮かべた。……どうやら、今から話すことには相当な自信と確信があるようだ。まぁ、いつだって強気で自信に満ち溢れているのがネリンという人物な気もするけど。


「それじゃあ、聞かせてもらおうか。……今の俺と昔のお前、何が似てるかってのをさ」


「ええ、ちゃんと聞いてなさい。参考にするかしないかは、ちゃんとその後に考えればいいから」


 そう言って、ネリンは軽く咳払いをひとつ。その言葉を俺がどう受け止めるのか、それを委ねてくれているのがありがたかった。


 軽く息を飲んで、俺はネリンの次の言葉を待つ。それに応じるようにして、ネリンは息を吸い込むとーー


「『困った時に助けてくれる誰かがいる』ってのは、当たり前のことじゃないの。ーー今あたしがこうやって話してるのだって、他でもないアンタが悩んでるから動こうって思えたのよ?」


ーー今まで見たことがないくらいに柔らかい笑みを浮かべて、ネリンは俺にそう投げかけた。

実は当たり前なんかじゃないけど当人は当たり前だと思い込んでることって結構あると思うんですよね。きっとそれはヒロトにもあって、それが彼を今苦しめていて。……だからこそ、ネリンは話をしにきたのでしょう。そんな言葉を、ヒロトはどう受け止めるのか。次回もお楽しみにしていただければ嬉しいです!

ーーでは、また明日の午後六時にお会いしましょう!

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