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第五百四十三話『夜も話も長く』

「……と言っても、今アンタが抱えてるタイプの力不足とはまた違うんでしょうけどね。それでも、あたしだって負け続けた経験はあるのよ?」


 俺から視線を外さないままで、ネリンはくすりと笑って見せる。その表情から、俺も目を離すことができなかった。


「……そう、だな。アリシアの才能は、俺から見ても凄いと思うし」


 それを語るネリンの笑みは果たして本心からのものなのだろうか、それともネリンなりに折り合いをつけた上での言葉なのだろうか。……そのどちらにせよ、どんな経緯でそこに至っているのかには興味があった。


 ネリンとアリシアは腐れ縁って話だしな。その関係性の深さは言うまでもないが、最初からそうじゃなかったわけではないのだろう。……多分そこには、何かきっかけがあったはずなのだ。それがアリシアの側にあったのかそうじゃないのかはまた別の話としてもな。


「そういえば、お前とアリシアの話ってなかなか聞かないもんな……。今日持ってきてくれたのはそう言う話ってことだろ?」


「ご期待通り、そう言う話よ。あたしとアリシアがまだお互いの名前を知ったばかりのころ、いろんな場所を二人で探検したりするようになる前のあたしたちの話になるわね」


 俺の問いかけに小さく頷いて、ネリンは得意げな笑みを浮かべる。俺が今どんな話を欲しているのか、どうやらしっかり察されていたらしかった。


「アンタと全く同じってわけじゃないけど、あたしも悩むことぐらいあったしね。……冒険者を目指す仲間がいなくなっちゃって、自分のやるべきことがわかんなくなっちゃった時期もあったし」


「二ヶ月前、ってやつだよな。今から見ると四ヶ月前ってことになるんだろうけどさ」


「そうね。あの時のあたしはかなり凹んでたし、その時の話は聞かないでくれると嬉しいわ」


 ひらひらと手を振りながら、ネリンは恥ずかしそうにそう頼み込む。もちろん、俺もネリンの嫌がることを深掘りするつもりはなかった。


「その話は今日話してくれるのとはまた別問題なんだろ? それなら別に聞かねえよ、いつか話したくなったら話せばいいし」


「うん、そうしてくれるとありがたいわ。……多分一生その時の話はしないだろうけど」


 アリシアにも口止めしてるくらいだしねー、と言ってネリンは腕を頭の後ろで組む。その姿は気楽そのもので、こんな夜だってのに特別な雰囲気なんて一つもありはしなかった。


 ま、二人で過ごす時間もカガネにいるときはそこそこあったしな。こうやって気楽に遊びにきてくれることの方が、俺にとっては嬉しいことだった。


「いつまでも立ち話はなんだし、ベッドにでも腰掛けたらどうだ? あいにく茶菓子のひとつもねえけど」


「借りてる部屋だもの、それは仕方ないことよ。そんなこと気にせず、のんびりいきましょ?」


 まだまだ一日は長いしね、とネリンはベッドに思い切り倒れ込む。その豪快な入室に苦笑しながら、俺はもう一つのベッドに腰を下ろした。


「……さて、それじゃあ早速本題といきましょうか。とことん話そうと思えばどこまでも長くなる話だから、覚悟しときなさいよ?」


「大歓迎だよ。せっかくきてくれたんだ、とことん話し尽くそうぜ?」


 悪戯っぽいネリンの表情に、俺も笑顔を浮かべることで返す。知られざる二人のエピソードが聞けることを楽しみにしつつ、俺はネリンの次の言葉を待った。

次回、話は本格的に二人の中へと踏み込んでいきます!年の瀬ももちろん更新いたしますので、楽しみにしていただければ幸いです!

ーーでは、また明日の午後六時にお会いしましょう!

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