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第四百九十九話『ほどけて、また絡まって』

「なんというか、不思議な話よね。ちょっと変わったキメラを倒したと思ったら王都に招かれて、いろんな予定が被った末に着いたときには別の大問題が発生してて。それに関わってきた人物までどこか謎めいてて……」


 俺がその眩しさに思わず手をかざしていると、ネリンがのんびりとした口調でそう呟く。その言葉尻を引き継ぐかのように、アリシアも天井に視線をやりながら続けた。


「ああ、まるで一つ倒れたドミノが次々に連鎖していくような感じだね……そういえば、ネリンとドミノはしたことなかったっけ」


「ああいうのは得意じゃないのよね……じれったいったらありゃしないわ。今起こってる一連のことがやたらと複雑に見えるのも、そういうふうに見えてるせいなのかしら」


「話の発端と現状が大きく離れてしまっているのは間違いないからな。離れているではなく、全く別のものに変身を遂げているといった方が適切な気もするが」


「俺もそっち派だな。キメラどうこうも確かにほっとけない話だけど、今のギルドにそんなことを議論している余地はなさそうだし」


 そんな中で力量の足りない冒険者に来られても困るだけだし、そこを選別するためにあの馬車は遣わされたものなのだろう。ふるいにかけるみたいなことはロアも言っていた覚えがあるし。


「充魔期が終わったら、思い出したかのようにキメラの議論は再開されるんだろうね。まさかカガネにまでその影響が来ているなんて話はないだろうしさ」


「十中八九別件でしょうね……じゃああのキメラはなんなの、って話に答えが出てないことが一番の問題な気はするけど」


 それに関しては仕方のない事か、とネリンはため息を一つ。事の発端がキメラなんてこと、最早言われなけりゃ思い出せないくらいにこの街に来てからの情報量が多いもんな……。


「あの狼がいて、アレが立ちふさがるところを突破したって言ったらそれだけで合格くれたりしないかしらね。あれよりヤバそうな魔物、今日のクエストでもいなかったし」


「合格はくれるかもしれないね。……それでも、ボクたちがいろんなクエストに駆り出されることは変わらないだろうけど」


「むしろ負担は増えるかもしれねえな。『そんな窮地を突破できたパーティなら、この程度の仕事くらい楽にこなしてくれるだろう』って具合にさ」


「やけにリアルに想像できちゃうのがイヤなところね……クエストも冒険も嫌いじゃないけど、今は背負ってるものが多すぎていけないわ」


「冒険者とはあれでなかなか自由ではないものだからな。力を付けていくにしたがってそれに見合った評判を背負わなければならないのは、どんな立場に居ようと同じことだ」


「それに関してはあたしも同感だけど……だけど、ねえ……」


「だけど、だよな……。こんな展開誰も予想出来てねえって」


 言葉に詰まるネリンに同調して、俺も小さく息をつく。今何をするのが正解なのか、それを知り得る人は多分王都のどこを探してもいやしないだろう。


 ミズネの言葉も間違いなく正しいものだが、ネリンの抱く感情も決して否定しちゃいけないものだ。適度な緊張感こそあれ気楽に行けるはずだった王都旅行は、俺たちの知らないところでとてつもなく大きなものに変化を遂げてしまっている。


「なるようになる、という言葉はあまり多用したくないが……今の状況に関して言えば、なるようにしかならないという表現が一番正しいのだろうな。何がいい方向に転び何が災いするか、何も分からないのが現状なのだから」


 少し伏し目がちに、ミズネは現状をそう表現する。


「明日何が起こったって、あたしたちはそれに対応して何とかしようと足掻くしかないんだものね。……そう考えると、中々に肩身が狭い状況だわ」


「私たちはあくまで招待された側であることは変わりないからな……今のところは冒険者からの受けもいいようだが、ムルジさんからの話を聞いた今だとそれもいつまで持つかは分からないな」


「とにもかくにも気は抜けない、ってことね。まさかここまでややこしい状況に置かれることになるとか、二日前の私に言っても信じてくれないレベルだと思うわよ……?」


 天井を見つめながら、ネリンは力なくそうこぼす。分からないことが減る度に分からないことが増えていくんだから、そう言いたくなるのはしょうがない話だろう。


 その言葉を最後に、宿の一室に沈黙が満ちる。……情報が増えたからと言って、状況が好転してくれるなんて都合のいい事は起こってくれないようだった。

王都の状況は二転三転、それにつられるようにしてヒロトたちを取り巻く状況も二転三転としていきます。混迷を極める中でヒロトたちはどう動いていくのか、楽しみにしていただければ幸いです!

――では、また明日の午後六時にお会いしましょう!


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