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第四百九十一話『目の前の宝の山』

「ドワーフの魔道具……っていうと、バロメルの遺跡でゴーレムを倒した時に使ったあれよね?」


「ああ、アレもドワーフの系譜を継いだものだったな。あそこからまた分岐した技術もあるが、大本はその考えの通りで間違いはないさ」


 ミズネが見せた雑誌に書かれていた地域の前で、ネリンはミズネに改めて魔道具の情報を問い直している。専門家が聞けば頭を抱えたくなるくらいに初歩的な質問ではあるのだろうが、俺たちにとって魔道具とはそれくらい遠い記憶にしか残っていないものだった。


 というか、あの時にしたって用途を確認せずにまとめてポイポイ放り投げるとかいうとんでもない使い方しかしてないしな。役に立ったという事実だけを切り取れば正しいのだが、それが魔道具使用法として正解なのかと言われたら百人中百人が首を横に振るだろうという自信があった。


「この先の仕事は厳しいものも増えるだろうし、使えそうなものがあったら買い込んでおきたいからな。趣味と実利を兼ね備えた、完璧な計画というわけだ」


 そんなことをしみじみと思い出す俺の隣で、ミズネが誰に向けた物でもない言い訳を披露する。そんな無理やりな意義を作らなくてもミズネの希望とあれば俺たちはそれを尊重するだけなのだが、ここでそういうふうにふるまうのもまたミズネらしいな。


「……そういや、ここは行きたいってところは決めてるの? 夜まではまだ時間があるし、これくらいの広さの店だったら全部回れるとは思うけど……」


「まあ、ある程度はな。私が前一人で旅をしていたころに世話になった魔道具職人の新作が出ているようだから、それをまずは見に行きたいと思っている」


「へえ、ミズネがお世話になった魔道具職人か……エルフとドワーフって仲が悪いのかと思ってたけど、そんな事もないんだな」


 創作だと同じ魔法に携わる種族としてライバル的な位置取りを与えられることも少なくないが、この世界ではどうも関係値が違うらしい。いろんなところでちらちらと聞いてはいたが、こうやって実例を出されるたびに驚いているのもまた本音だった。


 こういうのに直面すると、先入観ってやつがいかに厄介なものかってのを思い知らされるよな……誤解だなんて分かってても、一度思い込んじゃった物は中々振り払えないんだからさ。


「昔から気難しい人ではあったから、仲がいいと言い切るのはなかなか難しい関係性ではあったがな。まあ、そのドワーフが作った魔道具に命を助けられたことがあるのだけは間違いないさ」


「へえ、ミズネが命の危機にねえ……それはまた、興味深い話ではあるけれど」


「話せば長くなるから、その話は後でな。……今は、目の前の宝の山に飛び込みたくて仕方ないんだ」


 目をキラキラと輝かせ、ミズネは市場へと向かっていく。いつにも増して軽やかなその足取りを見失わないように、俺たちは足早にその背中を追いかけた。

次回、魔道具ショップ巡りになります!王都を満喫する四人、是非お楽しみください!僕も楽しみます!

ーーでは、また明日の午後六時にお会いしましょう!

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