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第三百九十六話『初めてのリーダー命令』

「お、お前たちはもう帰るのか?まだ夜には早いが……」


「ああ、一足先に屋敷でのんびりさせてもらうよ。もともとこれで予定通りだ」


 食器を返却した後の俺たちの足がどこの区画の展示とも違う方向に向いていると気付いたのか、オウェルさんが軽く質問してくる。それにミズネがこくりとうなずくと、俺たちを追う足を止めてオウェルさんは俺たちを見回した。


「おう、それなら俺はここまでだな!リーダーとして、ここからもやらなきゃいけないことが残ってるからな!」


「お疲れ様です。……すいません、俺だけ楽をするような形になってしまって」


「気にするな! お前は準備段階から色々と頑張りすぎなんだ、本番位俺たちに任せて仲間たちとのんびりするといい! ちなみにこれはリーダー命令だから、お前には否が応でものんびりしてもらうぜ?」


「……オウェルさんからの命令なんて、今日初めて受けましたよ」


 慣れた様子で片目を瞑って見せるオウェルさんに、俺は思わず笑みをこぼす。こういうところがあるから、オウェルさんの下にはたくさんの人が集まるんだろうな。リーダーというか、自分と同じ目線に立ってともに歩いてくれる人、みたいな感じだ。上からぐいぐいと引っ張ってくれるのも悪くはないけど、横一線でともに背中を押しあうようなその関係性が俺にとっては心地よかった。


「俺に命令できるほどの賢さはないって自覚してるからな! ただ、そんな俺でも今はこれが一番いいってそう思っただけだ!」


 俺のそんな感想を裏打ちするかのように、オウェルさんは豪快に笑う。その笑顔は、チームをここまで引っ張ってきた一番の原動力だった。


「じゃあ、俺はここで失礼します。……次合う時は友達ですよ、オウェルさん」


「おう! その時は是非とも呼び捨てで頼むぜ?」


 これも命令な、と付け加えるオウェルさんにお辞儀で応え、俺は少し遠くで待っていた三人に追いつく。やり取りの一部始終はしっかり見届けていたらしく、俺を見つめるその視線は温かいものだ。


「いいリーダーに恵まれたわね、ヒロト。クローネさんも優秀だけど、それとはまったく違うタイプのリーダーシップがあるというか、ホント真逆って感じ」


「どちらがいい、とかではないんだろうけどね。ボクは彼ほどの優れたリーダーになれていただろうか、なんて思わず考えてしまったよ」


「比較するようなことではないさ、アリシア。あのような素晴らしい展示を作り上げられている時点で、お前たちのチームがまとまっていたことは確実だよ」


「そうそう、どこの展示もすごかったし、簡単に優劣なんて付けられるものじゃなかったわよね。この様子だとどこも人気は高そうだし、となると勝負は――」


 のんびりと歩きながら、ネリンはそこで言葉を切る。それは、この懇親会を回っていく中で皆がうすうす感づいていたことでもあった。


「……一日目とは様相が変わる二日目次第、か。今年から追加された新しいテーマなだけあって、中々に難しいところに勝負を託す形になったな」


「勝負って形式自体、今年からのものでもあるんだけどね……。あたしが盛り込んだ要素がこんなに重要なポジションになって来るなんてあたしにだって予想つかなかったわよ」


「何よりこのルールで一番不利になるのはネリンのチームだからね。だからこそそれをどう解決してきたか、というのは興味深いところではあるけど」


「相変わらずそういうところ鋭いわよね…………でも大丈夫、あたしたちなりに答えは見つけたから。二日目はアドリブになっちゃうけど、それでも負けるつもりは微塵もないわよ?」


 アリシアの指摘に、ネリンは痛いところを突かれたと言わんばかりに言葉を詰まらせる。だがすぐに胸を張ってそう宣言するネリンからは、簡単な事では揺らがない自信が見え隠れしていた。


「それはよかった。決着前に脱落するチームがあっては盛り上がりに欠けようというものだからね」


「そうそう、最後までヒートアップするからこそ勝負は楽しいんだから。……こんな感じのこと、プレゼンの時にも言ったような気がするわね……」


「なんなら普段から結構言っているような気がするな。フェアリーカードの時とか」


 首を傾げたネリンに、ミズネからの指摘が飛んでくる。最早口癖のようになりつつあることにネリンが顔を赤らめると、俺たちの間から笑い声がこぼれた。


「まあ、負けず嫌いなのは皆同じだからな。ネリンがそれを代表してくれてるってだけで、俺たち皆それと似たようなことは思ってるんじゃねえか?」


「お察しの通りだね。……ボクだって、盛り上がる勝負の方が楽しめるに決まっているさ」


「なら最初からそう言ってくれればいいじゃない……」


「まあまあ、これも似た者同士の証という事さ。……それに、決着がつくのはまだ先のことだろう? それより前に、私たちにはやるべきことがあるはずだ」


 俺のフォローに便乗してきたアリシアにネリンが恨めし気な視線を向け、それをミズネが笑顔で仲裁する。その言葉で、俺たちは今日の予定をもう一度思い返した。


「まずは皆で懇親会を回って、それぞれの出来を確認しながら観光する。それが終わって昼下がり位に屋敷に戻ったら、後は――」


「少し早いが、皆で打ち上げだ。チームの事情で言えなかった苦労も、ここで一度思い切り吐き出そうじゃないか」


 ミズネがそう言い終わると同時に、俺たちの屋敷が目の前に見えてくる。賑やかな懇親会一日目は、場所を変えてまだまだ続きそうだった。

ということで、ここからは四人で大はしゃぎの時間となります!三週間分の苦労を洗い流すかのような打ち上げ会の様子を是非楽しみにしていただけると嬉しいです!もし気に入っていただけたらブックマーク登録、高評価などぜひしていってください!ツイッターのフォローも是非お願いします!

――では、また明日の午後六時にお会いしましょう!

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