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第三百九十五話『相互理解の大切さ』

「いやー、食べた食べた。これはヒロトのところを最後にして正解だったわね」


「これだけ食べては流石にしばらく歩く気も起きないからな……まだ回る予定を残していたら大変なことになっていた」


「まったくの同感だよ……食べ歩きを趣味としていたことがあるくらいにはいろんなものを食べて来たけど、この美味しさは本当に新鮮というか、この先もずっと覚えていられるような味だったよ」


 シェアし始めから十分もしないうちに俺たちの頼んだ料理はすべて綺麗に食べつくされ、俺たちは大いに膨れた腹をさすりながら椅子にもたれかかる。歩き詰めだったこともあって一気に疲労がなだれ込んでくるが、それを上回るくらいの満足感が俺たちを包んでいた。


「これが老舗レストランの底力ってやつか……。いや、マジで美味かった」


 あの屋台が素材の味を百パーセント活かすことに特化した美味しさならば、この料理は組み合わせたり味付けをしたりすることで新しい美味しさを創造してくるような美味しさというべきだろうか。単純な美味しさという点で優劣をつけるのは難しいし、なんならつけようとする行為そのものがナンセンスな気さえした。


 おいしい料理ってだけで正義だからな。そういう意味では普段の食事だって正義ではあるんだが、今回は全く違う正義の形を見せられたって感じだ。料理に対してこんなアプローチもあるのか、みたいな。


「焼き魚とかもこんなに風味変わるんだもんな……やっぱり料理人ごとの癖とかってある物なのかね」


「当然じゃない。ママたちも自分たちの味を確立してるし、『その味が食べたいから』って常連さんになってくれる人たちもいるのよ?……まあ、あたしはその半分くらいしか引き継いでないけど」


「あのレパートリーの量でまだ半分というのがボクとしては驚きの事実ではあるけど……まあ、料理人ごとの差ってのは確実にあるだろうね。どれがいいとかではなくて、どれもいいってのがこの街のいいところではあるんだけど」


 俺の独り言に、アリシアとネリンがそれぞれの答えを返す。あとはこういう話題に嬉々として乗ってきそうなミズネだけだったが、当の本人は首をかしげて、


「……料理人ごとの腕の違い、か。そういえば、私は行きつけの店に延々と通うタイプだからそう言ったものを認識するタイミングには恵まれていなかったかもしれないな」


「あー、たしかにミズネはそのタイプかもね。あたしにするリクエストも大体いつも一緒だし」


「浅くすべての物事は知っておきつつ、気になったところをとことん掘り下げるタイプだもんな。行くレストランは決めてるけどなに頼むかはその場の気まぐれで決めてる、みたいなさ」


 もとはミズネの学問に対するスタイルの話なのだが、こう聞いてみると他のところにもミズネのこの考え方は浸透しているような気がする。俺の予想はどうやら正しかったらしく、ミズネは驚いたように目を丸くしていた。


「―—ヒロト、私のレストランでの様子を見たことがあるのか……?」


「いや、皆で行ったときしか見てねえけど。普段のお前を思ったらなんとなくそんな感じだろうなーって」


「それに関してはボクも同感だね。ちなみにヒロト、君は行くレストランも頼むメニューも決まっているタイプだろう?」


「おお、大正解。なんというか、意外と皆そういう癖ってのは出てるんだな……」


「ヒロトは一つのことをどこまででも突き詰めてくタイプでしょうしね。ズカンの話とか、特に分かりやすいじゃない」


 俺の中のミズネ像にアリシアが賛同しつつ、ついでといわんばかりに俺のパターンをズバリと当ててくる。自分でもわかり易いくらいにそういう気質だってのは分かっているが、それにしたって的確に言い当てられるとびっくりするな……。


「お前たち全員、仲間への理解度が高いんだな!パーティってものにも同じことが言えるのかは分からねえが、お前たちは組織として本当に理想的だ!」


 そんなやり取りを聞いていたオウェルさんが、楽しそうな様子で俺たちに呼びかけてくる。癖のチームを束ね切ったリーダーからのその評価は、俺にとって素直に嬉しいものだった。


「かなり順調に事が進んでるパーティってことは間違いないしね……結成して一ヶ月も経たずに家を持って、そこから一か月後には懇親会の運営を任される。あたしが言うのもアレだけど、ここまで順風満帆に事が進むパーティってのも中々ないでしょ」


「少なくともボクは見たことが無いね。家を持つなんて、特にこの街じゃ難しい事ではあるし」


「こうやって振り返ると割と無茶苦茶な道のりを歩んで来てるんだな……予想外なことも結構あったけど、なんだかんだ滅茶苦茶充実してるし」


 懇親会が終わったら王都行きの予定もあるしな。無双という言葉からはかけ離れた異世界生活ではあれど、結構恵まれた生活にはなっているんじゃないだろうか。


「お前たちはいずれもっとデカい組織になるぜ、俺が保証する!なんだったらそうなったときのために今からでもサインをもらっておきたいくらいだが――」


「客足が滞ってない今、食べ終わった後もこうして席を立たずにのんびりしている時間はそう多くないだろうな。私たちの予定はもう家に帰るだけだが、ここからの話は歩きながらにするとしよう」


 もういい感じに消化も進んだ頃だろう?とミズネは席を立ちあがる。俺たちもそれに続いて、カラになった皿をまとめながら出発の準備に入った。


「片付けもお皿を返すだけでいいんだもんね……本当に便利で助かるわ」


「ちょうど家の方向に屋台もあるしね。いい感じに分担してしまおうか」


 みんなして皿を抱え、俺たちは屋台へと、そして屋敷への帰路へつき始める。開門したころにはまだ低かった太陽も気が付けば逆方向に傾き始め、俺たちの懇親会一日目は大盛り上がりの中で幕を閉じ始めていた。


ということで、一日目の懇親会観光ツアーははこれにて帰路へとつくことになります!しかしまだまだ懇親会自体も盛り上がっていきますのでどうぞお楽しみに!もし気に入っていただけたらブックマーク登録、高評価などぜひしていってください!ツイッターのフォローも是非お願いします!

――では、また明日の午後六時にお会いしましょう!

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