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第三百六十三話『帰り道と週末の決意』

「いやー、皆大立ち回りだったな。もちろん油断はしていなかったが、それでも焦らされたぞ」


 定例会はつつがなく終了し、俺たち四人は和気あいあいと帰途に就く。あの場では読みあいだなんだといろんなものが飛び交っていたが、帰り道でのやり取りは本当にのんびりとしたものだった。


「しょっぱなから白紙とか、あんな手打てるのはアンタくらいよ……。それを目の当たりにさせられるあたしたちの立場分かる?」


「そうそう、俺たち揃って目を剥いたもんな。ほんとアリシアの発想力には敵わねえよ」


「発想力というか、ボクからしたらアレが最善手だからね。職人さんたちのメンツを考えると少し申し訳ない部分はあったが、義理で指名しても申し訳ない気がしてしまってさ」


 意味がないとは言わないが、あまり職人たちの技術を生かしてあげられる場は残ってないからね――と、アリシアは苦笑して見せる。堂々と立ちまわって見せたアリシアも、その裏ではしっかり悩みに悩んでの決断だったようだ。


「そう聞くと、あの決断も中々合理的なものに思えるな。立場が違えば、私も同じ決断をしていたかもしれない」


「それは良かった。職人の方々から悪印象を受けていないことを切に願うばかりだよ」


「ベレさんが集めた人たちだし、そこは大丈夫でしょ。あの人たちも最初からその可能性は知ったうえで来てるだろうし」


「だといいけどねえ。これが投票に悪影響を与える……なんてことが無いように動くつもりではあるけどさ」


 少なくとも文句が出るような作りにはしないさ、とアリシアは息まいて見せる。その眼の中には、思い描く完成図が明確に見えているようだった。


「というか、気が付けば準備期間ももう残り一週間なのね……ここまで手探りでやってきたけど、思い返せばあっという間だったかも」


「それは私も同感だな……チームメンバーと出会ってからここまで作業が進むまで飛ぶように過ぎていった気がするよ」


「皆にとって未体験ゾーンの連続だったろうからな……俺もホント毎日が濃かったよ」


 みんなと過ごした一ヶ月も濃かったが、街から出ていないはずの準備の日々もそれと同じくらいには濃く、そして色々な事を考えさせられる時間だった。


「全部終わって振り返ったら、実は成長したところだらけだったりしてな」


「意味のあるものだったのは間違いないでしょうね。最初に話が来たときは少し戸惑ったけど、クレンには感謝しなくちゃいけないわ」


「ほんと、あの人はどこまで見えているんだろうね。ボクもいろんな人を見てきた自覚はあるが、あれだけ思慮深い人は見たことがないよ。キャンバリー・エルセリアも優れた頭脳を持っていることは間違いないが、あれはそれとまた別種の頭の良さだ」


「あ、それはなんとなくわかるかも。なんか行動が読めないというか、どこまで見据えて動いてるかが分かんないって言うか……。信頼できるはずなんだけど、どことなく底が見えないのよね」


「結構な物言いだな……まあ、それが正当な評価に近い者なのは事実なのかもしれないが」


 食わせ物であることは間違いないのだろうな、とミズネが俺たちのクレン像を取りまとめる。俺たちの成長に一番貢献しているであろうクレンさんの話題は、度々とまでは行かないまでもちょいちょい俺たちの中で浮上してくるものだった。


「ま、その限界値も王都で見えてくるようになることを期待するとして……。とりあえずはラスト一週間、だな。このまま平和に終わればそれが一番だけど、そうはいかないのが現実ってやつだし」


 俺たちなんかはまだまだこれから乗り越えるべき壁が無数にあるからな。協賛してくれた二つの店舗との折り合いやら主役にする制作の決定やら、最優先でこなさなければいけない課題ばかり残っているのは出遅れたことのツケと言っても良かった。


「あたしのとこもまだまだ安泰とは言えないしね……アリシアとミズネのとこはどんな感じなの?」


「ボク達のところはこれからが本番ってところだ。地盤はしっかりと固めたから、後はその上にしっかりとした完成形を作り上げるだけさ」


「私もまだまだ発展途上といった感じだな。大まかな形は出来上がったが、これを魅力的な展示に仕上げていくのはここからだ」


 だからこその指名方針だしな、とミズネは照れくさそうに笑う。俺たちだけが大きく出遅れているのかと勝手に思っていたが、踏ん張りどころなのは四チーム皆一緒の様だった。


「そう考えると少しだけ安心できるな……。いや、気が抜けない状態なのは変わりねえけど」


「一番形になってないのはヒロトたちなの、忘れないでよね。せっかくの四チーム対抗なのに、一つのチームは完成できませんでしたー、なんて締まらないったらありゃしないんだから」


「分かってるよ。そういうお前たちも気を抜くんじゃねえぞ?」


 ネリンの煽りに片目を瞑りながら答えると、三人は笑いながら頷く。勝負の最終週に向けて、皆の思いは一致しているようだった。


「さて、そうと決まれば英気を養わないとだね。家に帰ってからの二日間くらい、懇親会のことを忘れて目いっぱい羽を伸ばそうじゃないか」


「あ、それいいわね。最終週なんて絶対根詰めることになるし、その前に思いっきりリフレッシュしちゃいましょ」


「そうと決まれば私が計画を立てよう。……と言っても、大半の時間は家でのんびりすることになるだろうがな」


「息抜きも大事なのはこの一ヶ月でいやというほど学んだからな……何もかもいったん置いといてだらだらいこうぜ」


 さっきまでの緊張した雰囲気はどこへやら、アリシアの一言をきっかけに俺たちは一気に色めき立つ。その切り替えの早さが俺たちだし、それでいいと思う。いつも肩肘張った俺たちなんて、あまりにもらしくないからな。


「とりあえず、フェアリー・カードの時間は大量に作らなきゃね。最近ロクにできてないのが心残りだったんだ」


「ブランクがあるアンタにならあたしでも勝てそうね……ミズネ、あたしからもお願い」


 二日間でやりたいことをあれこれと提案しながら、俺たちはにぎやかに屋敷へと向かっていく。それぞれの動きが烈しくなってきた準備二週目は、しかしほのぼのとした形で幕を閉じた。

ということで、懇親会準備編は最終週へと進んでいきます!果たして四人はそれぞれの理想を形にすることが出来るのか、楽しみに見守っていただけると嬉しいです!もし気に入っていただけたらブックマーク登録、高評価などぜひしていってください!ツイッターのフォローも是非お願いします!

――では、また明日の午後六時にお会いしましょう!

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