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第二十六話『決着、それと真相』

ーー人形がその動きを止めても、俺はしばらく立ち尽くしていた。


「やっ……た……?」


 息が荒い。肩を上下させないと心臓が口から飛び出してしまいそうだ。……それでも、達成感は確かにこの手に残っていた。


「そうよ。……アンタが、それをしたの」


 必死に息を整えようとする俺の肩を、ネリンが労いの言葉とともにポンと叩いてくれた。


「かっこいいとこ、ちゃんと見せれたんじゃない?ま、あたしならもっとスタイリッシュにやってるけど」


「……うるせ」


 茶化す言葉にそっけなく返すものの、その労いの想いはしっかりと届いている。……ただ、素直に感謝を示すのが照れくさいだけだ。……それを理解してくれているのか、ネリンもこれ以上何も言わなかった。


「……二人とも、お疲れ様でした。二人の努力、しかと見せていただきましたよ」


「クレン……ありがとね、助太刀を認めてくれて」


 パチパチと拍手をしながら、クレンさんがこちらに歩み寄ってくる。その目は満足げに細められており、どこか楽しそうに微笑んでいた。


「ええ、それはそれで面白いものを見せていただきました。……それに、予想通りの展開ではありましたし」


「そう、それならよかった……って、予想通り?」


 賛辞にネリンは胸を張って返そうとして、唐突に放たれた爆弾発言に目を丸くした。


「予想してた……って、どうしてそれならすぐに助太刀を認めてくれなかったのよ⁉︎」


 身を乗り出すようにして、ネリンは至って平常心に見えるクレンさんに食ってかかる。それは戸惑いというよりも、むしろ怒っているような感じだった。


「あいつがかなり追い込まれているのは分かってたでしょ⁉︎頑張って凌いでたからいいものの、もっと前に許可してくれたって!」


 感情的なネリンとは対照的に、クレンさんはどこまでも冷静に首を振った。


「……いいえ、それも含めて試験内容でしたから。……結果として、いいものが得られましたし」


「……それも含めて……って、どういうことよ?」


 戸惑いを隠せないネリンに対して、クレンさんは一本だけ指を立てた。


「……昨夜、本当に深夜のことです。私の旧友から一本の連絡が来ました。……それが誰か、勘のいい貴女なら理解できるでしょう?」


 ニッと悪戯っぽく笑ってみせるその姿に、俺も薄々クレンさんが示す『旧友』の予想がついた。その人物は、多分ーー


「……パパ……?」


「ご明察です。バルレーー貴方のお父様から、深夜に連絡が来たんですよ『娘にいい友達ができた』ーーと、それはそれは嬉しそうに」


「パパ何やってんのよ……」


 楽しそうに笑うクレンさんの様子に、ネリンはため息を吐きながら頭を抱えていた。……娘大好きなバルレさんのことだ、新しくできた同世代の友達がよほど嬉しかったんだろうな……


「ですが、それと同時にこうも綴られていてですね。『……同世代の友達に対して、ネリンが素直に接することができるか心配だ』……とも。親バカなアイツのことです、本当に大切で仕方ないんでしょう」


「そんなに心配しないでいいって言ってるのに……」


「まぁ、それは親心というものです。いつまで経っても子供というのは可愛いものですからね。……そんなバルレは、私にこう依頼してきたのですよ。『……娘がちゃんと友達のことを想えているか、試して欲しい』ーーと」


 頭を抱えるネリンをたしなめるようにクレンさんは肩を叩きながら、サラッととんでもないことを口にした。ーーそれはもう、とんでもない事実を。


「……ということは、俺たちが今日ここに来るのは分かっていた……と?」


 絶賛息を整えている最中だったが、俺は思わず割り込んでそう質問する。……もしこれが真実なら、色々なことがひっくり返るぞ……?


 そんな重大な質問に、クレンさんは笑って首を縦に振った。


「……もちろん。ヒロトという名前も、しっかりと。……武器適正試験という体を取りましたが、これはお二人の友情を試す舞台でもあった、という訳です」


 あっけらかんと、クレンさんはそう言い放った。それは、軽ーく言い放つにはあまりにもそぐわない、『最初から全て仕組まれていた』という真相の告白に他ならなくてーー


「もう……何だってんのよーーーっ‼︎」


 顔を真っ赤にしたネリンの叫びが、戦いの後のコロッセオに響き渡った。

今回短めでごめんなさい!ネリンとヒロトの共闘、その後のゆるっとしたやりとり含めて楽しんでいただけていたら幸いです。異世界生活二日目はまだ中盤、これからもついてきていただければと思います!

ーーでは、また明日の午後六時にお会いしましょう!

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