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第二百五十話『今できること』

「……ま、そこまで露骨なことが出来るわけでもないでしょうけどね。あくまでできるのは質問だけ、ケチを付けられるわけじゃないから」


「うっかりほかの案に言いがかりをつけてしまえば周りの心証を悪くしかねないからねえ。まあ、そこまで考えてくれるかどうかはまた別問題だけど」


 俺が焦りを感じ始める一方で、ネリンとアリシアは割と冷静だ。口ぶり的にこうなることを予見してはいたみたいだし、ある程度対策を練っているのかもしれないな。……となると、俺が相談すべきなのは――


「……ミズネ、これどうする……?」


「そうだな……私が思っていたより、このプレゼンは総合的な力が問われるもののようだ」


 俺と同じく事情を知らなかったミズネも、この状況を受けて首をひねっている。もちろん自分の案に矛盾などが無ければ問題はないのだが、俺たちもプロという訳じゃない。当然、どこかで質問されうる場所は出てくるだろう。問題はそれにどう対処するか、という話だ。


「今から案を練り直すのは無理としても、どうにかそこに突っ込まれないような感じにしないといけないのがな……」


「そういう方針で行くしかないだろうな……今から作り直しても新たな欠陥が出来上がるのが目に見えているのが辛いところだ」


 そう、これが問題なのだ。一つの欠陥を見つけてふさいだところで、そこ以外でぼろが出てしまえば何にもならないどころかむしろマイナスになってしまう。今日のところはそこに注目させないことだけを考えて、見つけた欠陥をひそかに修正するのが一番丸い選択肢だと言えるだろう。


「それはそれで気まずい気持ちにはなるけどな……申し訳ねえというか」


「ヒロト、今回のプレゼンはライバルとの戦いだと考えた方がいい。相手が全力で来るなら、それに対してこちらも打てる策を打ち切るのが礼儀というものだぞ」


「そういう考え方もあるのな……流石場数が違う」


 ミズネもどちらかと言えば俺寄りの考え方なのかと思っていたのだが、ことこういう場においては手を尽くすことに遠慮がないタイプらしい。エイスさんの付き添いでいろんな場所を回ってたって話だし、そういう水面下の争いとかも見てきたのかもしれないな……


「正々堂々というのは場所によって形を変えるものだからな。正攻法を駆使することだけが戦いの礼儀というものでもないさ」


 冒険者が地形なども味方につけて難局を攻略して見せるようにな、とミズネは最後に付け加えた。そう聞けば、このプレゼンが異様な状況であることを利用した立ち回りというのも悪くない気がしてくるから不思議な話だ。


「やれるだけのことをやればいい、ってことだな。と言っても、俺は自分のプレゼンを見直すので精いっぱいだろうけど」


「そうだな。私たちも指摘する側に回れればよいのだが、ネリンたちと違ってその余裕はなさそうだ」


「……アイツら、このプレゼンに合わせて対策も練ってきてるだろうからな……」


「手ごわいライバルだな。……私も、全力を尽くして相手をしなければだ」


 そう言って、ミズネはアイテムボックスから書類を取り出す。それに立ち会うのも気まずいので、俺はとりあえず離れることにした。


「……まったく、今日になって状況が変わりすぎなんだよな……」


 今日まで事情を教えてくれないのを水臭いと思う反面、それも含めて情報戦だと考えるとそれも仕方ないように思えてくる。この場を設けて教えてくれなければ、俺たちは本番でそのことを知ることになってただろうからな。


「ベレさんに引き合わせてくれたのがせめてもの温情って受け取っとくか……」


 事態がかなり複雑になってきているが、俺たちのやれることは変わっていない。俺たちが完璧なプレゼンをできれば、相手方だってうかつな主張はできないんだからな。


「……その様子じゃ、俺の手助けは必要ねえみたいだな」


 俺が内心覚悟を固めていると、後ろから頼もしい声が聞こえてくる。振り向けば、そこにはベレさんがいつも通りの豪快な笑顔を浮かべて立っていた。


「……何度見ても、少し浮いて見えますね」


「それは俺も思ってることさ!そこまで言えるなら、本当に緊張はとれてるみたいだな!」


 どうやら俺を気にかけてくれていたらしく、俺の返答にベレさんはさらに破顔する。スーツはやはり見慣れないが、その表情はやはり心強かった。


「……本当に、見違えるくらい立派な顔つきになったな。いっぱしの冒険者に見えるぜ」


「……そっすか?自分ではあんまり成長を感じないんすけど……」


 あるとしたら自分のことをあまり悲観的に見なくなったことくらいか。悲しい事に、冒険での貢献度は相変わらず上がっていないような気すらしているのだが――


「大丈夫だ、お前はもう駆け出しなんかじゃねえ。胸を張って冒険者を名乗っていいぜ」


「…………それなら、少しだけそれを信じてみますね」


「それでいいさ!少しずつ積み重ねて、いつか自分を完全に信じられるようになればいいからな!……それじゃ、プレゼン期待してるぜ!」


 そう言って、ベレさんは踵を返して歩き出していく。近くにいた人と何かしら話し、今日の流れをもう一度確認しているようだ。……まったく、いつ見てもすごい人だ。


「……期待してる、か」


 ベレさんの言葉を反芻し、企画書をアイテムボックスから取り出す。懇親会のスタートまで残りに十分とちょい、到底大きな変更ができるとは思えないが……


「……さて、頑張るか」


 できることを最後までやってみよう。……ベストを尽くせば、少なくとも後悔は残らないだろうからな。

ということで、四人はそれぞれの形でプレゼンへと向かっていきます!果たして勝ち抜くのは誰なのか、注目しながらついてきていただけると幸いです!もし気に入っていただけたらブックマーク登録、高評価などぜひしていってください!

――では、また明日の午後六時にお会いしましょう!


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