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第二百四十七話『夜の雰囲気』

「……うん、皆さまになってるわね。特にヒロトなんかは見違えるくらいにしっかり着こなせてるわ」


「初期値がお前らに比べて低すぎるだけな気がするけどな――」


 顔合わせ会の時にも着用した服に身を包んでエントランスに集合するなり、ネリンから賞賛の声が飛んでくる。本当なら素直に受け取りたいところだが、ほか三人の仕上がりが良すぎてそうもいかないのが悲しいところだった。


 クセが強いことで有名な我らがパーティだが、その顔面偏差値が高い事でも有名……なんて噂を耳に挟んだことがある。もちろん俺を見なかったことにしているのだろうが、その条件にのっとるならば確かに三人とも端正な顔立ちをしているといえるだろう。もともと整ったスタイルに相応しい服装をしているのだから、慣れさえしてしまえばその相性は抜群だと言えた。


「それに比べて俺の着られてる感よ……」


「そんなに卑屈になる事もないさ。ヒロトも十分その服になじんだと言っていいと思うよ」


「そうだな。お前はお前らしく、堂々としていればいいさ」


「そんなもんかね……?」


 ミズネとアリシアもフォローを入れてくれるが、やっぱり隣に並ぶのは少し緊張する。場違い感というかなんというか、そういうのが無ければいいのだが――


「大丈夫よ、あたしたちにはそう見えないんだから。さ、早く出発しましょ」


 なおも悩む俺の肩をポンと叩いて、ネリンが外に続くドアを開ける。定例会自体はあと一時間後くらいから始まるので、かな余裕をもって集合場所に間に合う計算だ。


 集合場所と言っても、いつものギルドのことなんだけどな。懇親会の準備にしてもそうだが、冒険者に関わる大体のことはギルドの集会所で行われるのが通例なんだそうだ。そこでできないこともすぐ近くの武器鍛冶協会やらですぐに済むのだから、つくづくこの街のシステムはよくできていると思う。


「ギルドに行けば大体のことが出来るんだもんな……とんでもない万能さだよ」


「パパの話だけど、ここのギルドは大きさだけなら王都のそれに引けを取らないそうよ。あっちには同じようなのが四つはあるから、数自体は負けてるらしいけど」


「そうだな。仕事で何度か王都に向かったことがあるが、あそこの街並みは本当に独特だ。最初に来たときには散々迷ってしまってな、それ以来王都では地図が手放せなくなってしまったからな」


 もっとも今はまた違った形になっているんだろうが、と笑うミズネを見て、俺はとっさに図鑑を取り出す。五日前に雑誌を読んでからいろんな形で情報に触れる努力はしていたが、王都の基本知識に踏み込むのは後回しになってしまってたからな。


 パラパラとめくって街の外形に関わるページに移動すると、そこには数々の都市イラストが並んでいた。不思議なことに建物などの配置は変わらないまま、道のつくりや接続、果てには建築様式までが違っている。


「……これ、毎回毎回作り直してんのか……?」


「何らかの術式があるという話は聞いたことがあるが、それ以上の情報が出回っていないというのが現実だな。まことしやかにささやかれている噂こそあれ、これで確定だと言い切れるような情報は未だに判明していないのが正直なところだ」


「みんな知りたがってるのにここまで隠すのにも何か意図がありそうだけどね……もちろん、悪い意味ではないと思うけど」


「そこがはっきりしていれば問題はないからね。……それはそれとして、興味は大いにあるテーマではあるけど」


「……だからと言って変なことしちゃだめだからね……?」


 案の定目を輝かせているアリシアにミズネが釘を刺すと、俺たちから笑みが漏れる。無意識のうちに入っていた肩の力が、少しばかり抜けたような気がした。


 そんなことを話しながら向かっていると、少々時間がかかるギルドにつくのもあっという間に感じる。普段は昼に訪れることが多いギルドも、夜にこうして見上げるとまた違った趣がある。……端的に言えば、今まで見てきたギルドの中で一番威圧感があった。


「時間一つでこんなにも変わるもんなんだな……」


「今日が定例会ってなればそりゃ少しはピリピリするわよね。ここに入って来る人のほとんどはそれが目的でここに向かってくるわけだし」


 普段はゆるっとした雰囲気のギルドが、今日ばかりはピシッとした雰囲気に満ち溢れている。ネリンの言う通り、その一因はギルドに踏み込んでいく人々にあるようだった。


「いきなり想像以上だな……焦ってアイデア飛ばないようにしないと」


「メモの一つでも先に作っておきなさい。ギルドに入ってから書けば、少しはその雰囲気にも慣れてくると思うし」


「…………なるほど。私たちが妙に早く来たのはそのためでもあるということか」


 感心したようにうなずくミズネの言葉で、俺はようやくネリンの時間設定の意図に気づく。この雰囲気に慣れることが、有益なプレゼンの第一歩だったというわけだ。


「そういうこと。……でも、本命の目的はこっちよ」


 そう言いながら、ネリンはギルドのドアを押し開ける。そして、「来たわよー」と店内に合図を一つ。すると、すぐに一つの影がこちらに向かってきて――


「……って、ベレさん⁉」


「おう、今日はよろしく頼むぜ!」


 俺に冒険者としての基礎知識を教え込み、そして俺たちにパーティの心得を伝授してくれた恩人が、その巨体を正装に包んでいた。


まさかの遭遇は果たしてヒロトたちに何をもたらすのか!次回以降さらに展開は加速していきますので、お楽しみにしていただければ幸いです!もし気に入っていただけたらブックマーク登録、高評価などぜひしていってください!

――では、また明日の午後六時にお会いしましょう!

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