第二百四十一話『団らんと自問自答』
「グループ対抗の出し物か……悪くないんじゃない?」
「そうだな。私の中にはない発想だった」
「街の伝統としてはずっと街で一つの出し物を作っていたわけだからね……審査を来客に一部任せたら参加感も生まれてよりよくなるんじゃないかな」
三人からしたら突拍子もない提案だっただろうが、返ってきたのは好意的な反応だった。もう少し難色を示されるかなーとも思っていた身としては、すんなり受け入れられて一安心って感じだ。
「問題は定例会で話し合う人たちがそれを納得してくれるかなんだけどな……このアイデアをどう説明したもんか」
「そこに関しても問題はないと思うよ。懇親会の出し物について毎回喧々轟々って感じだし、堂々と争う機会が与えられたら嬉々として飛びつくんじゃないかな」
「あたしもアリシアと同意見ね。あんまり大きな声で言いたくはないけど、懇親会の面々はその分野に関してだけ本当に分かりあえないからね……。ここで白黒はっきりつけるのもいいでしょ」
……話を聞けば聞くほど、定例会が危険な場所に見えてきてしょうがないな……商店街のメンツも言葉を濁してるくらいだし、少しは気を付けなきゃいけないのかもしれない。
「そんなわけで、あたしはその提案だすのに賛成。……と言っても、あたしはあたしで別の案を持ってくるつもりではあるけどね。……アンタの案に譲ってあげる気はないから」
「ボクもそうだね。ここまで考えてきた案があるし、ボクとしてはそれをぶつけてみたい。異世界の知識をもとに作り上げられた案にボクの考えがどこまで通用するか、興味深いからね」
「定例会の中身については私もヒロトと同じく無知だが、案についての姿勢は二人と同じだ。私も全力で練った案をぶつけさせてもらう」
三人が俺に対して対決の意志を表明したところで、俺の提案に対する議論はいったん終わりを迎える。体を休めながら話し合っていくうちに、本来の調子を皆取り戻しつつあるようだった。
「さて、堅苦しい話はここまでにしましょうか。一日中懇親会の話なんてのも疲れる話だし」
「そうだね。そんな毎日はたくさんだよ」
伸びをしながらのネリンの言葉にアリシアが大きく頷いたことを契機に、俺たちの雰囲気が一気にだらけたものに変わる。さっきまでも和やかではあったが、今はそれを通り越してのんびりとしていた。
「こういう仕事は初日だけだと願いたいわね……体力の消費が半端じゃないし」
「同感だな。地域の人たちと交流できるのは中々に興味深いことだが……」
素直にいい事、と言い切れないあたりにミズネの苦労が詰まっていると言ってもいいだろう。ちやほやされるのも限度があることを思えば、商店街の人たちはそこらへん上手だったんだな……。
「ま、いい経験になりそうではあるよな。話を受けたのも間違ってはないんじゃないか?」
「そうだねえ。疲れるのはイヤだけど、ボクが普通に過ごしていたら決して交わらなかったような人たちと交流できるのはこの機会があったからだと思うよ」
「そうね。そう捉えれば、手伝いずくめの日々もまあ悪くはないのかも」
俺たちの感想に、ネリンが少し安心したように笑う。クレンさんとの話し合いを主導したことを少し気にしているのかもしれないが、もしそうなら杞憂だというものだ。
「なんだかんだでいい方向に行きつつあるだろうし……なんて、手伝い初日から言えることじゃないかもしれないけどな」
「少なくとも誰かさんは吹っ切れたみたいだし、あたしたちにとって悪い変化じゃないでしょ」
「そうだねえ。自分の答えがある程度見えてきたみたいで安心したよ」
「……その節は世話になりました……」
予想だにしないカウンターに俺が頭を掻き、ネリンとアリシアが悪戯っぽく笑い、事情を知らないミズネが首をかしげる。その光景は、間違いなくパーティの団欒と言っていいものだと思えた。
――この調子で懇親会の最後までいけるだろうか。そんな不安が頭をかすめたが、それに対して俺は「当然だろ」と自答する。……それが躊躇なくできるようになったのが、もしかすると一番の成長なのかもしれなかった。
前向きな感じで結束したパーティにこの先何が待ち受けているのか!楽しみにしていただけると幸いです!ここから懇親会はさらに盛り上がっていくのでお見逃しなく!もし気に入っていただけたらブックマーク登録、高評価などぜひしていってください!
――では、また明日の午後六時にお会いしましょう!