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第二百四十話『見つけた方針』

「……何があったかは、聞かない方がよさそう?」


「いや、大丈夫だ……言葉にしてしまえば、大したことは無いからな」


 ミズネとともに四人で居間に移動し、テーブルを四人で囲む。その直後に繰り出された質問に、ミズネは力なく笑って見せた。


「エルフということ、この街に新しく来たばかりということ。いろいろな事情もあったし、ある程度覚悟はしていたさ。ただ、まさかここまでだとは思わなかったな……」


「その言い方……まさか、ひどい事されたりはしてないよな?」


 さっき自分たちでその可能性は薄いとみていたが、万が一ということもある。それにおびえた俺が思わずそう質問すると、ミズネはゆるゆると、しかしはっきり首を横に振った。


「そんなことはかけらもなかったさ。……どちらかと言えば、その逆だ」


「逆……?」


「ああ、そういうことね。言われてみれば、確かにそうなっても仕方ない場所かも」


「そうだねえ……やっぱりランダムは悪手だったと思うよ」


 たとえ同じような仕事であったとしてもね。とアリシアは肩を竦める。どうやら二人は何があったのかを大方察したらしい。一人自体が飲みこめないままの俺は、視線を左右に送りながら首をかしげることしかできなかったのだが――


「……簡単な話さ。……副業としてのモデル勧誘やら、エルフの里特有の美容法やら何やら、根掘り葉掘り聞きだされた……」


「ミズネ綺麗だもんね……そうなっても仕方ないわよ」


「もともと目を付けてた人もいるんじゃないかな。それが今回の手伝いで身近になったことで起爆した……なんてのは、ボクの想像に過ぎないけどね」


 机に体を投げ出しながらそう嘆くミズネに、二人が「やっぱり」と言いたげな反応を見せる。ワンテンポ遅れて図鑑を開き確認してみると、ミズネの向かった場所はインテリアショップやアパレル店が多く並ぶところだった。お揃いのチョーカーを買った店もこの区画の一部だ。そう考えると、この街で一番『おしゃれ』というジャンルに強い場所なのかもしれない。


「それなら、ミズネが注目を浴びるのも納得の話だな……」


「『独自の健康法などない』と、何度説明しても信じてくれなくてな……あの人たちの美容やおしゃれに関する執念はすさまじいよ」


「冒険者が多い街でそういうジャンルの店を開くのには相当な覚悟が必要でしょうからね……そういうのは王都で店を構えるのが定番って言われるくらいだし、それを外れてるあの人たちの覚悟は相当なものだとあたしも思うわ」


「ボクも同感だね……何度『なにも手入れしないなんてもったいない!』って言われてメイクされかけたことか」


「……どこの世界にも、おしゃれガチ勢はいるものなんだな……」


 美しくなりたい、きれいでいたいという欲求は、老若男女どころか世界まで問わないで持てるものらしい。この世界がそれだけ平和ってことだし、いい事なのは間違いないんだけどな。


「私も色々なことを聞けたし、有意義な時間ではあったのだが……あのあたりでの作業は一週間に一回くらいのペースにしてくれるとありがたいよ……」


「そうするわ。毎回毎回こんなに疲れるのも問題だしね……」


 今回ばかりはそれが裏目に働いたことは間違いない。今後のシフト構成に一つ留意点ができたところで、ミズネからの報告は一段落という形になった。


「それじゃ、あたしたちも簡潔に報告だけしましょうか。……もっとも、そんなに特別なことがあった訳でもないと思うけど」


「そうだな……分かったのは商店街の面々がお祭り好き――というか宴会好きな事だけだよ」


「あの人たちは事あるごとにお酒を飲もうとするからね……営業が終わった後に酒場に行けば大体会えるから、買い忘れたものがあったりしたら酒場に行くといいわよ」


 大体買わせてくれるから、とネリンは苦笑する。これはこれでいい情報に思えるが、それを活かすのはもう少し後の話だ。


「……ああ、そう言えば。定例会の人たちとかの話とかも聞いて、俺に一つ考えがあるんだけどさ」


 定例会でいきなり提案するのもいいだろうが、少なくとも三人には話を通しておく方がいいだろう。そっちの方が運営とかも楽になるかもしれないしな。


「考え……?定例会での喧嘩を防ぎたいって話なら無理だと思うわよ?」


「無理とまで言うのか……?」


 ばっさり切り捨てるネリンに、ミズネが思わず目を丸くする。ますます定例会という場所が殺伐とした場所に思えてきたが、今回ばかりはそれが有効活用できるかもしれないのだ。


「ま、喧嘩を完全に止めることはできないかもしれないな。……それなら、別の分野で争ってもらえばいいんじゃないか?」


「別の分野で、ね……。それが出来るなら、確かに画期的だけど」


 そんな返答がされたことに、俺は内心拳を握る。その答えが返って来るなら、俺のアイデアが通用する可能性は随分と高そうだった。


 もっとも、それは日本文化からの受け売りだ。だから、とりあえずは外枠だけ借りることにしよう。そう決めていた俺は、三人をもう一度見まわすと――


「……懇親会に携わる人たちをいくつかのグループに分けて、あるテーマのもとに作品を作り上げてもらうんだ。……それなら、喧嘩するほどの情熱を別のところに活かせるかもしれないだろ?」


 できる限り自信ありげに、そう提案して見せた。

いろんな人たちに話を聞き、そして影響を受けたヒロトの提案が果たしてどんな方向に物語を進めていくのか!まだまだ盛り上げていきますので、これからもぜひ追いかけていただけると嬉しいです!もし気に入っていただけたらブックマーク登録、高評価などぜひしていってください!

――では、また明日の午後六時にお会いしましょう!

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