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第二百三十二話『早朝の決意』

「…………嘘だろ、もう作業始まんのか……?」


―懇親会準備が始まる朝のこと、俺はインターホンの音で目が覚めた。ふと傍らの時計に目をやると、日本時間で言えば朝の六時ぐらいであることに驚きを隠せない。部活動にもあまり縁がなかった俺にとって、こんなに朝早く動かなくてはならないのは町内会のラジオ体操以来のことと言っても過言ではなかった。


 眠い目を擦りながらベッドを離れ、冒険をするときの装備を手早く身に着ける。『動きやすい服装の方がいい』と言われて真っ先に思い付いたのがこれだったのだが、少々やりすぎだろうか……?


「ま、対策しすぎるに越したことはねえか」


 何てったって初日だからな。どんな仕事が来るにせよ滑り出しは大切だ。


 そんな風に気合を入れながら居間に向かうと、そこにはすでに準備万端の三人がいた。普段は寝起きの悪いネリンまでもうすっかり目覚めているようで、俺が本当に最後の到着者だったらしい。


「おはよ。もう仕事の依頼表来てるわよ」


「パッと目を通したけど、今のところ予想通りの内容だね。……まあつまり、肉体労働だよ」


 俺がソファーに腰を下ろすと、それを見計らったかのようにネリンから一枚の紙が差し出される。そこには、箇条書きの様式でこなしてほしい仕事がずらりと並んでいた。


「……まさか、これ全部こなすのか……?」


「流石にそこまで鬼畜じゃないわよ。この中のどれかに人を送ってほしいってこと。最終的には全部の場所に行くことになるとは思うけどね」


「一日がかりではなく何日かぶんまとめての依頼表というわけだな。……まあ、どこから行ってもタフな仕事になるのは容易に想像ができるが」


 ミズネもその仕事量に驚いているのか、依頼表をまじまじと見つめている。視線を上下に滑らせながら、「こんな場所でもあるのか……」などと時折声を上げていた。


 確かに、今出ている仕事の大半は『資材運び』とか『出店の仮組み』とかだもんな……。自どこに行っても体力を使うことになるのは間違いなさそうだ。


「とりあえず、今日は四人で体力仕事ね。どこも一人でいいって言ってくれてるから、四人で手分けしてそれぞれの持ち場に向かいましょ」


「そうだね。誰がどこに向かうかは……まあ、そんなに考える必要もないか」


「どこも似たような仕事内容だしな……。それで話し合う暇があったら少しでも早めに動いてたくさんの作業をこなす方が有益だと思うぞ」


 アリシアの考えに俺も賛同して、とりあえず持ち場決めの形態がそれに落ち着く。少しずつ準備が進んでいけば専門的な事が必要になって来るんだろうけど、今はまだ単純な作業だからな。


「それじゃ、雑に上から振り分けましょうか。ヒロトは……商店街の資材運びね」


「了解。ド定番って感じのところだな」


 雑に振り分けられた結果なのだろうが、それでもここ一ヶ月の生活で行きなれた場所での作業なのがありがたかった。店のおばちゃんやおじちゃんとは顔見知りだし、ある程度和気あいあいと作業をすることが出来るかもしれないしな。


「それじゃあ、日中はみな別行動だな。なんだか変な気分だ」


「全員が別行動ってなかなかなかったもんね……。あたしたちってなんだかんだで団体行動しがちだし」


 買い物に行くにしても大体二人組だし、一人で買い物に行くやつがいる時はほか三人は大体居間でだべったりしてるからな。そう考えると、四人がばらばらになるのは少し珍しいかもしれない。


「そう考えると心細いねえ。……でも、ボクはボクなりに頑張って来るよ」


「それでいいのよ。それぞれがやれることをしっかりやりましょ」


 ようやく覚悟を決めきったらしいアリシアに、ネリンが力強く頷いて見せる。普段は仲のいい友人だが、こういう時だけはなぜかネリンがアリシアのオカンに見えるんだよな……。


 そんな妙な感慨は俺の中だけにしまっておくとして、俺も内心で覚悟を固める。よく考えれば初めてのクエスト以来の一人での仕事だ。そりゃもちろん、緊張しないわけではないが――


「それじゃあ、それぞれ持ち場に出発しましょうか。気負い過ぎなくていいから、自分にできる目いっぱいを見せてきましょ!」


「「「おーーーっ!」」」


――パーティの一員として、期待させた身として、精一杯頑張らないとな!

次回から本格的な準備へと突入していきます!決意を固めたヒロトは果たして仕事を無事こなせるのか!お楽しみにしていただけると嬉しいです!もし気に入っていただけたらブックマーク登録、高評価などぜひしていってください!

――では、また明日の午後六時にお会いしましょう!

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