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第二百二十話『愛しい我が家』

「…………あー、つっかれたあああ……‼」


 やけに長く思える道のりを歩いて我が家にたどり着くなり、俺はエントランスのカーペットに倒れ込みながら声を上げる。心地いい疲労感ではあったとはいえ、俺の体はかなりギリギリまで疲弊していたようだった。


「疲れたのはあたしたちも一緒よ。ほら、分かったらサッサと立ち上がる」


「そうだぞ。しっかり後始末をするまでが一仕事なのだからな」


「……お前ら、元気過ぎねえか……?」


 叶うならもう一歩も動きたくないくらいの俺に対し、ネリンとミズネはまだまだ動けそうだ。そんな二人に促されてのそのそと立ち上がっていると、俺と同じように寝転がっているアリシアと目が合った。


「……もう少し、このままでいさせてくれ……」


 カーペットに頬を密着させているその体勢には力感がなく、もう一歩も動けないといった様子だ。……自分のことをインドア派って言うくらいだし、冒険者になって少しはましになったと言え、まだまだ体力面には不安があるんだろうな……


「やはり猫をかぶるのは疲れるな……大勢の目の前で演説するなんて趣味じゃないってのに」


「はいはい、不慣れな役割お疲れ様。ほら、手貸すから早く立ちなさい」


「……相変わらずスパルタだな、君は……」


 差し伸べられた手を取り、渋々と言った感じではあるがアリシアも立ち上がる。そうして四人ともが居間に向かう体制を整えながら、ネリンが少し呆れたように切り出した。


「これくらいでへばられたら今後大変なんだからね? いつでも四人で仕事できるとは限らないんだし、一人でもしっかり動けるようになってもらわないと」


「うげ、手分けあるのかよ……それってあっちから指定入るのか?」


「そうね。『二人だけ欲しい』とか多分ざらにあると思うわよ。もしかしたら、人まで指定が来る場合もあるかも」


「……なるほど、こちらで振り分けられるわけではないのだな。それは難しそうだ」


 ネリンの説明にミズネが腕を組み、俺は表情を歪める。四人でこんな負担なのに一人で仕事に向かう機会がある可能性までちらつかされたのだ、そうなるのも無理はないだろう。


「大丈夫だとは思うけどね。この街の人たち、懇親会での作業とかはずいぶん慣れたものだし。問題は毎年変化する部分の方よ」


「毎年変化……?名物のようなものがあるのか?」


「そういうこと。毎年何かテーマを決めて、ギルド本部をそれに沿った施設に一時的に改造するのよ。それで懇親会当日には一番の注目スポットとして扱うってわけ」


「……ちなみに、今年のテーマは……」


「当然、あたしたちが中心になって作ることになるわね。定例会なんかは毎回その話題で半分くらい使うことになると思うわ」


「冒険者のこだわりはすさまじいからねえ……今年は何もないといいが」


「……過去に何かあったみたいな言い方だな」


 揚げ足を取るような形にはなってしまうが、ネリンの言葉に続くようにそう言われては流石に見過ごすことはできない。そんなわけで放たれた疑問に対する答えは、アリシアの笑みが十分に示していた。


「…………さあ、どうだろうね?」


「そういう言葉が使われるとき、答えは大体確定してるんだよ…………」


 隠す気が皆無のアリシアの笑みに、俺は思わずため息をつく。いい作品は熱い思いから生まれるというのも確かだが、冒険者の情熱は少しオーバーヒート気味なところがあるようだった。


「大丈夫よ、そんなに例が多い話でもないから。きっと穏便に決まるはずよ……今年こそは」


「こそってなんだよ⁉」


 普段はフォロー役のネリンも、気まずそうな顔をしてこちらと目を合わせようとしない。…………多分毎年のように『何か』は起きてるんだろうな……


「……言い知れぬ不安はあるが、それもすべて始まってみないと分からないことだ。とりあえず、今日は無事に顔合わせがうまくいったことを喜ぼうじゃないか」


「…………ま、そうね。起きたことは起きてから対処するのがあたしたちパーティのやり方だし」


「それ、行き当たりばったりって言うんだけどな……」


 普段の冒険ならまだしも、今回の仕事で一番やっちゃいけないことな気がする。先が見えない状況な以上、多少はその場での判断は求められることだろうが――


「そのあたりはなるようになれ、さ。周りの人たちもボクたちに期待はしているだろうが、任せっきりにするつもりは毛頭ないだろうからね」


「…………ま、それもそうね」


 何かを悟っているかのようなアリシアの言葉に、ネリンもふっと微笑んで同意する。ちょうどそのタイミングで、俺たちは居間に到着した。


「ふー、これでやっと休めるな……ホント疲れた」


「同意だね。ご飯ができるまで小一時間寝ていたい気分だ」


 居間につくなり俺とアリシアはソファーに寝転び、それを見た残り二人が苦笑しながら少し遠いところの椅子に腰かける。そのまま、ゆったりとした時間が流れるかと思っていたのだが――


「……それじゃ、あたしは夕ご飯の買い出しとかしてくるから。…………一緒に来る?」


「「遠慮しとく」」


 まだ少ししか休んでないのに次へと動き出したネリンの提案に、俺とアリシアの声がハモった。

懇親会を巡る物語は今までよりもにぎやかに、ドタバタ成分強目でいければと思っています!それに伴って今まであまりなかった組み合わせでのやり取りも増えるかと思いますので、そのあたりも楽しみにしていただけると幸いです!もし気に入っていただけたらブックマーク登録、高評価などぜひしていってください!

――では、また明日の午後六時にお会いしましょう!

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