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第二百十六話『信頼をつかみ取れ』

「おお……」


「新鋭だけど、確かに期待できる面子ではあるかもしれないな……」


「でも、経験に関してはマジでないに等しいんじゃねえか……?」


 歩み出てきた俺たちを見て、どよめきとも歓声ともつかない声が上がる。少なくとも否定的な意見ばかりじゃないのが救いではあるが、それでもある程度の信頼は得ないといけなそうだった。


「去年まで懇親会を素晴らしいものに仕上げてくださっていたパーティに代わり、今回はヒロト殿が率いるパーティが懇親会を中心となって運営してくださります!ノウハウについて不安がある方もいるかもしれませんが、そのあたりもご心配なく! 何せ彼ら彼女らは――」


「あたしは宿屋の娘として懇親会に関わってきた経験があるし、アリシアはストアの運営もあって店のことなら大体分かってる。完全にど素人ってわけでもないのよ?」


 司会役の言葉を遮るようにして、ネリンが堂々とそう宣言する。司会の言葉に耳を傾けていたという状況も相まって、その言葉はすんなりと参加者の耳に届いたようだった。


「と、いう訳です! 私たちも考えたうえで声をかけていますので、そのあたりに抜かりはございませんとも!」


 そんないきなりの乱入にも動じず、司会は自然な形で進行していく。まるで最初から打ち合わせていたかのようなスムーズな展開に、俺は内心感嘆するしかなかった。


「では、私の出番はここまでといたしましょう! ……ここからは、今回の懇親会を担う彼らにお任せしたいと思います!」


 その宣言を最後に司会が袖へと下がっていき、参加者全員の視線が俺たちに集中する。期待するような目、訝しむような目、心配しているような目、面白がっているような目。そのどれもが混じりあって、俺たちに向けられていた。


「……紹介に預かった通り、あたしたちパーティが今回は懇親会の主導をさせてもらうことになったわ。新参だけどノウハウがないわけじゃないのは、さっきので信じてくれてるわよね?」


 いろいろな感情がこもった沈黙を、ネリンの言葉が破る。その問いかけに参加者は頷きを返し、それに向かってネリンもまた頷き返した。


「あたしたちもこの懇親会に主催側で入るのは当然初めてだし、不安に思うことは当然たくさんあるわ。でも、あたしたちだからできることだってあると思うの」


「ボクたちは少々特殊な境遇を持った変わり者の集まりだからね。その噂は、少なからず聞いているだろう?」


 このままネリンの独演会に成るのかと思われたところで、アリシアがネリンの言葉を引き継いで怪しい笑みを浮かべる。横目で見つめたその表情には、なんとも言い表しがたい迫力があった。


「そう言えば、このパーティの話は最近よく聞くよな……」


「なんでも幽霊屋敷の謎を解いたり、討伐系のクエストにもよく出向いているって……」


「俺知ってるぞ!このパーティにはエルフの姉ちゃんがいて、その魔法がピンチのパーティを通りすがりに助けてくれたって!」


 アリシアの問いかけに冒険者と思わしき参加者がざわざわと話しだし、それを聞いた他の人の表情が驚いたようなものに変わっていく。クレンさんが睨んでいた通り、俺たちの評判はある程度広がってきているようだった。


「たくさん認知してくれているようで嬉しいよ。……ボクたちに足りないのは、人手と経験だけだ。あなたたちの協力があれば、ボクたちに足りない物なんてないさ」


 堂々と締めくくったアリシアに、席の一部から歓声が上がる。それを見計らっていたかのようにネリンが軽く目配せをすると、今度はミズネが一歩前へと進み出た。


「……アリシアとネリンに比べて、私にはなじみがない方も多いと思う。なので、改めて自己紹介をするとしよう」


 少し浮かれていた空気がミズネのクールな雰囲気に引き締められ、参加者は皆ミズネの方を一身に見つめている。それを確認すると、ミズネは耳周りの髪の毛をまとめるようにして、その長い耳を外にさらした。


「私はミズネ。……噂の通り、エルフの里出身で今では冒険者業を営んでいる身だ。……それもあって、魔術には少々自信があってな」


 そう名乗りを上げながら軽く手をかざすと、ミズネの手のひらから氷の塊が生成される。それに参加者が動揺するのもつかの間、ふっと手を振った次の瞬間にはそれが影も形もなく消えうせていた。


「……とまあ、こんな感じだ。魔術や魔法を用いて懇親会を盛り上げたいのならば、私の知恵を精一杯貸させてもらおう」


「「「おおおおおーーっ‼」」」


 エルフの全面協力宣言に、商人と思しき参加者中心に大きな歓声が起こる。きっと今頃はどうそれを店の宣伝に使おうかと思考を巡らせている事だろう。


「ここまで言えば、あたしたちの経歴を心配する人はいないわよね。……それじゃあ最後は、あなたたちが絶対成功するって保証をあげる。……もっとも、お守りみたいなものだけどね」


 そんなどよめきの中、よく通るネリンの声が話をもう一段階前へと進める。そして、その後すぐに俺への目くばせが飛んでくる。……どうやら、ここからが俺の出番らしかった。


次回、ヒロトは何を語るのか、そして無事に参加者の期待を得ることが出来るのか!ここからまだまだ盛り上がっていきますので、楽しんでいただけると嬉しいです!もし気に入っていただけたらブックマーク登録、高評価などぜひしていってください!

――では、また明日の午後六時にお会いしましょう!



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