第二十話『武器斡旋所』
「……すっげえ」
斡旋所のドアを開けた先にあった光景に、俺は思わず声を上げた。
「でしょ?カガネでも有数の場所なのよ」
左右の壁には様々な種類の武器がかけられ、武器の博物館と言われても信じられるくらいにはその品ぞろえは豊富だった。これが武器鍛冶連合の力を結集した成果なのだろう。
「そりゃとりあえずここに行けってなるわ……まじで便利だなカガネの街って」
「そうよ、カガネは色んなことを始めたい人のための街だもの。誰もの力になれるように街ぐるみで整備されているって話よ」
なるほどな……駆け出しをサポートする設備が揃っているのはそういうわけか。RPGとかで言うところの『はじまりのまち』って訳だ。
まぁ、それにしては色々とスケールがデカい気もするのだがーー
「ま、うちの宿屋が繁盛してるのも人が賑わってるおかげだしね。持ちつ持たれつ、ってやつよ」
ママの受け売りだけど、とネリンはおどけてそう締めくくった。それを聞いて、俺は改めて今まで見てきたカガネの街並みを思い返す。
そういえば、どこを見ても人で賑わっていたっけな……あれは街を挙げての努力の成果だったってことか。そう見ると、商店街の景色も少し変わって見えるってもんだ。
「すげぇ街だな、ほんと……」
「そうなのよ。ママの世代からずーっと続く、伝統ある街なんだから。高名な冒険者も沢山排出してるのよ?」
王都に向かう冒険者も沢山いるし、とネリンは講釈を付け加える。それに俺が感心していると、
「そうです。この街の役目は、そこにこそ本質があるのですから」
……俺たちの後ろから、低く落ち着いたトーンの声が割り込んできた。
「おわっ!?」
突然の出来事に驚いて振り向くと、そこには長身の男性が立っていた。革のスーツに身を包んだ細身の姿にモノクルがよく似合っている。見上げる形にはなるものの何故か威圧感を感じない、不思議な雰囲気の人だった。
「……おっと、驚かせてしまいましたね。見知った背中が見えたもので、つい」
俺の驚き様を見て、男性は頭を下げる。ほぼ直角に近いその様子に、ネリンが呆れたように声を上げた。
「クレン、アンタわかってやってるでしょ……コイツはまだこの街に慣れてないんだから、そこら辺宜しく頼むわよ」
「なるほど、これは失礼を。ネリン様のお連れ様でしたので、てっきり古い友人かと」
「それだったらもっと早くに紹介してるわよ……」
「なるほど、それは失敬。貴女はそういうお方でしたね」
肩を竦めるネリンに、クレンと呼ばれた男性は柔らかい姿勢を崩さないまま返す。それはどこか慣れているのと言うか、古い付き合いを感じさせるやり取りだった。なんというか、姪っ子にだる絡みする叔父さんみたいな……
「ネリン、この人は……?」
ネリンはまだ何か言いたげな様子だったが、俺が声をかけるとこちらを振り向いた。そして、クレンさんの顔面をビシッと指さすと……
「……ああ、そういえば紹介してなかったわね。アイツはクレン。パパの古い友達でーー」
「カガネ武器鍛冶連合の代表を務めております。ーー改めまして、ようこそいらっしゃいました。貴方にあった武器を、きっと見つけだしてみせましょう」
ーークレンさんはネリンの紹介を引き継ぎ、優雅に一礼してみせたのだった。
今回も短めでごめんなさい!レポートの課題が切羽詰まっていてカツカツの状況なんですよね……それでも毎日投稿は欠かさずにしていくので是非とも毎日見に来ていただければと!新キャラも登場してこれからどうなるか、次回をお楽しみに!
ーーでは、また明日の午後六時にお会いしましょう!