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第百八十三話『たどり着いた書庫で』

「―—かれこれ十数年、ボクもこの家で生活をしてきたわけだが」


 書庫に案内され、俺たちは大きな扉の前にたどり着いた。家の中とは思えないほど、俺たちは複雑な道のりを歩かされてきたわけだが――


「まさか、こんなに複雑な家の作りをしていたとはねえ。灯台下暗しなんてよく言ったものだよ」


 それに一番興奮していたのは、ほかならぬアリシア自身だった。


「仮にも秘密書庫だもの。間違ってもたどり着かないように、作る場所は慎重に選定されていたらしいわ」


 そんな風にリリィさんは言ってのけるが、俺からしたら慎重なんてものではなかった。階段を何度も上り下りした気がするし、なんなら家の幅よりもまっすぐ歩いたような感覚もある。これと同じ道のりを独りで行けるかと聞かれたら絶対に無理だと即答できるくらいには複雑な道のりだった。


「魔術的な仕掛けも施されているしね……この道のりを正確にたどらないと、行きも帰りも絶対に不可能。これも母様が研究の末に編み出した魔術の一種だそうよ」


「なるほどね……そう聞くと今までの道のりも納得できるあたりあたしもかなり慣れてきてるのかしら……」


「そうなんじゃね?……俺も魔術って聞いたらなんだか納得出来ちゃったし……」


 エルフとは言え魔術が何でもできる万能手段ではないのは確かだが、キャンバリーの娘というだけで不思議な説得が生まれてしまうのもまた事実。ミズネが魔法で大体何でもできてしまうことも相まって、俺たちの魔術への信頼度はかなり高まっていた。


「それじゃ、好きに調べて頂戴。帰りも私が案内するから、聞きたいこととかあったら扉の前まで来てくれれば答えられるだけ答えるわよ」


 気前のいいリリィさんに感謝しつつ、俺たちは扉の先に進んでいく。複雑なルートをたどった先にある部屋にしては、待ち受ける部屋は小さめだったのだが――


「……す、っげ」


 天井まで届きそうなほどの本棚と、真ん中にある机に大量に積み上げられたノートらしきものの数々。そこに広がっていたのは、今でも続いているかのような研究の息吹だった。


「これは……確かに、偶然見つけてしまったらおかしくなってしまいそうだねえ」


 ほうっと深い息をついて、アリシアはぱああっと目を輝かせている。知識に疎い俺でもここの凄さは分かるんだから、知識に深く触れてきているアリシアにとって感動的なものなんだろうな……


「はいはい、アンタが間違えそうになったらすぐ止めるから。情報収集、協力してくれるわよね?」


「勿論だとも。自慢ではないが、速読には自信があってね」


 ネリンの問いかけに力強く頷いて見せると、アリシアは手近な本棚へと飛びついていく。本棚が倒れたりしないかと心配ではあったが、その心配は見る限りなさそうだった。


「さて、俺たちも情報を探さないとな」


「そうね……途中加入のアリシアに全部情報収集を任せるのはなんか情けないし」


 アリシアの様子をしばらく見つめていた俺たちだったが、気を取り直してそれぞれ本棚へと向かっていく。キャンバリーのそれより、少しは簡単な研究内容を期待していたのだが――


「……あんまり変わんねえ……」


 やはり親子というべきか、研究内容についての理解度はエルフの里で見たキャンバリーの論文とほぼ変わらない。少しは読めるようになった気もするが、それは知識が増えたというよりは単に難しい文章に読み慣れてきただけということだろう。


「やっぱり、本棚からは情報を見つけられそうにないな……」


 論文探索を早々に諦め、俺はテーブルの上に散らばったノートに手を伸ばす。日記好きの家系であることを期待して、俺は日記と思わしきノートを開いたのだが――


「……これも論文、か……?」


 直筆感が増しているあたり、下書きのようなもんだろうか。読みづらいし結局中身は論文だし、俺が読めたものではないのは確かだ。殴り書きのような部分があることを見るに、こっちが研究中に書いたものなのだろう。


 かと言って、それが何か情報につながるわけではないのだが――


「……ヒロト君、だったか?そのノート、かなり興味深いな」


「アリシア……?」


 気が付けば、後ろからアリシアが肩越しに手元のノートを見つめていた。その眼は、まるで宝物を見つけたかのようにキラキラと輝いている。


「……それ、少しボクに任せてくれても構わないかい?気になる事があってね」


――理由は分からない。ただ、そう語るアリシアは、確かにキャンバリーの血を継いでいるように思えた。


 

ということで、ここからはアリシアも怒涛の活躍を見せてくれるかと思います!果たしてアリシアはb何を見抜いたのか、次回を楽しみにお待ちいただけると嬉しいです!もし気に入っていただけたらブックマーク登録、評価など気軽にしていってください!

――では、また明日の午後六時にお会いしましょう!

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