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第百六十九話『干渉破り』

「パパとママの……?ずいぶんといきなりな提案だけど、理由がちゃんとあるの?」


 唐突なミズネの提案に、真意をつかみきれない俺たちは首をかしげるしかない。確かに俺たちパーティにとってなじみ深い場所であるのは確かだろうが、わざわざそこじゃなきゃいけない理由があるのか……?


「私の知る限りネリンのところの宿が一番いい環境だからな。そこならば誰かに割り込まれることもないし、じっくりと向き合える。……それに、リセットを食らう心配もないからな」


「リセットを……?アレは対魔力加工も貫通するんじゃなかったのか?」


 アイテムボックスの中に入っていた鍵が無事だったのはともかくとして、エルフの加工を突破してくるリセットを防ぐ手立てがネリンの宿にあるとも考えにくい。そんな風に俺が考えていると、ミズネは軽く首を振った。


「対魔力がどうとか、そういうことはあまり関係がないんだ。もっと対策は単純でいい――結論から言ってしまえば、この屋敷から距離を取ってしまえばいいんだ」


「距離を取るって……そんな事でいいの⁉」


「そんな事がいいんだ。この術式が行うリセットに対して、『術式が適用されている範囲から離れる』こと以上に効果的な対策はそうそうないと思うぞ」


 一見すると……いや何度考えても初歩的な対策だが、どうもミズネは大まじめの様だ。そう言われて俺も考えてみると、ふと思いつくことがあった。


「……この魔術が仕掛けられているのはこの屋敷全体に……ということは、その影響の外に出られれば干渉を一まずはスルー出来るってことでいいのか?」


「大体そういうことだ。……驚いたことに、この術式は結界術の一種だった」


「結界術……⁉これ、そんな大規模だったの⁉」


 結界術というワードに、ネリンがのけぞる。大げさとも思えるが、ミズネの大真面目な表情からするに割と相応なリアクションなのかもしれない。


 そんな風に思って図鑑を開いてみると、結界術の項目はすぐに見つかった。『結界内の一点を核として展開される魔術であり、その結界の内側すべてに何らかの影響を及ぼす場合が多い。その効果の大規模さ故に、通常は十人程度の魔術師が連携して構築するのが定番である』……らしいが、その定番は今しがた否定されたところらしい。そりゃネリンも驚くわけだな……


「つまり、この屋敷の持ち主はとんでもない結界術を構築しようとしてたわけだ。そりゃ行き詰るわけだよ」


 まあ、だからこそエイスさんの助力を求めていたと考えられなくもないのだが。キャンバリーと同等の天才と言われるくらいだから、術式さえ分かっていれば一人で結界術を構築することだって不可能ではないだろう。


「そうだな……知れば知るほど、この屋敷の持ち主についての謎は深まるばかりだ。まあそこはひとまず置いておくとして、問題なのは結界術というところだ。つまり、この結界の中にいる限り定期的なリセットの影響は避けられない」


「だから、距離を取るのが一番の対策ってこと……?」


「その認識で間違いないな。結界を出入りするのには何かしらの条件が付いていたりするのが慣例だが、今までのことを考えるとそれはないと思っていいだろう。……だから、今日はネリンの宿で過ごしてもいいか?一晩もあれば、大体のことは分かるはずだ」


「そういうことなら、あたしは別に反対しないけど……パパとママの宿なのは、何か理由はあるの?」


「単純にそこが家の次に落ち着ける場所だからな。肩ひじ張りながら資料とにらめっこするのも悪くはないが、今回ばかりはリラックスした状態で臨みたい」


「……そういうことなら、あたしの名前を出していいわよ。お部屋の優遇とかはできないけど、おまけや差し入れくらいはくれると思うから」


 ミズネの返答に、ネリンは満足そうにうなずく。家みたいな宿は一種の理想形だもんな……。宿屋にとってこれ以上の誉め言葉もそうそうないだろう。


「助かるよ。……必ず、有用な情報を持ち帰って来るからな」


「期待してるわよ。キャンバリーの言ってること、悔しいけどあたしたちにはさっぱりだし」


「勝手に俺もくくるなって……まあ、ミズネに頼らざるを得ないのは確かだけどな」


 どんな状況においても、このパーティの軸になっているのはいつもミズネだ。そこに俺たちがたまたま力を貸せることはあっても、ミズネの深く広い知識と適応力には毎度毎度感嘆するしかない。これが年季ってやつなのかね……いずれ俺にも身につくんだろうか。


「よし、そうと決まれば資料集めね!場所は初めて見つけた時の場所と同じでいい?」


「そのはずだぞ。私たちが来る前にもリセットは行われているはずだからな」


「分かった、書斎行ってくるわね!」


 ミズネがうなずくなり、ネリンは居間の扉を開けて書斎の方へと走り去っていく。気合が入っているのが、その足取りの軽さからありありとわかった。


「……それじゃ、俺もいってくるよ。模型部屋を探しに行ったらいいか?」


「そうだな、論文があると聞いているし……ああいや、やっぱりいい」


「そうか?それじゃ、あの応接室にあった書類を――」


 俺の言葉に少し考え込んだのち、ミズネは首を振ってその発言を取り消す。それじゃあどこを探索したものかと、地図とにらめっこしながら考えていると――


「ああいや、そういうことじゃなくてな。……模型部屋の探索なんだが、私と一緒にもう一度最初からやってもらっても構わないだろうか?」


 と、どこか申し訳なさそうに提案してきたのだった。

ということで、ここからは明確に解決に向けて動いていきます!調査の先に三人がどんな真相にたどり着くのか、そして安住の我が家を手に入れることはできるのか、この先もぜひ注目してください!もし気に入っていただけたらブックマーク登録、評価など気軽にしていっていただけると嬉しいです!

――では、また明日の午後六時にお会いしましょう!

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