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第百五十四話『隙間時間の進め方』

「おかえり。目当てのものは買えたか?」


 居間のドアを開けるなり、ソファーにもたれかかっていたミズネが朗らかに声をかける。目の前の机の上には、いくつかの書物が積み上げられていた。


「成果は上々ってとこね。……そっちも、何か調べ物をしてたの?」


「休みたいって言ってたのに、結局お前は働き者なのな……」


 働くというより、知識欲に勝てなかったといったところだろうか。こと魔法に関しては熱量も違うし、それの解読に熱中していたのも納得の話だ。


「少しだけだと思って始めたのだが、これがなかなかに歯ごたえのある理論でな……気が付けばかなり読み漁ってしまっていた」


 ミズネにもその自覚はあったのか、困ったように頭を掻いて見せる。乱雑に置かれた書類の中には、ミズネの私物らしきノートも連なっていた。


「買い物に付き合わないと思ったら、まさかこんなことしてたなんてね……それなら言えばよかったのに」


「この年にもなってそのようなことを言い出すのは中々勇気のいることなのだぞ?……簡単な話、恥ずかしかったんだ」


 顔を少し赤らめて、ミズネは苦笑を浮かべた。……なんというか、俺たちが想像していたよりもミズネは子供っぽいところがあるのかもしれないな。そう言うところも、これからもっと知っていけたらいいと思う。


「……そう言う二人も、中々に上機嫌じゃないか。いい品物でも買えたのか?」


 ……そう思った矢先に、ミズネから放り込まれたのはあまりにも鋭い指摘だ。……そう言うところが、とてもとても判断に困る。大人っぽかったり子供みたいだったり、なんだかんだ一番読めないのはミズネなのかもしれなかった。


「……ま、ちょっとね。掘り出し物がいろいろと見つかったのよ」


「そうだな。……ほんと、得難いものだった」


 さすがにあの一件を大っぴらにするのは恥ずかしいのか、ネリンは軽く笑いながらそう返す。気恥ずかしいのは俺も同じなので、適当にネリンの話に合わせておくことにした。


「なるほど、確かにそれは朗報だな。今日の料理に期待して置こうじゃないか」


「ええ、任せといて。とびっきりのものを作ってあげるから!」


 期待のこもったミズネの視線に、ネリンは大きく頷きを返す。今日は一人で台所に立つのも宣言済みだし、特に大きな事件が起こることもないはずだ。


「とりあえず、ここしばらくの食事問題は解決だな。……あとは、屋敷の調査をどう進めるかが問題になって来るわけだけど――」


「それに関しては昼に話した通りでいいだろう。ずっと調査ばかりでは視野も狭まるし、気も滅入ってしまうだろうしな」


 息抜きだって調査の一部さ、とミズネは軽く笑って見せる。いかにも楽観的な態度だが、ミズネの言い分が正しく思えるのもまた事実だった。


「……じゃあ、この時間はどうする?ご飯の時間までは、まだ少しだけ時間があるけど……」


 壁にかけられた時計をちらりと見ながら、ネリンは困ったように呟く。時間は日本でいうときの四時半くらい、確かに夜ご飯を食べるにはまだ早い時間に思える。


「確かにそれもそう……とはいえ、今日の調査はもう打ち切りにしたからなあ」


 別に効力があるわけでもないが、今さっき決めたばかりの方針を切り替えるのはパーティとして中々によろしくない。これが夕食のメニューの話ならば別にどれだけ揺らごうが関係がない話だが、曲がりなりにもこれは調査に関わる話しあいだからな。


「そうだな。まだ夜までには時間があり、今食事をすれば間違いなく夜に小腹がすく。夜食を求める事態になるのは、健康的に見ても望ましくはないからな」


「……じゃあ、どうする。調査はしないでも、ここで話せることって何かあったっけ……?」


 文献を漁りながら、ネリンは情報を整理しているようだ。……もっとも、専門知識だらけのノートを読み解くのには時間がかかっているようだったが。


「ネリン、なにも調査に関わる事ばかりをする必要はないのだぞ?……こんなこともあろうかと、こんなものを見つけておいたんだ」


 情報整理に苦戦するネリンの前に、ミズネがアイテムボックスからカードの束を取り出した。そのカードが入っていた箱には絵柄付きのカードが描かれていて、パッと見た感じトランプと似たような感じだ。


「書斎に置かれていた遊び道具のようでな。幸いなことに説明書がついていたから、遊び方が分からないということはなさそうだ」


 箱の中から引きずり出されたのは一枚の紙きれ。その説明書の量をみるに、どうもそんなに複雑なルールではなさそうに見える。……これなら、確かに時間つぶしにはなりそうだ。


「誰も知らない初見のゲームで、ルールは単純。……パーティの親交を深めるのには、ちょうどいいんじゃないか?」


 俺たちにそう提案して見せるミズネの目の奥で、きらりと鋭く何かが光った気がした。

ということで、調査の合間の息抜きタイムは新しい展開を迎えていきます!果たしてどんなやり取りが次回から始まっていくのか、ぜひお楽しみに!もし気に入っていただけたらブックマーク登録、評価など気軽にしていってください!

――では、また明日の午後六時にお会いしましょう!

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