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第百三十五話『増殖していく謎』

「この屋敷のカギは全部この形式なのかね……。それ、何か書かれてたりするか?」


 家に人を招くならば確かに鍵をかけられた方が安全ではあるのだろうが、それにしたって玄関と同じレベルの警備をするのは少々やりすぎな気がする。さぞや重要な部屋の鍵なのだろうが、それを使う場所が分からなければただの板切れだ。だからこそ、カードキーには何かしらの情報が刻まれていないとむしろおかしいのくらいなのだが――


「えっと、かすれてるからこれで全部かは分からないけど――『研究室』って、書いてあるわよ」


「研究室……?」


 ネリンから帰ってきた答えは、俺が想定していた以上に物々しい雰囲気を放つ言葉だった。


「研究……この街を建設するにあたって、新たにやらなければいけないことがあったのだろうか」


「……まあ、それなら一応説明はつくわね。……逆に、そうじゃなかったら説明がつかないんだけど」


 戸惑っているのは二人も同じなのか、突如現れたその単語に揃って首をひねっていた。


 名士の別邸とは言えども、研究室が備え付けられているのはいくら何でも不自然というものだろう。当然、俺たちが求めている答えに続いている可能性だってある。叶うなら今すぐにでも、その研究室とやらを探し出したいところなのだが――


「なんにせよ、どこに何があるか分からねえってのがなあ……」


「本当にそれが厄介よね……。見取り図が手に入る前に鍵が増えても戸惑うだけよ」


 ぼそっとこぼした呟きに、ネリンがため息をつきながら同調する。何度も言うが、カードキーなんて使える場所が見つかるまではただの板切れでしかない。だから何とかしてこの屋敷の情報を集めたかったわけなのだが、どういう訳かこの部屋に来る前より謎が増えている気さえする始末だ。


「流石百五十年……一筋縄ではいかないということだな」


「あたしたち、四百年以上前の遺跡の真相を解き明かしたパーティなのにね……」


 顎に手を当ててうなるミズネに、疲れたようにうなだれるネリンから鋭い返しが飛んでくる。……そう言えばここ、歴史だけ見ればあの遺跡の半分もないのか……。あれと比較するのは中々におかしな気もするけど、年数だけ言えばこっちのが新しいのは事実だ。


「まさか見取り図だけなくなりました―なんてこともないだろうし、本当にここにはこれしかないんだろうな……」


「だろうな。……想像以上に、この屋敷には多くの秘密が残されているらしい。とりあえず、これはいつでも見られるところに移動させておくとしよう」


 ため息をつきながらミズネが書類をまとめ、元通りに直してアイテムボックスへとしまう。これ自体が手掛かりになる事はなさそうだが、それでも回収しておいて損はなさそうだからな。


「カードキーはネリンが持っていてくれ。急に必要になる場面が来るかもしれないからな」


「分かったわ。……それで、次はどうするの?」


「このまま調査……と言いたいところだが、かなりこの部屋に時間を取られてしまったからな。とりあえずは食事をとるとしようじゃないか」


「そうしてくれると俺も助かるよ。途中あたりからかなり腹減ってたんだ」


 ミズネの考えにネリンが少ししょぼくれた表情を見せていたので、すかさず俺もミズネの意見を後押しする。それが効いたのか、ネリンは渋々と言った感じで頷くと、


「……ま、屋敷も謎も逃げるわけじゃないしね……」


 と、自分に言い聞かせるようにつぶやいた。その様子を見るに、本音はこのままずっと探検していたくて仕方ないんだろうな……。


「そうだぞネリン。新しい謎も見えてきたことだし、とりあえず飯でも食いながらもっかい書類読み込んでみようぜ」


「……それもそうね。このペースで新しい情報が出てこられちゃパンクしちゃうし」


 くすっと笑って見せるネリンに、俺はぶんぶんと首を縦に振って見せる。ただでさえ新情報祭りで頭がごちゃごちゃしてるってのに、今書斎なんて行こうものならもう脳内が大惨事になること請け合いだ。


「今までに得た情報を改めて吟味することで見えてくることもあるだろうからな。ひとまず、居間に戻るとしよう」


「そうだな。糖分補給もしながらのんびり推理の時間と行こうぜ」


「あ、それいいかも。……まあ、またミズネが探偵役になりそうだけどね」


 そんなことを言いながら、ミズネが先頭になって俺たちは応接室を後にする。エントランスの一階と二階は吹き抜けになっていて、応接室の出口からは豪奢なエントランスを見下ろすことができた。


「こう見ると、また違って見えるもんなんだな……」


「近くで見るよりなおさら高級に見えるわよね。装飾が全部きれいに保たれてるのも原因でしょうけど」


 シャンデリアの光を受けた装飾は、その暖色系の光を反射してきらきらと輝いている。これが俺たちの家の一部になるかもしれないと思うと何となく気が引けるが、それを考えるのは気が早いというものだろう。


 そういう先のことは事が解決してから考えればいいと俺が自分に言い聞かせた、その時だった。


「…………ねえ、二人とも。何か変な音、聞こえない?」


 表情をこわばらせたネリンが、恐る恐る俺たちにそんな問いかけを投げかけてきたのは。

屋敷探索はまだまだ始まったばかりです!増えていく謎に三人はどう立ち向かっていくのか、そしてネリンの予想通りまたしても探偵役はミズネなのかなどなど、いろいろなところに注目していただけると嬉しいです!

――では、また明日の午後六時にお会いしましょう!

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