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第百四話『異世界寝起きドッキリ』

――その夜は、夢も見ない熟睡っぷりだった。久々にふかふかのベッドで寝れたということもあってか、疲れが全て溶けだしてしまったような感じだ。疲れの蓄積具合は似通ったものなのか、ネリンとミズネも三十分くらいしたらそれぞれの部屋へ目をこすりながら帰っていった。そこからベッドに飛び込んで、俺はそのまま意識を失ったって寸法だ。


「……ん、今何時だ……?」


 軽く伸びをしてから、俺は壁に賭けられている時計を見やる。当然ながらつくりは違うが、その辺の読み方は図鑑で学習済みだ。その知識を引っ張り出して確認すると、どうやら今は正午になる少し前の様だ。結構な時間、俺は一度も目覚めることなく寝ていたらしい。


「……今夜も、きっと眠れないだろうからな……」


 クエストが夜から始まることを考えると、このくらい寝ていた方がむしろいいのかもしれない。ミズネも起きてこないあたり、ここまで寝ることがヤバい事というわけではなさそうだ。そう言う時間関係に一番鋭いのはミズネで間違いないだろうからな。


 とりあえず、カップにジュースを注いでそれを一息に飲み干す。……うん、目が覚めた。やっぱり目覚めてからの水分って大事なんだな……


「……さて、どうしたもんかな」


 このまま図鑑を読みながら二人が起きてくるのを待ってもいいが、クエストに向かう前にいろいろとやっておきたいことがあるのも事実。二人を起こすべきかそうでないのか、俺はそこそこ迷っていた。


 ネリンはぱっと見寝起きよさそうだったし、ミズネもそんなに朝弱い感じはしないんだよな。なら二人が起きてくるまでに、先に準備を済ませてしまっても……


 とか、いろいろなことを考えていると。


「……ヒロト、もう起きているか?」


 そんな呼びかけとともに、俺の部屋のドアが控えめにノックされた。ネリンじゃなくてミズネが尋ねてくるパターンはそう言えば初めてだな……


「ああ、起きてるぞ」


 そう答えながら、俺はドアを開ける。この宿は魔力錠なるものが採用されていて、原理はよくわからないがオートロックのような形式になっているのだ。図鑑を見るに誰が考え出した物かははっきりとしないようだが、この技術には本当に驚かされた。


「突然すまないな。……起きたばかりだったか?」


「んや、そんなことは。そろそろ起きないといけない時間帯だろうしな」


「そうだな……だが、ネリンはどうやらかなり疲れがたまっていたらしい」


「……そう言うってことは、まだ起きてこねえんだな?」


 俺がそう聞くと、ミズネはこっくりと頷く。その表情は、しょうがない妹を見る姉の様だった。


「ネリンには悪いが、このまま起こさないわけにはいかない。一応、武器の出来も確認しないといけないからな」


 やはり少し気が引けるのか、少しうつむきながらミズネはそう告げる。その罪悪感をどうにかできないものかと、俺は少し考えて――


「そうだな……。じゃあ、寝起きドッキリでもしてみるか?」


「寝起きドッキリ……?」


「ああ、俺の国に伝わる文化でな。親しい人が寝ているところを突然起こして、びっくりするところを見ようってわけだ」


「……それは、怒られやしないか……?」


「……まあ、その時はスイーツかなんかでもおごればいいさ」


 心配そうにするミズネを強引に説得して、俺たちはネリンの部屋の前へと進んでいく。パーティで財布を共有している以上おごりも何もない事に俺は途中で気が付いたが、ここまで来てしまえばもう乗り掛かった舟だ。


「……さて、ネリンの部屋の前にやってまいりました」


「……それは、誰に向かって言っているんだ……?」


「様式美、ってやつだよ」


 小声でささやく俺に、ミズネは不思議そうな顔をする。しかしどうにか押し切って、俺はドアの前に立った。


「……幸いなことに、ほかにチェックインしてるお客さんはこの階にいない。だから、全力で起こすんだ。それはもう、ネリンが跳ね起きるくらいの全力で」


「……何かあったら、ヒロトの責任にするからな?」


 俺の指示に、ミズネはそんなことを言いながら同意を示した。そして、俺の横にすっと並び立つ。……決行まで、あともう少しだ。


「よし、俺のカウントに合わせてくれよ。俺が三つ数えたら、ドアをガンガン叩きながら全力で叫んでくれ。俺も同じことをする」


「わ、分かった。全力でいいんだな?」


「そりゃもちろん」


 サムズアップしながらそう答えて、俺はもう一度ドアに向き直る。そして、大きく息を吸い込むと――


「いくぞ、三、二、一……」


「「起きろーーーーーーーーッ‼」」


 ガンガンガンガンガン‼と、俺たちがドアを叩く音がフロア中に響き渡る。そして、しばらくすると――


「なになになに⁉何が起きたの⁉」


――そう言いながら、寝ぐせで髪をぼさぼさにしたネリンが飛び出してきた。

クエストの前のゆるゆる回、あともう少し続きます。寝起きドッキリの行方は、そしてヒロトは無事でいられるのか!次回を楽しみにお待ちいただけると嬉しいです!

ここからは告知になるのですが、今日の七時に新連載の投稿が開始されます!ゆるっとした異世界チートものを計画していますので、良ければそちらもご覧いただけると嬉しいです!

――では、また明日の午後六時にお会いしましょう!


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