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俺もそろそろ時間かなと会場に向かうために歩を早めるが、ある者に目が行った。
多くの人々に紛れて、1人泣きそうになりながら転びかけている子がいた。
さっと子供が転ばない様に手で支えてあげる。
「よっと!」
「あぁ!?……あれ?」
きょとんと女の子は目をパチクリとさせる。
俺は女の子と同じ目線になるようにしゃがみ
「こんにちは可愛いお嬢ちゃん。」
女の子は少し驚いていたが、落ち着き始めると次第に雲行きが怪しくなり、泣きそうになってしまう。
「う…うぐっ…」
恐らく迷子なのだろう。会場はかなりの人混みだ。
(両親を探すのは難しいそうだ。だけど放って置くわけにも…)
なんて考えている間にも女の子の顔はどんどん曇っていく。
泣かれても困るので、女の子の顔の前でぱぁっと花を咲かせる。
「っ!!」
びっくりしてしまったが、女の子は少しずつ顔をキラキラさせて
「き…きれい!!凄いねおじちゃん!!」
(おじちゃんか…まぁ顔を隠しているしな…)
「綺麗だろ?ミムラスっていう花だよ。」
「みむらす?」
聞いたことがないのか、たどたどしくなっている。出した花を女の子の髪に付けてあげる
「そうミムラスだよ。君には笑っている顔の方が似合うと思ってね。……ところで少しは落ち着いたかな?」
花で気を取って、少しでも気を紛らわすことに成功したので、改めて確認する。
「はぁっ!!そうだった!あのね、あのね。ニーチャはママとパパといっしょにいたのに2人がまいごになっちゃったの!」
やれやれだよね~と手をフリフリとする女の子
自分が迷子であると認めない辺り子供だと思いながら
「そうだったんだね…ママとパパは何処に行くとかお話してなかった?」
さりげなく、両親の行き先を確認すると
「う~ん。たしかママのおともだちの所に行くって言っていたよ。おいしいおにくを売っているの!!」
どうやら、友達の屋台に顔を出すつもりだった様だ。
「よし!じゃあお兄さんもお肉が食べたくなっちゃった。案内してくれるかな?」
ニーチャはニカッと笑うと
「いいよ!!しかたないな~ニーチャにまかせて!こっちだよ!」
といって走り出してしまいそうだったので
「あっ!まってニーチャ。お兄さんが迷子にならない様に、肩車で案内してくれないか?」
「いいよ!も~おじちゃんはしんぱいしょうだね!」
えへへと笑うニーチャを肩車して、俺たちはおにくの屋台に向かう。
「あっ!みてみておじちゃん!ママとパパだ!」
俺の頭の上で少し先にある屋台を指差すニーチャ。
娘の声だったからだろう。遠くからでも聞こえたのか、声のした方を向いて俺たちを見つけた両親は走り出して、俺の所まで来る。
「「ニーチャ!!」」
我が子の身を案じた様子でやってきた夫婦に対し
「も~ママとパパったら~ダメでしょまいごになっちゃったら。おじちゃんがママとパパを見つけてくれたんだよ」
やはり自分が迷子になった事を認めないニーチャを尻目に夫婦は俺を見る。
一瞬仮面で顔を隠している事に驚いていたが、それでも娘をここまで送り届けてくれた人という判断が下されて礼を述べられる。
ニーチャを降ろし事の顛末を話終えて
「では、俺は大会に向かいますので。」
そろそろ時間になりそうなので急がないといけなさそうだ。
「あの…満足なお礼もできずに申し訳ありません。」
改めて深く頭を下げる父親に
「見返りを求めるためにしたのではありませんよ。ただニーチャが泣きそうだったので、笑顔になって貰いたかっただけです。」
「楽しかったよ。おじちゃん!」
俺の足にしがみついて笑顔になるニーチャ
「おじちゃんじゃないよ…俺はソウカだよ」
「そうか?」
やはり言い慣れていない感じが拭えない。
俺とニーチャのやりとりを見てやはり申し訳なさそうに
「…ですが、何も返せないのは…」
どうしても何かをしたい夫婦に対し、
「……わかりました。では2人にお願いが」
「「はい。なんでしょう?」」
「ニーチャとはぐれた罰です。今日は3人でちゃんと手をつないで歩いてください。それと、Fブロックで俺が闘います。……声援をかけてくれる人がいなかったので応援してくれるとうれしいです。」
夫婦は目を見開いた後、クスッと笑い
「「必ず応援しましょう」」
「ニーチャもするよ!!ガンバレ-ガンバレ-って!!」
「ありがとう。では」
ニーチャ家族に別れを告げて、少し小走りで試合会場に向かう。
ミムラス「笑顔を見せて」
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