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花亡き世界で~唯一の花属性で、裏切って廃棄した家族だった奴らにたむけを贈る  作者: アロ紙
火の英雄編

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2-1

少しずつあげていきます

新章開始です

ソウカがリオを殺した時より1年ほど遡る。


「はぁ…はぁ…はぁ……走れるか!?」


「…はぁ…だ…大丈夫…よ」


丑三つ時の時間に森を駆ける2つの人影とそれを追う2つの人影が揺らめく。






「くっ!氷陣っ!」


2つの人影を足止めするかの様に氷が追跡者へと襲いかかる。


「……雷走」


「…飛翔付与」


雷撃が走り地を這う氷を砕く。片方はふわりと宙を舞う。


追跡者は抑揚のない声で氷を避けるために己が属性を発動させる。






「………ごめん…ねっ!」


逃げる1人が追跡者が避けた先を見越して周囲をなぎ倒すほどの激しい風の槍を飛ばす。






「…雷壁」


またも追跡者は想定していたかの様に対応する。しかし、風を弾いたことで生じた隙を見て逃亡者は距離を開けるために走っていく


「……望遠付与」


追跡者の1人が隣にいる者に付与を施す。施された者は短剣を掲げると


「……雷丑」


短剣から繰り出された雷の角は遠くに逃げていく逃亡者に向けて狙いが逸れることなく向かって行く。






逃亡者達も気がついたが、タイミングが遅かったのか


「…うっ!」


「!!!??」


逃亡者の1人の左脇腹を抉る様に角は体を貫通する。貫かれた方は倒れ込みそうになるが、相方がすんでの所で抱きかかえると


「…捕まっていろ!」


見捨てることなくおぶるようにして相方を担いで走って行く。








「くそっ!体格に見合ってない短剣のくせに重たっ「……雷丑」っつぅ!?」


再び聞こえてきた声に






「…ちっ!氷鏡壁っ!」


下から氷の壁が現われると、雷の角とぶつかり、角を反射させるように弾く。しかし、咄嗟の発動だったためか、追跡者には向かわず明後日の方向へ逸れていく。






「…付与…『爆散』」


そう聞こえると同時に氷の壁がはじけるように崩壊する。


「…雷丑」


はじけた瞬間を見逃さず、隙間を縫う様に雷を飛ばす。だが、爆散した先には逃亡者の影はなかった。






追跡者は爆散した氷の所までたどり着くと、


「……崖…」


「………落ちたか」


「…追跡を……『帰還しろ』」


「「…御意」」


誰かからの連絡を受け、二つの影は去って行った。


























「…………行ったか…?」


息も絶え絶えに声を絞り出す彼は崖から飛び降り、滝壺に落ちた瞬間に水底に潜む。






彼は水底にたどり着く前に、ドーム状に氷を作り出し、空気を確保しながら水面を伺い続ける。






「はぁ…はぁ…はぁ…………」


逃亡者は走る息を整えながら、水の底から這い上がる。そしておぶったままの彼女を下ろすとすぐさまポーションを取り出す。取り出したポーションはそこら辺の冒険者が手にすることが出来ない位の高品質なものだったが、躊躇う事なく患部に振りかける。


「うぅっ!?」


「大丈夫かぁ!!」


傷口は塞がろうとするが、何故かそれを遮る様に傷口が開き始める。






「何でだ!?…くそっ!……そうか!『反転』の付与か!くっ…」


すぐさま手持ちから付与に対するアイテムを探し出そうとすると、弱々しくて少し冷たくなった手がアイテムを探し出す手と重なる






「もう…いいy「まだだ!!」


弱々しい手を握り返し、彼女に呼びかける






「まだだ!!助かるんだ!いや…助ける!助けてみせる!!…そうだ!彼女に頼もう!『時』を止めてもらう!そしたらその間に!」


「ううん…もう…いい……よ。」


「ダメだ!!諦めない!…僕が………僕が君を諦めるわけないだろ!」


彼女のぬくもりを逃さない様に強く、痛みを与えてしまうほど強く握る。しかし、彼女はいたがる素振りをせず、空いている手で彼の頬を撫でる。


「……………」






「僕は!君にまだ伝えていない!伝えられ続けてきた僕はまだ何も返せていない!!これからだ!これから僕は君に…君に伝えるんだ!だから……だから…!」


「ううん…もう…もらっ……たよ。ねぇ………」


そこからたどたどしく彼女は彼に告げる。






「ねぇ…覚えてる?あの日の事……私…魔物に…」


「あぁ…覚えているよ。君との思い出だ。忘れるはずがない…」


「ふ…ふっ。かっこ…よかった…よ?少しだ…け足震えていたけど。」


「あぁ…君の前だ。格好つけたくて頑張ったよ…」


「そこから…かな?少しずつ…少しずつ……惹かれていったよ?…それからも……君とはいつも一緒……たくさん…旅をした………そして…私は…私達は…失敗した。」


悔しそうに唇を噛み締めて彼女は告げる。


「どうしてかな…正しかったのかな?私達のしでかしたことは…。あんなに楽しかったのに……あの日から…少しずつ変わっちゃった…でもね…君は変わらない。」


こぼれ落ちる涙をとめることが出来ず、ただただ流れていく。






彼が強く握っている手を彼女も強く握り返しながら


「いつも…臆病で…それでも意地っ張りで、強がりで…私の前だと…いつも頑張っちゃってたよね………けどね。そんな…そんな君が……君のことが…












……大好きだったよ。」


強く握られた手に彼女から溢れる涙が垂れる








「あの日家族を守れなかった…。あの日家族を見捨てた…。そんな中でも…君は…いつも隣にいてくれたんだ…。だから……だからね…私はたくさん君にもらったんだ。」


「ダメだ!!そんな…そんな……別れの言葉は言わないでくれ!僕はまだ返していない!弱虫で臆病な僕は、まだ何も…君に…君に何も伝えられていないじゃないか!!!」






追手がいるかもしれない。


森の中で大声をだして魔物を呼んでしまうかもしれない。


そんな中でも2人は思いを止める事はない。






「あぁ…私は幸せだった…。」


「まだだ…これからだ。2人で出来なかった事をしよう。人のために、誰かのために戦い続けた日々を取り返すように…2人でどこまでも行こう。…そうだ!この森を抜ければ面白い街があるらしい。そこで美味しい食べ物を食べよう。いっぱい食べて、いっぱい飲もう。実はお酒は強く無いけど、君となら飲める。たくさん笑って、これまで出来なかった事を2人で…2人で一緒に行こう!」






「…魅力的だな…。」


「そうだろう!だけど……だけどね。君じゃなきゃダメだ。君とじゃないとダメなんだ!」


「……けどね。もう難しいかな」


刻一刻と命の灯火が小さくなっているであろうにも関わらず彼女はあどけなく笑う。








「…あ~あ。とても楽しそうだね……。もっと君と…一緒に居たいよ」


力を振り絞るように彼女は震える手で弱まっていく体で彼に強く縋る。


「嫌だよ…嫌だよぉ……なんで私達だったの?選ばれたのが何で私達だったの!もっと生きたいよ!私は戦いたくなかった!どうして?どうして私達は家族を失わなきゃならなかったの?ねぇ…ねぇ…ヴァーくん…」


彼女は堰が切れたかのように涙を流す。






「………死にたくないよ…」


太陽のように笑う彼女には似つかわしくない言葉。そんな彼女の姿を見て


「死なせない…死なせるものか!」


彼は彼女を抱きかかえながら








お互いに涙を流しながらすすり泣く声が森に響く。




















気がついたらすすり泣く声が一つ途絶えていた








そして彼は決断する。






誰かに後ろ指を指されるかもしれない。愚行だと批難されるかもしれない。


それでも、小さな希望に、かすかな希望に、彼は縋る。


ただ1人の大切な人を助けるために










「………零K」


つぶやきと共に、彼の足元からパキッパキッと音を立てて凍り始める。氷はたちまり周囲を巻き込みながら拡がっていく。彼は白い息を吐きながら、抱きしめた彼女が少しずつ凍り始めていくのを見届ける。


元々も白い肌だった彼女だったが、より白く儚さが増していく。


彼女の腕が足が体が氷付いて行くにつれて、彼の心も凍り付いて行く音がする。






「ごめんよ………サリア…」


伝えたかった言葉とは違う言葉を返事をすることがなくなった彼女を見つめながら呟く。








「憶えていろよ……」


凍ってしまった心の片隅に凍らすこともできない黒い灯火を胸に宿して彼は1人森へと消えていく。









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