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花亡き世界で~唯一の花属性で、裏切って廃棄した家族だった奴らにたむけを贈る  作者: アロ紙
火の英雄編

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閲覧ありがとうございます。

とある剣を開放するためにと咲いた青い薔薇が咲き誇る。

家族に落とされた時縋る様に咲かせた花と同じ花だ。

「奇跡…か。あの時とは違うけどな…」

自嘲気味に笑い、剣の柄に咲いた花を見る。自然界に咲く色とは思えない鮮やかな青。薔薇は堂々と単調な剣を彩る様に咲いている。

『あっはっはっはっ!!堅物のお前さんにはお似合いの花だな!!』

師の1人が青い薔薇が咲いた時にそう笑った。



「確かにお似合いだな…」

「はっ!!たかがそんなお粗末な剣で、俺のイフリートに勝とうって言うのか!!調子に乗ってんじゃねぇぞ!!」

少しだけ過去の事を思い出しているソウカに対し、横槍を入れる様にリオが大剣を振るう。

技術も無いただただ破壊という感情に委ねた大振りな剣を振るう。

(相変わらず技術を磨いていないのか…。)



英雄と呼ばれたリオの剣を見て、所詮は魔物に振るう剣なのだと痛感する。

しかしソウカは、リオの剣に応えるように大剣を受け止める。

ソウカの剣はイフリートの熱に屈することなく、白銀の輝きを失わない。

「はっ!なまくらじゃねぇってか!?…だが!」

リオは剣で地を削りながら逆風の斬りを繰り出す。しかし、焦ることなく受け止められてしまう。

「…っち!」

受け止められたリオは舌打ちしながらも、袈裟・薙ぎ・切り上げと様々な角度から攻撃を繰り出す。他の人が見れば、リオが剣を振るう度に炎を吹き荒らしながら、ソウカを追い詰めている様に感じられる。



しかし、ソウカからしてみれば酷く単調な攻撃と思わざるを得ない。魔物を、魔王を屠るために磨かれた技術。知能を、技術を極めた者には通用しない。ガストルには通用するだろうが、生憎ソウカには通用しない型に収まった剣だ。



ソウカはリオの攻撃に対し、時には最低限の動きで躱し、時には剣で軌道を逸らして躱し続ける。

「………はぁ…はっ!」

絶えず剣を振るい続ける事で少しずつ息を荒げ始めるリオは一旦ソウカと距離を取ると

「くそがっ!無能な属性の分際で………。噛み砕けっ!炎獅子!!」

炎剣を地に差し込んだ瞬間、炎で象られた獅子が生み出される。獅子は意思を持った様に、ソウカに迫り、首根っこを噛み切ろうと襲いかかるが

「…………カーネーション」

黄色のカーネーションが咲くと、獅子とソウカの間に壁が出来たかの様に獅子は近づく事が出来なくなる。ソウカに近づく事が出来なくなった獅子に対しソウカが手を向けて

「ギボウシ」

獅子の体の所々から芽吹き、白や紫の花が咲き乱れる。獅子は花が活性化され咲くのとは反対に覇気を無くし、最終的には炎ごと獅子が消え去る。



「はっ!…俺を無視してんじゃねぇ!!」

獅子が消えた背後から、炎を纏うリオが大剣を突き刺す形で突進してくる。

「…………」

ソウカは一瞥すると、リオの大剣の軌道を逸らすように大剣の腹を押さえる。逸らされた事でバランスを崩し、リオの顔がソウカの足元に近づく。

「くっ!?…あぁ?」

追撃されると思ったリオであったが、衝撃が来ることもなく。不振に思うリオに対し、ソウカは剣を下ろして、リオを見下す様に見下ろしていた。その目はまるで道端にある石ころを見ている様な見ている者に対しなんの感情を抱いていないような目だった、

しかし、ソウカは特にリオを見ている訳ではなかった。





『ソウカァ!!調子はどうだ!?あぁ?』

『どうもこうもない。また、心臓を突くような一撃浴びせやがって…あんたが霊体だったからいいものの…』

左の胸の辺りをさすりながらソウカはぼやく。豪快に笑う彼は別の師が製造した酒を片手にどさっと音を立てるようにソウカの隣に座り込む。

『…ったりめぇだ!俺が教えてんのは活人剣じゃね。』

『活人剣?』

『人を活かす剣が活人剣。斬る側も斬られる側も互いを活かし合うために作られた剣。………俺からしてみれば、あんなのガキのままごとだ。勝手に乳繰り合ってろってんだ。』

『ままごと…って』

『ままごともままごとよ。己が振るう剣に重さがねぇ。思いも想いも念いも込められてねぇんだ。剣は…武器は命を奪うために産まれた。己が正義、己の正しさを突き止めるため他者を封じ込めるためにな。』

『命を奪う…』

『・・・お前は復讐するんだろ?』

『あぁ…俺には復讐しか残ってない。』

そういうと、少しだけ悲しそうに笑い。



『だったら、俺が教える剣。殺人剣は相応しいな。…人を殺める剣と書いて殺人剣。相対する者を殺める。命を奪い己の正義を主張するための剣。』

彼は腰に付けている刀と呼ばれる片刃の剣を抜き、虚空を斬る。

『…なぁソウカ?剣を振るう事に、命を奪う事に…、感情を持つな。』

『……感情を持つな?俺に復讐を止めろって言ってんのか?ここまで教えてくれて?』

『はっ!そうじゃね。お前が復讐をする事を止める事はしねぇ。……俺が言いてぇのは命を奪う事に喜びや悲しみ、楽しみや哀れみといった感情を持つなって事だ。』

『喜びや悲しみ…』

『陽の感情なんて持ってみろ。俺…俺たちがどんな手を使ってまでもお前を止めてやる。陰の感情なんて感じるなら、命を奪う事…それこそ復讐なんて止めちまいな』

『………………』

このときソウカは何も応えられなかった。






「…感情を抱くな…か…。これは難しいな。」

リオを見つけて、復讐という憎悪の感情が膨れ上がった。ソウカは必死に漏れ出さない様にいたが、リオと相対したことでソウカを落としてまで手に入れた力が、この程度だったのかと感じた。この程度の力に切り捨てられたという悲しみ。この程度でいい気になった元家族を見た哀れみ。

「…一応、楽しいとか嬉しいってのは湧きません。化けて出てこないでくださいよ。」

薄く笑い、師へと伝える。





「………ははっ!はっはっはっ!!ふざけんなよ…俺をバカにしやがって!俺を見下しやがって!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるな!!ふざけるなぁぁあぁぁぁぁあ!!!!」

本来溶ける事のないであろう闘技場の床がドロドロ溶けるほどの炎がリオからあふれ出す。

兜は外れ、怨嗟が宿った目でソウカを睨みながら

「てめぇが…てめぇの様な無能が…俺を見下しやがって…。無能が!花なんて意味のねぇ属性が!俺たち家族を壊したてめぇが!義母さんが死ぬきっかけになったてめぇが!」

「…………」

ソウカはそんなリオに対し、師に言われたことを思い返しながら見つめる。



恨み 辛みを孕み、憎悪 嫌悪を露わにし、感情をむき出しにして炎を燃やすリオは

「…とても醜いな…。お前にはもう哀れみも悲しみも湧かない…」

あの頃のリオはいない。





「お前が英雄を!人類の救済者を!俺を!リオ・パドラックスを見下すな!!フラウ!フラウ・パドラックス!!!」

大剣は炎剣という名にふさわしい程、刀身が紅く光る。フラウを塵一つ残させないという程の迫力でリオは炎を推進力にして、今日一番の速さでソウカに逼迫する。

「があぁあぁ!!!」

「……」



『ところでどうして師の技術はなんと言ったらいいのか…一撃の技が多いんだ?』

『あぁ?そりゃ、命を奪うのには一撃で十分だからさ!何回も斬る必要はねぇ。相手を見極め、隙を生み出し、確実に殺せる!って時だけその一撃を振るえばいい。無駄打ちなんてすんなバーカ』




迫り来る炎の軌道を読みながら、確実に攻撃を避ける。

「はっ!逃げ回るだけが無能の特権かぁ!?反撃もできねぇってか!?」

「…………」



『心乱すな!乱れは命の駆け引きの場では不要!そんな事をすれば見えてくるはずの隙も見えなくなっちまう。』



迫り来る炎を躱し、時にギボウシの花を咲かせ、炎を打ち消す。

「なんか言ったらどうだ!久々の再会だろ!?かわいらしい俺様がお前に声をかけてやってるんだぞ?」

「…………」



『殺し合いだ。会話なんて必要ない。殺すか殺されるかだけだ』




「なんか言えよ!フラウ!!」

攻撃が当たらないソウカに痺れを切らしたのかどんどん大振りで技術もない大雑把な攻撃を繰り返すリオ。




「……もういいか。…………イカリソウ」

躱し続けていたソウカだったが、突如薄い紫の花をリオの足元に咲かせる。








リオは所詮花だと過信していた。花の一株ごときでリオを、火の英雄を、兜で己を隠し、誰よりも前に出ることを嫌った彼女だったが、誰よりも前線に立ちその炎で多くの魔物達を屠った。

そんな、誰にも止めることが出来ない彼女がたかが花で止められること等あり得ないと慢心した。




「…イカリソウ。花言葉は「君を離さない」だ」



「ぐっ!?」

驚きと共にリオは止められた。足元に咲いた花で彼女の足は床に縫い付けられたかのようになってしまった。

しかし、彼女とて伊達に英雄を名乗っていない。即座に炎で花を焼き切り体勢を整え直そうとする。

だが、その一瞬。熟練者同士の戦いで致命的となってしまう隙が生じる。



「『お前はハジメよりソウジの技がしっくりきそうだ。』か…」

無様に隙をみせたリオを復讐者であるソウカが黙っている訳がない。長剣を地面と平行に構え神経を研ぎ澄ませるソウカの姿をリオは目に焼き付ける。

「…シンセングミの前身であるミブロウシの頭取。仲間に殺され生涯を綴じた師…。セリザワカモに学んだ必殺の技。





…壬生狼!」

剣が空を切る音が一つ鳴る。そして剣はリオの心臓を貫く様に深く刻み込まれる。リオの心臓に一つの穴が空いた様にも思えたが、気がつくともう2カ所、計3カ所も心臓が貫かれていた。

ソウカは一瞬の間に、一撃と判断される間に三撃打ち込んでいたのだ。



「うぐぁあ!」

気がついたら貫かれていたという衝撃と、体中を駆けめげる痛みに顔を歪めるリオだったが、燃えさかる負の感情は凄まじく。貫かれてもなお、一歩一歩とソウカに歩みを進める。

片手では胸を押さえ、もう片方で剣を引きずりながらも近づく。

最初は地を溶かす程の炎だった剣も少しずつ勢いが衰えていく。そのたびリオの歩みが遅くなる。…まるでリオの命の灯火の残りを示すかの様だ。



「はぁ…はぁ……まだだ。俺が…無能に…、花…如きに………負ける…わけ」

「…………」

無言でリオを見定めるソウカだったが、ふとリオと自分の周りに再度花を咲かせる。

白や紫の花が再び闘技場を埋め尽くす様に咲き誇り、リオの周りだけ黄色の花が咲き誇る。

「…はっ!」

湧き上がる血を吐きながら、リオは笑う。

「また訳の…わからねぇ事を!」

そうしてリオはソウカの目の前にたどり着く。



火の英雄と称えられた女性は、鎧の所々が崩れ、これまで隠しきっていた兜は外れている。

象徴であった大剣は今やお荷物なのかと思えてきてしまう程、持っているのが重いのか引きずっている。

胸を押さえていた方の手を伸ばし、ソウカの胸ぐらを掴む。

「花なんか咲かせてなんの意味がある!!」

「……お前が気に入っていた花じゃないか」







『…ね…ねぇフ…フラウ。』

物陰に隠れながら過去のリオは話しかける。兜がなく顔を隠すことが出来ない彼女は髪の毛を駆使して人の、自分の目線を隠している。

『ん?なんだリオか。…今は属性の練習さ。』

手元にある図鑑を見ながら、色々な花を咲かせているソウカだった。リオは恐る恐るという様に、ソウカに近づくと

『わぁ…綺麗…』

髪で見えないのだが、それでも目が輝いているのだろうと感じる。

『咲かせすぎた。好きなのがあれば持って行ってくれていいよ』

『ホントっ!?……あっ!ほ…本当にいいの?』

思ったよりも大きな声が出てしまったのだろうか、少しバツの悪そうな顔をして、再びおどおどした表情に戻る。

『あぁもちろん。いろんな種類と色がある。何でもいい』

そう応えるのを話半分に聞いていたリオは早速花を吟味しだす。

キャンサーやサジタリアスと違い、控えめな性格だったリオも何だかんだこういうのは好きなのかと思いながら吟味しているリオをみる。



『こ…これにする。』

少ししてから、リオが手に取った花は





『黄色のユリ似合っているじゃないか』

「黄色のユリ花言葉は偽りだ」

「っ!?」

かつては知らなかった花言葉という情報を8年越しに伝える。

驚きのあまり、掴む手を緩めてしまった事で、ソウカはリオの拘束を抜け出し、一歩下がる。

下がった瞬間、実はソウカを支えにしていなければならない程、限界だったリオは後ろに倒れ込んでしまう。



「リオ・パドラックス。お前の最後にふさわしい花は、ユリだ。」

「……………」

ソウカはリオがかつて気に入ったといって笑ってもらっていった花を改めてリオに贈る。

リオは大剣を落とし、花を受け取ると

「ははっ!………………地獄で待ってるぜ。姉弟」




ソウカはリオが落とした大剣を拾い

「…俺に姉弟なんていねぇ。じゃあな英雄」

深々と大剣をリオに突き刺したのだった。




カーネーション(黄):拒絶

イカリソウ:(旅立ち)+君を離さない


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