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リオがかざした剣から荒々しい炎が吹き荒れるが、炎は剣に吸い込まれる様に、纏うように炎が剣へと宿る。炎は剣の腹に模様を描く。獅子の様な迫力を持った模様が描かれる。
「それが…俺を落としてまで手に入れたものか?」
近づくだけで焦がれそうな程の炎を吹き荒らす剣をまじまじと見つめソウカが寂しそうに見つめる。
そんなソウカの事などしったことではないリオは再び笑いながら
「あぁそうだ!!てめぇみたいな無能の対価で俺たちは授かった。各々の精霊からなぁ!!」
炎剣イフリート…それは英雄の象徴だ。英雄…パドラックス一族は己が属性に呼応した武器を身につけていた。リオの様に目の前の敵を焼き払うための大剣や、キャプリコーンの様に深淵に堕とす様な深い闇を纏う槍などだ。
リオが授かったのは燃ゆる様な紅を基調とした大剣。一振りで目の前の敵を屠り、二振りすれば、周囲を火の海に、三振りもすれば、街一つを灰にすると言われる火の化身を宿した剣だ。リオは炎剣イフリートを抜くと同時に体全体から炎を吹き出す。炎は周囲の壁や咲いた花を焼き溶かしていく。
「…生きていたことを、俺の前に現われた事を後悔させてやる!」
先程より速い速度でソウカに詰めよる。流石のソウカも振るわれる大剣を防ぐために茨を纏った棒で受け止める。
「ふっ!」
「ははっ!これも止めるかぁ!…だがな、炎剣イフリートを舐めるなぁ!」
受け止めた炎剣イフリートからソウカに纏わり付くように炎がソウカを襲う。炎から逃れる様に後ろに飛ぶがリオは追従する様に大剣を振るう
「逃がすかぁ!炎蛇ぁ!」
数匹の蛇を象った炎がソウカを追うが、ソウカは焦ることなく対処していく。茨の棒で蛇の頭を的確に潰していく。
「あぁ~良いね…良いねぇ!!予想以上じゃねぇか!弱ぇ花如きが俺に抗うとはなぁ!ずっと…ずっと気になっていたんだ。あのとき、お前を落とした時…」
再び大きな炎を吹き出しリオは笑う
「どうして刺さなかったのかと!!犠牲にするなら俺の手で殺せば良かったと!落とすなんてそんな不確かな物じゃなくて確実な死をお前に与えなかったのかとな!!」
過去に犯した罪を嘆くのではなく罪の未熟さに後悔するようにリオは叫ぶ。
「だからこそっ!この日が来てくれて嬉しい!俺の手でお前を殺せる!」
「…………」
ソウカは特に言葉を発する事なく、ただただリオを見つめる。
「復讐だと!?てめぇが復讐を抜かすなぁ!てめぇこそ…てめぇこそ…クミド義母さんの敵だぁ!!」
「お前は…」
「黙れぇ!殺し尽くしてやるよ!炎波旋風衝!」
炎剣イフリートから炎の波が生み出されて、ソウカを囲む。
「食らいつけ!」
炎の波がリオに呼応する様に収束しソウカを捉えようとするが、ソウカもただ黙っている訳もなく、
「…咲き誇れギボウシ」
淡い紫色の花が咲くと同時にソウカに襲いかかっていた炎がおとなしくなり、消えていく。
「っ!!?」
突然、自分の意思とは関係なく炎がかき消された事に驚くリオだったが、すぐに体勢を整えて、次に来る衝撃に備えた。直後、ソウカから繰り出された一閃の衝撃がリオを襲う。
「くぅ!…これが試合でくりだした『穿狼』か…。効くね~…だがなっ!」
茨の棒を受け止め、笑うリオは腕から炎を放出し、逆にソウカを吹き飛ばす。
「しょせんは棒っきれだ!斬れねぇ武器で俺を殺せると思ってんのかぁ!焼き尽くせ!炎獄羅衝」
少し離れた所ですら燃えてしまいそうな熱を孕んだ炎の渦をソウカに向けて放つ。
壁に衝突し、崩れた所から立ち上がろうとする矢先に炎が襲う。
例えこのタイミングでもソウカなら問題無いだろう。
「きゃぁあ!?」
しかし、突如リオとソウカではない者の声が聞こえる
ソウカはこの場にはリオしかいないと踏んでいた。俺に恐れて誰かを待機させておくなんて自意識過剰でパドラックス一族以外を信じていないリオにはあり得ないことだと思っていたからだ。
声の先を見ると、物陰に隠れていたリムルを見つける。
どうしてここに?という疑問が頭に浮んだが、それよりも先にソウカの体が動く。
色々と情報が多すぎた。
リオへの復讐のために闘技場に忍び込んだが、目に映ったのはソウカが使う見たことも聞いたこともない属性。花属性とリオは呼んでいた。
(花…かつて世界中に咲いていたと云われる多種多様な形や色を持つ植物…。そんな属性が存在するの?)
復讐のためにリムルは教養も身につけている。その中で多くの属性について学んでいる。
属性火や土と呼ばれる目に見える現象を司る属性や、付与といった目に見えない属性がある。英雄の中にも、付与や音を司った英雄もいた。そして、どれにも属さない属性も存在する。多くの者に認知されている代表的な属性が時だ。
(花…一見は火とかと同じ分類でしょうけど特性は?リオがいった通り、花を咲かせるだけなの?そんな無意味な属性が存在…)
リオが語った、ソウカの属性である花の特性について悩んでいると、リオとソウカの間で爆音が鳴る。思わず耳を塞ぎ音源の方に目を向けると、パパとママを突き刺した忌々しい大剣を持ったリオがソウカへと逼迫している映像だった。
あのときの事を思い出し、心が締め付けられる気がしたが、復讐を成し遂げるためにはあの大剣と対峙しなければならないと、心を奮い立たせる。しかし、対峙する時は一向に顔を出さない。なぜなら、ソウカがリオを圧倒しているからだ。徒手空拳と茨の棒を駆使して、あの英雄にたいし優位に進めている。そんな中、リオが放った炎がソウカを囲んだときに驚きの現象が起きる。突然ソウカの周りに花が咲いたと思うと、炎が消え去ったのだからだ。当事者ではなく第三者から見えた印象としては炎がひとりでに沈静していったとも見えた。
(一瞬花が咲いた?その瞬間に炎が消え去ったっていうの?花とか植物って燃え易いんじゃ…?)
そんな考えをしている内に更に動きがあった。私を破ったソウカの必殺の突きを繰り出す。
周囲の音を置き去りにするかの様な鋭く、相手を穿たんとするが、リオは予想していたのか、その突きを受け止めて、ソウカをはじき飛ばす。
このとき不運な事にソウカが飛んできたのが、リムルの近くだったという事。
考え事に集中しており、この場を離れる事を失念していたこと。リオがかなり怒りに身を任せて過剰な炎を放った事だ。
こうして、リムルは皮肉な事に、復讐する相手から一撃を浴びせられそうになる。
「きゃぁあ!」
リオにバレてしまう。とい思いもあったが、リオより近くにいたソウカがこちらを向く。驚きで目を見開いているソウカを見て、申し訳なくなる。
自身の過去を語り、復讐を諭されたソウカに対してだ。私の問いに答えてくれなかった事に腹を立てて、変な書き置きだけ置いて去った事。そして、この場で聞いてしまった、ソウカがリオ達英雄に裏切られた復讐者だったという事。そういう事なら、リオが女性だとわかるのもうなずける。語ってくれなかったのだからわからなかったが、私と同じように傷を負う者だったのだ。もし可能なら、改めて謝りたい。っと願ってしまった。
恐らくリオの炎はリムル自身を焼き尽くす。それほどまでに密度と熱量を持った炎だ。言動や性格は置いておくが、実力については頷くことしかできない。
(パパ…ママ…ごめんなさい。)
何も成し遂げられなかった事が悔しい。何も残せなく終わったしまう自分自身に。頬を伝う涙もリオの炎によって乾いていってしまう。まだ距離があるのにも関わらずだ。
そうしてリムルは目を閉じて自身の命が燃ゆるのを待つ。
「…………復…讐は…止めて…おけと云ったのだけどな…。」
周辺を溶かす程の熱量を持った炎の渦の中、彼は立ち尽くす。彼の前には茨と呼ばれる物がマチマチと生えていた。所々で炭になった形跡が見られる中、彼は1本の剣を前に掲げていた。剣の周りにも茨がついており、役目を果たしたかのように、崩れていく。
「ソ…ソウカ?」
恐る恐るといった声でリムルは彼の名を呼ぶ。あんなに長かった髪の一部は燃え、ずっと手放さなかった茨の棒。一度はリムルに託した物だったが、あれだけ大切に扱っている姿を見れば茨にもかなりの思い入れがあったのだと思える。にも関わらずソウカはリムルのためにそれらを犠牲にしてしまったのではないかと思ってしまう。
「あぁ…ソウカだ。」
リムルを守れた事に安堵しているのか、安堵の息を吐いてソウカはリムルに向けて笑う。
その顔を見て安心したのか、リムルは気を失ったかの様に倒れ込む。
リムルの後ろには小さくポピーが咲いていた。
リムルが眠った事を確認すると、炎を放ったリオへと向き直る
「ちっ!虫けらが混ざってやがったか。一緒に燃えてしまえば…っとそいつはあのときのガキだよな!あ~あ。フラウが庇ってなけりゃそいつは死んだパパとママに会えたのにな~?いや殺されたってのが正しいか?がははっ!」
リオが行った行為を思い出したのか、庇った事を責めながら笑う。
「……………」
8年という時間の流れは、人から情を奪うには多過ぎた時間だと思った。
人の影に隠れてばかりだったが、一度琴線に触れると、激しくなるリオ。それでも、人一倍おしゃれな情報を仕入れたり、自分の服を作ったりといった一面もあった彼女。
それが今は、重々しい兜で身を隠し、くすんだ瞳をしていた。
もしかしたら、いざかつての家族を前にすれば、自分の考えが変わるのではないかと思ったが、杞憂だったようだ。
ソウカがリムルを庇うために生み出した数多の茨の燃えかすが所々に散らばる中、ソウカは茨によって封印していた剣の柄に手をかける。この剣は師達と共にあった一振り。
彼らを導き合わせたと云われるあの場所の起源となった剣。神話に存在し、伝説となった剣と共にあったと云われる。時を経て、人々が忘れ去られてしまった剣。
「…奇跡と共に……」
ソウカの手から、青い薔薇が咲く。それが鍵だったかのように、剣は鞘から抜ける。
着飾った装飾が見られる事もなく、シンプルな長剣。しかしながら、どこか神々しい印象を感じる剣。傷も歪みもなく、ただただ斬るためだけにあるといえる剣。
ソウカは剣を鞘から外しながら
「リオ…葬花の名の下に、お前の最後に相応しい花を葬ろう」
彼は思い出す…師にあった時を、家族に捨てられた時を、…彼女…リオが義母さんと呼んだクミド義母さんとの出会った頃を。
ギボウシ:沈黙
青い薔薇:奇跡
次から過去編になります
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