序章-4
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次話から1章です。
「さぁ着いたよ。ソウカ君」
青年に声をかけると、少し寝ていたのだろうか、やや眠そうな眼をして降りてきた。
「ありがとうございます。…えぇ~っと」
申し訳なさそうにソウカ君は私を見る。そういえば…
「名乗るのを忘れていたね…。ロバートだ。」
「ちょっとあんた!自己紹介もしてなかったのかい!全く…ごめんねソウカ君。旦那が夜も眠らせてくれなかっただろう?」
ロバートさんの妻であるクアラがロバートさんを叩きながら笑う。
「ソウカさん!道中ありがとうございました!」
ロバートさんを退けて出てきたのはローランが頭を下げる。
ローランが礼を述べたのは珍しく街道にウルフが現われたのだ。
ロバートさん達は移動距離が短かったのもあるが、荷物もなく万が一襲われたとしても馬車を犠牲に生き延びられると判断したために、護衛を雇っていなかった。
そんな中だったが、乗せてもらっていたソウカがウルフを一蹴したのだ。
「いえ…乗せていただいたご恩もあります。気にすることはありませんよ」
「いや~まさか君があんなに強いなんてね…。」
名前を名乗っていなかった事を、怒られたのが少し恥ずかしいのか顔を紅くして頭を掻きながらやってくる。
「それほどではありませんよ」
「謙遜するんじゃないよ!属性も使わないであんなに圧倒できるなんてねぇ」
バシバシと肩を叩きながらクアラさんが笑う。
少しだけ談笑していたが、改めて彼らを見て
「では、ロバートさんありがとうございました。あっそうだロバートさん」
青年は改めて私に挨拶すると、思い出したかの様に袋に手をいれてある物を取り出した。
「これは…?」
「偶然俺の手持ちにありまして…。」
それは昔妻に贈った白いユリの花だった。
名前を思い出せずにいると
「カサブランカですよロバートさん。」
青年はカサブランカという花を私に渡してくれる。続けて青年は
「花言葉は「純粋」ですかね。プロポーズに贈るにはぴったりですね。」
そう笑うと、付け加えるように。
「これまでの移動駄賃と面白いお話をしてくれたので。一応造花ですが、古くなってしまいますから、手入れしてください。クアラさんに贈ってあげてはどうですか?」
「ふふっ。そうだね…妻に久々に贈ってみようかな。ありがとうソウカ君。」
私はカサブランカを受け取ると同時に、少しの報酬を渡す。
ソウカ君は少し困った顔で
「報酬を貰うために渡したわけでは…」
「これはそういう意味ではないよ。ここ、コロセウルは野店でも美味しい料理を振る舞っていてね…少しは腹の足しになると思ってね。」
受け取ろうとしないソウカ君に無理矢理持たせる。
「…ご厚意痛み入ります。」
ソウカ君は受け取ると、かしこまった礼を述べる。
「うん!若者はそれでいい。では息災を」
私はそう告げるとソウカ君は再び礼を述べると、去って行く。
「さて…どうやって妻に渡そうかな?」
ロバートは知らない。ソウカから受け取った花は造花ではなく本物の花であるということを……
そして、去って行った。ソウカはたどり着いた街改めて見上げると、
「やっと殺せる…。会いに来たぞ…リオ」
イカリソウだった花はいつしかシロツメクサに変わっていた。
その事実を知るものは花が消えた世界で過ごしていた周りの誰も気づかない。
イカリソウ「旅立ち」
シロツメクサ「復讐」
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