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花亡き世界で~唯一の花属性で、裏切って廃棄した家族だった奴らにたむけを贈る  作者: アロ紙
火の英雄編

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閲覧ありがとうございます。

ゆっくりと鞘から剣を抜く。剣を抜く時の独特な音が周囲に鳴り響く。騒がしかった世界が今はソウカが抜く剣が主役と言わんばかりに静寂を醸し出す。

鞘から解き放たれた剣はありきたりな長剣だった。しかしながら、鍔やグリップには細かな装飾が施されており、誰が見ても業物だと感じる。



だが、それより目を引くのが刀身だった。刃は太陽の光を反射する程磨かれた白銀。

刃こぼれも歪みも何一つ見られない完璧な造形。鍛冶を囓った事がある者が見れば、その技術にあやかりたいと思ってしまう程だ。



そしてそれを凌駕するのが剣の腹だ。片方の腹は淡く光輝く様な白。もう片方は全ての光を吸い込みそうな程の黒だった。どちらにも一つの花が象徴として象られていた。

世界から花が消えた世界で生きていた人々にはわからなかったが、ソウカは象られている物を知っている。

剣を抜き、黒い方の腹をガストルへ。白い方の腹をニーチャに向く様にして、ソウカは託された長剣の名を告げる

「…スズランは『希望』。イトスギは『絶望』。相反する思いを宿す剣…。相対するもの希望を奪い、絶望を届けよ。絶望に沈むものには希望を与えよ…。



『望却の剣』




ガストル。お前には絶望を届けよう。弱き希望(若菜)を摘もうとする事は許さん。」

以前ガストルと握手したときに向けられた殺気の仕返しかのように、ガストルだけにソウカは殺気を向ける。…ただし、ガストルとは比べものにならない程、ソウカの殺気は凄まじかった。



突然殺気を向けられ、驚きながらも我を取り戻す。ガストルは収納袋に忍ばせていた、直剣を取り出す。

「ぬ…ぬかせ!儂の栄光のための小さき犠牲じゃ!」



「この期に及んで、そんな事を言うのか……ならばっ!」

残念な物を見るような目でソウカはガストルを見下して駆ける。激しい攻防を繰り広げた後にも関わらず、最初と同じ速さでガストルの元へとたどり着き剣を振り下ろす。



かろうじて反応したガストルは直剣をぶつけるが、直剣はまるで柔らかいスライムを着るかのように長剣の餌食となる。

「なぁっ!?」

予備として持っていた剣。だが、最後の最後に自分の命を託す武器だ。予備であろうと業物を用意していたのにもかかわらず。ソウカの長剣を前に意味をなさない。



その隙をソウカは見逃すことなく返す手でガストルの腕を切り裂く。ガストルは風を巧みに操り、剣の軌道を逸らそうとするが、長剣は逸らされることなくガストルを斬る。

かろうじて直撃を避けることができたが、ガストルは左腕に深々と傷を負う。



戦況が一変した事でガストルは後方へと距離を置くためにバックステップを試みるが、突如右足の甲に痛みが走る。

「ぐぅうぉお!?」

足を見ると、先程投擲した短剣がガストルの足と地面を縫い付けるように刺さっている。

「……忘れ物だ。師弟共々己の獲物を忘れるのは良くないぞ?」

痛みの先に注意がいってしまい、上から聞こえてくる声への反応が遅れる。



声の先を見れば、ソウカが先程抜剣した長剣を構えていた。

刃の部分が太陽の光を激しく反射するのと対象に、黒く光だけでなく全てを飲み込んでしまいそうな黒色の腹が見える。

(………ここまでか…)

幼き者を使ってまで縋った勝利だったが、ソウカの力の前にガストルは悟る。



「………絶望に沈め」

ソウカから、告げられる言葉と共に来たるべき衝撃を覚悟する。







だが、衝撃が来ることはなかった。



スズラン:希望

イトスギ:絶望

少しずつ師のヒントが出てきます。


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