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お互いに決定打に欠ける状態で時間だけが過ぎる。お互いに息を切らすことなく、ガストルは風を駆使して動き回り、ソウカは地を駆けて対峙している。
先に痺れを切らしたのはガストルだった。突如ソウカを襲い続けている短剣がガストルの元に集まる。ソウカも足を止めガストルの様子をうかがう。
「ふぉふぉふぉ。お主は予想以上にやりおるのぉ…。だがな?年の功というべきかな…。これより、お主の実力を評価して、もう一段階本気になるとしよう。」
ガストルは傲慢な態度でソウカを見下し、再びふわっと浮き上がる。呼応する様に、短剣は宙を舞う。
「…ここから、儂は風を読み、お主の先を見て刃を振るう。確かにお主は強い。……しかしな、上には上がおるという事を学ぶとよいぞ?」
ソウカの未来。つまり動く先を見越した戦いをすると宣言したガストルに対し、ソウカは適当に未だ鞘から抜いていない剣を掲げて
「やってみろ」
と小さく呟くだけだった。
宣言したガストルは、先程とは特に変わった所が見られなかったが、短剣の軌道が、ソウカを狙うだけではなく、ソウカが動くであろう先に向かうといった軌道に変わった。
(確かに俺の動きを読んでいるのか?むしろ闇雲に……………………っつ!?)
突如ガストルとソウカの戦いに変化が起きる。
「ぐぅう!?」
小さな呻き声と共に短剣がソウカに刺さる。
小さな変化だったが、観客達は盛り上がる。それもそうだろう。
かれこれソウカは予選から準決勝まで血を流していない。リムルとの戦いでも服を切る程度。そんな中でガストルの短剣だ。これを機に観客達はガストル側へと風が吹く。
「ほれほれぇ!!」
一撃を受けたソウカだったが、すぐさま刺さった短剣を抜いて短剣の刀身を砕くとその場から離れる。
たった一撃だが、この攻撃を期に戦況が一変する。
風に乗って襲いかかる短剣を躱してはいるが、ガストルの読みが正しいのか、一撃、一撃とソウカは短剣を受けてします。
「……………」
今も脇腹に短剣が刺さったが、特にリアクションする事なく短剣を抜く。そして投げ捨てるのではなく、あえて無効化するために短剣を砕く。
自身の攻撃がソウカに刺さり、形勢がガストル優位になった事で余裕が生まれたのか、ガストルは短剣を周囲に浮かせて
「どうじゃ若造よ?儂の風と剣の味は?先程までは余裕そうじゃったが、随分と傷を負っておるのぉ~。」
「………………………」
ガストルは年季の差を痛感させるように、笑いかけるがソウカは気にすることなく無言を貫き、肩口に刺さる短剣を抜いて砕く。
戦況はガストルが優位になったかと思えるが、ソウカは臆することなくガストルと対峙する。
臆していない、諦めていない、屈することもしないソウカに少しばかりの苛立ちを覚えるガストルだったが
(…諦めの悪いガキじゃの~…。だがいつまで耐えられるのかのぉ?)
ソウカの戦意を折るため、ネイルの雪辱を果たすためガストルは再び風を吹かせる。
「………………………師…あなたは…」
観客席で隣にも聞こえない位小さな声で呟くネイルに被せる様に
「ちょっと!何やってんのよあのバカっ!何であんなの避けないのよ!!」
隣で声を荒げながらソウカを揶揄する様にリムルが叫ぶ。
「強ぇな2人とも…だがやはりガストルの方が1枚上手なのか?少しずつ戦況も変わっているような。」
愛剣がなくなった事で少しだけ悲しそうな印象を持つ、ガルフィードだったが、ソウカとガストルの戦いを冷静に分析をする。
「はぁあ?なに言ってんのよ?見てなさい!すぐにソウカがひっくり返すわよ!」
「おいおい。どうしてお前さんがソウカの肩をもつんだよ?」
「そ……それは…………ふん!」
勝手に言いくるめられたリムルは勢いよく席に座る。
そんな一部始終を見ながらもネイルは2人の戦いを見る。
(爺ちゃん……それでいいのか?)
心の中で思う言葉を口には出さず、胸にしまい彼らの戦いを見届ける。
観客席でリムル達が揉めている中、他の観客席からも「そら見たことか。やはり前風剣は健在だ。」「ソウカっていうガキの躍進もおしまいだ」なんて声がちらほらと聞こえてくる。
そんな声に耳を傾ける事なく、ソウカは会場を縦横無尽に駆け抜ける。
「……………」
「ほっほっほっ。どうしたどうした?手も足も出まいか?」
ガストルは走り回るソウカを狙い短剣を投擲し続ける。戦況がガストルに傾いているはずなのだが、ソウカは短剣によって負った傷にひるむ事なく駆ける。
腕に脚。肩などにも傷を負うが、特に呻く事もない。
そんな一方的な戦いが続いている中、観客の1人として見ていたマルノ選手が呟く。特段優れた選手ではないが、手堅いという印象の選手だ。
「…ソウカ選手は先程から同じ場所で傷を負っている?」
ノルマは対戦相手の分析を得意とする。というのも次に戦う相手に対する戦略を立てるためだ。……あまり良い結果に繋がる事は少ないが…。観客の1人だが、ガストルとソウカの戦いは自身の糧にもなるため、分析も兼ねていた。
先程から、ソウカは縦横無尽に駆け巡っているが、必ずある一定の場所でガストルの短剣を受けている。
「まるで当てられているのではない…。むしろ当たりに行っている?」
マルノの声は、誰にも聞かれることもなくかき消されていく。
(それにしてもなかなかしぶといのぉ)
短剣を操作しながら、ガストルは思う。そしてマルノの想定通り、ある場所に向けて短剣を飛ばす。
すると、まるで吸い寄せられたかの様にソウカが短剣を受け止めて、短剣を無力化する。
最初に比べ、空中に漂う短剣の数が少なくなっている。それもそのはず、ソウカは短剣が当たる度に短剣を壊している。それにより、ガストルの手数が減ってしまっているのだ。
(的確に武器を無力化する辺り、癪に障るのぉ…それに)
短剣の数も減ってきた。そしてかなり時間が経ってしまった。これではこの戦況に疑問を持つものも現われてくるのではないだろうか。
(そろそろ決着をつけるか…)
ガストルは決意すると、短剣を携えてさらに上空へと浮ぶ。そして自身が最後の手段によてってソウカを倒すと思い込ませるように宣言する。
「よく耐えたのぉ…。お主も満身創痍じゃろうに。もうこの苦痛を終わらせてやろう。」
これまでソウカは、あそこに飛ぶ短剣を全て受けてきた。だからこそ、次に繰り出さんとする今ある短剣全てを同時に飛ばす。風の属性と掛け合わせて繰り出す必殺の技だ。
「お主は強い。じゃからこそ残念じゃ…。」
指揮をするように風を集め短剣を集わせる。
「…ただのガキを庇って負けるなんてのぉ」
小さく呟くそれをソウカを含めた誰も聞くことはなかった。
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