序章-3
閲覧ありがとうございます。
次回で序章は終わりです。
商人は過去の事を思い出した。だからこそ、青年の持つ花は久方ぶりに見たものなのだ。
「懐かしいですな~。実は妻にプロポーズした時にも花を贈ったんですよ…。それから毎年、記念日には花を贈ったなぁ~。…まぁあのときからは贈ることが出来なかったんっですけどね。」
「そうですか…。俺も造花であろうとあのときの事を忘れたくなくて持っているんですよ。
ちなみに贈られた花は何だったんですか?」
青年は私の話を嫌がる事なく聞いてくれる。
「何だったかな~?確かユリ?だったかな。白い花が大きい奴だ。」
はぁ~忘れちまうなんて妻にバレたら…なんてぼやく声は小さくしぼんでいく。
「そうですか…」
「でも、人というのは怖いね~。花がない世界になれてしまった。いや、順応したという事でしょうかね?かつて、珍しい花を材料にしていた解毒ポーションは代替品が作られた。花がなくても色がついた明かりなどで代用した。」
今も鮮やかな色で妻と娘が寝ている馬車を照らす明かりに目を向ける。
理屈はわからないが、賢い方々が花に変わるものとして作り出したらしい。
ソウカは少し目を細めて明かりを見る。
「これがそうなのですね…」
初めてみるのだろうか?見た目とは異なりかなりの田舎者なのだろうか。…しかし、かなり浸透したこの技術を知らない事があるのだろうか。
…少し不思議に思うが、害はなさそうなので、深く聞くことはしない。
「こんな夜だってのに歩き回れるのも、かの英雄達のおかげでしょうかね。」
少しソウカが眉をひそめたが、それに気がつくことはなかった。
「英雄…パドラックス一族ですか?」
「おっ!田舎もんのソウカ君でも知っていたか。実は僕も一度は魔物を倒して活躍したいと思った時はあったのさ。まぁ…夢を諦めるのは早かったけどね。」
「それはどうしてですか?大きな活躍をしなくても、冒険者に向いていない人はそういないでしょ?」
ソウカが不思議そうに彼を見る、彼は手をひらひらと見せて、
「僕の属性はね…「水」だ。…はっきり言えば日常生活では必需なものであるけど…」
そっと手を前に向けて頭サイズの水球を前方に飛ばす。
放物線を描いて、落ちた水球はバシャンと音を立てて、街道を濡らす。
「…戦闘面では…どうも地味でね。「氷」だったらまだ少し使い方があったかもしれない。
「火」だったら違う道があったかも知れない。」
彼は妻と娘が寝る馬車をみて
「だから、僕は冒険者であることを止めた。…それにね?水って行商としては重宝するんだよ。護衛の冒険者達には水浴びを提供できるし、道中では水は必需品だ。」
かざした手をまじまじと見つめて。
「それに行商人になって夢もできたよ。」
「夢ですか?」
「僕は世界が見たいんだ。この大陸の北には、聖王と呼ばれる人が納める国がある。南には過去の戦いで滅んでしまったが、魔王の城があった。東には文化を発展させ続けてきた文明都市だある。…西にはなんとも可憐な女性が体を温めてくれる場所があるそうだよ…。ちょっと憧れちゃうよ。…っと妻には秘密だよ。
まだ世界には僕の知らない事がたくさんある。だから僕は行商がてら旅をする。」
眩しく彼は笑う。
「良い夢ですね。」
ソウカは優しく笑う。
「そういえば、ソウカ君。君に夢はあるのかね?」
「…夢ですか?そうですね…」
少し考えながら、ソウカは考える。
「夢…。俺には目標があります。」
「ほう?目標かい?」
「えぇ。といってもとても小さな目標です。会いたい人達がいます。その人達に俺は生涯かけて会いに行きたい。」
ソウカは少しだけ悲しそうな顔で語る。
「生涯かけて会いたい人達か…。そんなに難しいのかい?」
ソウカは手を広げて
「さぁ?でも必ず会いに行きます。」
目に光りを宿し、ソウカは語る。
「…応援するよ。ソウカ君が会いたい人達に会えることをね。…そうだ!会いたい人と言えばだけど、実は僕は昔英雄にあった事があるんだ!確か「時」と「火」の英雄様だったかな…」
そうして私と青年は会話を終えて、目的の街道をゆっくりと運ばれていった。
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