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舞台に向かう途中に観客席から声がする。
「おにいちゃ~~ん!」
聞き覚えのある声なので、振り向いて見ると、ニーチャが手をふってくれている。後ろには両親もおり迷子になっていなかった。
少し安堵して、手を振り替えしておく。
舞台に上がると、嘲笑の声が聞こえる。
「あっはっはっはっ!!武器を持ってこないなんて、諦めちゃったの?困るな~君みたいな記念参加者。僕みたいな二つ名持ちと戦えるっていう名誉を持てたから十分なのかな?」
「…………」
「おや?緊張しちゃってるの?」
ネイルが俺をバカにする様に挑発すると、周りにいた他の参加者も同じように笑いだす。
くだらない挑発を無視し、拳を握ったり開いたりする。
(徒手空拳は久々だな…。師との最後の手合わせ以来だな)
俺の無視が気にくわなかったのか、いろんな参加者が俺を目の敵にする。
「…雑魚如きが僕を無視するとはね…風剣の錆にしてあげるよ。」
「…………」
最後まで無視し続けて、颯爽と舞台に昇る。
他の参加者も、ニタニタしながら舞台に上がってくる。
最後にネイルが自信満々に舞台に上がり、役者がそろう。
「それでは…Fブロック予選…始め!!」
審判の合図で、ついに俺の大会が始まる。
合図と同時に他の参加者が何故か脇に道を開けるよう移動した。
不思議に思っていると、道の先にニタニタと笑うネイルがいた。
「くっくっくっ。君みたいな雑魚。一番最初に脱落してもらうよ!僕の盛大な属性でね!!エリアルゲイザー!!」
かけ声と共に、荒れ狂う渦巻く暴風が俺めがけて吹き荒れる。
俺は避けることもなく、待ち構える。
「この程度の風…俺にとってはそよ風だ。師に比べればな…。」
そして、風に向けて、拳を構える。
繰り出すは、師に教わった技の真髄。ある武術の始祖と云われた師の技術。体を鋼の武器に変える技術。体の構造を、力の奔流を理解し、繰り出す拳は万物を打ち砕く鋼の拳。
(まだまだ一人前にはほど遠いでしょうが…)
師なら俺とは比べものにならない堅さでしょうがと思いながら、風と向き合う。
ネイルが繰り出した暴風は、参加者や観客も驚きを隠せない。
去年と比べ、なんと猛々しい風。前風剣に敗れた事がよほど悔しかったのだろう。
そして、それと同じくらい、風が向けられた青年に同情する。
だが、その同情は杞憂に終わる。
「はぁぁ!!」
風が青年とぶつかる刹那、青年が繰り出した拳と風がぶつかりあう。誰しもが無謀。記念参加者が行う驕った行為と思った。
しかし、風とぶつかったこぶしは風まき散らすように弾く。なんと風剣の風は、仮面の青年のこぶしによって砕かれる。
「「「なぁ!!!!!???」」」
誰の言葉だっただろう。驚きの声は会場全体に響き渡る。
「なんだと!?」
風剣は驕っていた。紅槍がひいきにする青年を、そして風剣という立場に驕った。
その隙を無駄にするソウカではない。
次のアクションに移れていないネイルの懐に入り込み、鳩尾に拳をたたき込む
「かひゅ…」
ネイルの口から空気が漏れ音と、肋から何かが割れる音がするが、止まることはない。
すぐさま空いている方の手でネイルの顎を打ち上げる。体を鋼のようにしている事もあり、顎の骨が砕ける感覚がする。それと共にネイルの気が失われるのを感じる。
「ぐぼぉ!…」
ここで止めることも出来たのであろう。だが、ネイルが気を失った事は誰もわかっていない。なら、止める必要はない。
気を失ったネイルの頭を掴み、地面に叩き付ける準備をする。
「無名の雑魚にやられて良かったな?」
「………」
返事がないが構うことなく、叩き付ける様に腕を加速させる。
「止めるんじゃ!!!」
突如外野から老人の様な声がしたが気のせいだ。
声の主を無視して、気を失ったネイルの頭を地面に投げつける。頭蓋と地面がぶつかり合う音が静まりきった会場に響く。
「………」
返事を返すこと出来ないネイルの襟首を掴み場外へ投げ飛ばし、地面に叩き付けた時にネイルが手放した直剣を掴み、他の参加者の方に対峙する。
「…次のゴミはどこにいる?…よかったなお前達、勝てたら風剣に勝ったことになるぞ?…っといっても、ゴミ如きに出来る事なんて無理だろうがな…」
他の雑魚達も気を取り戻し、各々の武器を掲げ襲いかかってくる。
数多の猛者が傷つき地に伏せているなか、無傷で返り血を浴びることなく立ちすくむ男がいた。
「…この程度か…」
そう呟いて、波乱のFブロック代表が決まった。
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