週案2p 異世界への辞令交付
激しい光が、少し止んだ気がする。
顔を覆っていた手を、ゆっくりと下げていく。そこには校長室があるはずだった。
しかしそこにあったのは、まったく見たことのない部屋、そしてまったく見たことのない人、いや、人なのだろうか。
そこにいるのは2人。
1人は背の高い、グラマラスなお姉さんといった感じだ。紫色の腰まで伸びた髪は、ゆるくウェーブしている。だが特徴的なのはその耳だ。
いわゆるエルフ耳というやつなのか、長いのだ。
もう一人は男性だ。こちらは筋骨隆々と言った感じで、上半身は裸だが、なぜかネクタイだけはしている。
肌の色が赤色なのと、額から長い角が出ているところ以外は、強面のおっさんといった感じだ。
「驚かせてしまったかしら?でも、話は向こうの校長先生から聞いているはずよね?」
そういって話しかけてくるエルフ耳の美女、でも今の状況に混乱していて何も答えることはできなかった。彼女は顔をしかめると、もう一度私に向かって
「異動の話は聞いてるよね?」
と尋ねてきた。
「は・・・異動?ああ、異動ですか?聞いてます、えっと私は国立の学校に異動することになっていて
・・・。」
「そう、ちゃんと伝わっているみたいね。よかったわ。
そう、ここがあなたが今年から勤務するルミエール王国立魔法学院です。
私はここの学園長をしていますエルフ族のミリア・トェム・フィンといいます。」
そういって自己紹介をしてきた彼女、ミリア。学園長?エルフ?ルミエール王国?何を言っているんだ?
頭が追いついていかないが、さらに続けて筋骨隆々の男が
「ワシは教頭をしているガレット・ビーツだ、よろしく頼むぞ。ガハハ。」
と名乗ってきた。
「は・・・えっと、頭の処理が追いついていないんですが・・・、私は・・・えっと、この学校に異動してきたということでしょうか?」
「ええ、前の学校の校長先生から伺っているでしょう?
あなたは今年からここで勤務するって?」
「いやいや、聞いてないですって!」
いきなりのことに思わず声を荒げて言ってしまう。
「そうなの?でもほら、校長印の入った辞令も届いていることですし。」
そういって見せられた辞令交付書、そこには
「教諭 山田士郎 4月1日付でルミエール王国立魔法学院での勤務を命ずる。」と書かれていた。そしてそこにはしっかり、校長の名前である「高橋」という印鑑が押されていた。
「まぁ、そういうことだからこの学校で頑張ってほしいのよね。」
そういってウインクをするミリア校長。
俺はこれまで出したことのないような大声で、「嘘だー!!!!」と叫ぶのであった。