07 打撃スキルの体得は難しいようです
防御を体得した日の夜。
「マナ明日のことなんだけど」
俺とマナはリビングに居た。
おばさんは寝るのが早い10時にはもう眠りについている。
「明日からは跳躍の他にもうひとつ並行して体得に向けて頑張りたいと思うんだけど」
「それもそうね。何を体得しよっか」
残りのスキルは打撃と加速。
打撃はともかく加速ってどうやって体得するんだ?
走るだけか? それとも他に効率の良い方法があるのかもしれないし、まぁ、それよりもスキルの素質があっただけ良かった。
そんなこんなで明日からは打撃の体得を並行してやることになった。
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翌日。
「はっ!」
僕はオークを切りながらびょんぴょん飛んでいた。
驚くことにこの世界ではモンスターからは血が流れない。倒す時も流れず消滅するだけだ。子どもに優しい仕様だな
「よいしょ!」
マナも一緒にオークを狩っている。
マナの武器は片手剣。一番王道な武器だ。
見るとマナはそれなりに戦えている。
やっぱり努力してたんだな。頑張り屋さんなんだなぁ。
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そして……
オークを狩り始めてから
2ヶ月が経った。
「あぁあああ! もう! まだ体得出来ないのかよ!」
この2ヶ月間永遠にオークを狩り続けている俺たち。
1ヶ月程で俺は跳躍は体得出来たのだが、打撃が一向に体得できる様子はない。
「はぁ。なにかやり方があるのかなぁ」
「うーん。ありそうだな。スキルの体得に詳しい人……って言うか打撃を体得してる人居ないかなぁ」
そう話していると。
ドンッ
ドンッ
オークが何かに突進していた。
「こい! よいしょ! はい!」
俺より1、2歳年齢の高そうな男がいた。
「マナ……あれ絶対防御体得しようとしてるよな」
「うん……絶対そうよ」
あまりの分かりやすさに少し引き気味 (今まで俺たちもやってた)になっているとその男が声をかけてきた。
「おーい。君たちブハッ……は龍狩人なのブハッ……」
話をオークにさえぎられている。その光景はかなり面白かった。マナも笑いをこらえるので精一杯だった。
すると…
「あぁ! もう鬱陶しいな! はっ!」
そう言ってオークを持っていた大剣で一撃でしとめた。俺はナイフだが、少なくとも5発はかかる。マナも片手剣で3発だ。
もしかしてあの赤髪の男…
「マナ」
「うん。行ってみよう」
恐る恐る近づくと、
「おー。人間だよ。この平野で人を見るのは久しぶりだな。俺はドラゴ。仲良くしようぜ」
唐突の自己紹介だった。
名前を言われてしまったら仕方がない。
「俺はライ。こっちはマナだ。よろしく」
俺たちは2人で頭を下げる。
すると、
「おう!よろしくなライ、マナ!ところでお前らは龍狩人か?」
「あぁ。そうだよ。逆に1つ質問してもいいかな」
ドラゴは「おう」と頷く。
「もしかしてだけど、ドラゴ。打撃を体得しているか?」
そう聞くとドラゴは
「おう。してるぜ。打撃だけだけどな」
よしきた! これを待っていました!
これで打撃体得に近づくぞ!
「そこでなんだけど、打撃の体得って何をしたらできたんだ? 俺たちオークを倒してるだけじゃなかなか身につかなくて」
ドラゴは「ほぉ」という顔を見せ、口を開いた。
「分かった。教えてやろう。でも、タダとは行かねーな」
げっ。めんどくさいタイプだけど聞くしかないな。
「何をすればいいんだ?」
「俺と一緒にパーティを組んでドラゴン討伐を手伝ってくれ」
予想外だ。
てっきりマナをくれとかそう言う類のものかと思った。
「あ、あぁ。そういう事なら俺は全然構わないんだが、ドラゴも望みのためにドラゴンを討伐しようとしてるんだろ?」
「あー、それに関しては大丈夫だ。俺は望みはねぇ。ただ龍を全部狩りたいだけだ」
望みがない。龍を全部狩りたい。俺と同じだった。
この世界の龍狩人に望みがない人がいたなんて。
「本当にいいのか?」
ドラゴは2回コクコクと頷いた。
「じゃ、決まりね。いきなりだけどドラゴ君。打撃の体得はどうやったの?」
「俺の場合はオークを狩っていたぜ。多分ライ達には1発1発の重みが少ないんだと思う。もっとこう……なんて言うか、1発に気持ちを込めて狩るといいんじゃねーのか」
そういう事なら。
「そうか。ありがとう。マナ、これからは1発1発集中だ」
マナがうんうんうんと素早く頷くと、
「すまね、もうひとつ頼みがあるんだが……」
俺たちは耳を傾ける。
「これから俺も一緒に平野で狩りをしていいか?なんか……1人だと寂しくてよ」
ドラゴから寂しいなんて言葉が出るとは思ってもいなかった。でも、断る理由もない。
俺とマナは目を合わせ笑った。
「あぁ。もちろんいいぜ。人数多いい方が楽しいしな」
そう聞くとドラゴは右手を突き上げ、
「よっしゃぁ!」
そう叫んだ。
体得にあと何日かかるかなぁ。
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