05 マナ
「マ、マナか。ど……どうぞ」
僕は脳内でどうすれば許してもらえるか考えた。
案1 目が悪いと嘘をつく。
ダメだ。すぐバレるメガネもコンタクトも付けてないからな。
案2 しょーじきに見てたと言う。そして褒める。
そんな事したら殺されてもしょーがない。
ダメだどーしよ!
脳内の整理がつかなくなったその時、
「ライ君。入るね」
ガチャ
やばい。本当にどーしよう。
もう……これしかない!
マナがドアを開け入ってきた瞬間俺はダイナミックに地に頭を付け、
「すみません!」
俺は土下座をした。
大人しく謝る。
これが一番の解決法だ。マナなら許してくれるだろう。
2、3秒地に頭を付け、ゆっくり頭をあげると
マナは怒っている…って言うか困っていた。
「ライ君?なんの事?」
「え?」
両者そろって疑問を見せた。
―――――――――――――――――――――――
「あ……あはは。そーだったのか。お母さんとお父さんの話をしに……」
うわぁ! 俺はなんて地雷を踏んでしまったのだ。
そーだよ。あの時許してくれたやん。俺は何を考えてたんだよぉ。
「ライ君には教えとかなきゃと思って……でもなんでさっき謝ってきたの?」
どうしよう。大人しく言うべきなのか。
それとも「な、なんでもないよ」と言って乗り切るか。
ここでマナからの印象を下げてしまったらこれからの異世界生活に支障を来たしてしまう!
んー、んー、と俺が唸っていると、
「ライ君?大丈夫?」
「あ、う、うん。ごめん」
マナは優しい。言わなくても大丈夫かもしれない。
でも。
俺は覚悟を決めた。
なんか、強敵敵を倒しに行く時みたいになってるけど、
「マナ。さっきの話をするからしっかり聞いてくれ」
「え?うん」
俺はおーーきく深呼吸をした。
「あの……風呂場でのことだ。もしかしてまだ怒ってて……俺の部屋に……怒りに来たのかと……」
ここのマナの対応によっては居候生活が一日で終わってしまう。
頼む頼む頼む!
ソワソワしていると、「ふふ」とマナが笑った。
「え?」
俺は疑問の2文字を顔に映し聞き返すと、
「いや。ライ君本当に面白いなぁと思って。そんな事全然もう大丈夫だよ。でも、次からはライ君気をつけてね」
マナは笑いながら俺にそう伝えた。
神かよ!! いや。女神だ!
「ありがとうございます! マナ様!」
俺はまた地に頭を付け次はお礼を言った。
マナは「ふふ」とまた笑った。
本当はこんな怪しいヤツ居候させたくないはずなのにマナは本当に優しい人なのだろう。俺も優しくならなくちゃ
―――――――――――――――――――――――
ベットに2人で座り、マナは話を始めた。
「私の前の家は龍の祠からかなり遠くてかなりの差別を受けていたの」
差別の内容を聞くと、それはそれは最悪なものだった。
仕事が少ない割に給料が低い。
付ける仕事もかなりのブラック。
学校では酷いいじめ。
聞いているだけで鬱になりそうな感覚だった。
「それでね。お父さんが病気なっちゃったの。でも、どこの病院もちゃんと診察してくれなかった。だから……お父さんは死んじゃったの。それから……お母さんは仕事が出来なくなってラドスって言う国に飛ばされちゃったの。その時お母さんは私だけは何とかって言っておばさんの家に受け渡したの」
マナの表情がひきつる。
国外追放はこの世界だと死を意味するらしい。
俺はどうしたらいいかわからなくなった。
俺は前から気が利くやつじゃない。
だから人と関わることをしてこなかった。
でも、1つだけ。マナと共感できる場所があった。
「俺も昔いじめられてたんだよ」
そう。俺は中学の時いじめられていた。
マナの顔が驚きの表情に変わる
「俺死のうかと思った時もあった。でも、怖くて結局不登校を選んで皆との関わりを絶った」
そう。俺は逃げたんだ。
そこがマナと違うところ。
「でも、マナ。君はすごいよ」
マナは「なんで?」と首を傾げる。
「だってさ、俺と違って逃げてないじゃん。今も差別を無くそうと前向きに考えている。実際龍なんて女の子一人で倒せるなんて思って無かったよ。でも、それを成し遂げようと頑張っていた。聞いたよおばさんに。毎日ダンジョンに行ってたんだろ?」
夜ご飯の前。おばさんと話をした時その話になった。マナは頑張り屋さんだよって話をな。
語彙力のない俺の言葉にマナはたくさんの涙を流していた。いつも冷静そうなマナが無我夢中に泣き喚き、手で涙を拭っていた。
「え、あ、そんなつもりは……」
「違う! 嬉しい……嬉しれしかったの!」
これは悲し涙じゃなくて、
――嬉し涙
と、主張した。
「私のやることを……理解してくれる人なんて少なかったから……今までずっと……」
涙が少し収まりそう言った。
マナが落ち着いた時俺は
「何人目かは分からないけど、じゃー俺はマナの少なき理解者だな。だからなんかあったらなんでも頼ってくれ。ま、まぁできることは少ないけど」
カッコつけようと思ったが不発だ。訳分からんこと言ってる。
すると、
「分かった!」
次は満面の笑みでマナがそう答えた。
この笑顔で世界が救えるんじゃないのか。そう思えるくらいの最高の笑み。
「じゃあ、1つお願いしてもいい?」
「あぁ、なんだ?」
マナとはまだあって一日だ。それなりに仲良くなれたかな?
よかったよかった……
「もう少しこの部屋にいてもいいかな?」
……!
これはどういう意味を示しているのか。
ただ俺といたいだけだよな。
でも、俺といたいっていうのもなんか……
でも、断る訳にも行かないし……
「あ、うん。もちろんいいよ」
「やった!」
少しは優しく出来たかな。
マナは会った時より笑うようになった。
さっきまで隠してたがあるひとつの感情が現れた。
可愛い。
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