17 ただいまとおかえり
俺が弟子になる前、ドラゴと待ち合わせをしていたあの場所。まだ2人がそこで待ち合わせてるかは分からない。とりあえず行くだけ行ってみるか。
俺は踊る心に振り回されながら走り出した。
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ここを曲がればあの待ち合わせ場所だ。
この国の中心に位置するこのメインストリート。
いつもここは人がたくさんいる。
メインストリート内にある曲がり角を曲がった俺は見覚えのある赤髪の男と金髪ショートの女の子後ろ姿が見えた。
見つけた……
どうやって話しかけよう。
ただいま!……なんか違う。
久しぶり!……もなんか違う。
立ち止まりあれこれ考えていると金髪ショートの女の子が振り返った。
目が合った。
その瞬間……
「ライ君!!!!」
マナは周りにいた全員の視線を集めながら俺の名前を叫んだ。
心の準備が……
そうも思っていると髪をなびかせマナが走ってこちらに向かってきた。
次の瞬間……
「うわっ!」
俺の首に腕をまきつけ飛びつくように抱きついてきた。
「会いたかった…ライ君…」
強く抱きしめるマナ。
「ただいまマナ。強くなって帰ってきたぞ」
抱きしめ返す俺。周りの視線なんて感じなかった。
くっついた体を離し、マナは俺の顔を見て笑顔でこう言った。
「おかえり!ライ君!」
俺も俺ができる一番の笑顔で受け答えをした。
少し遅れてドラゴがこっちに近づいて来る。
「久しぶりだな、ライ」
「あぁ。久しぶりドラゴ」
ドラゴも顔のシワをクシャッとして笑う。
俺は2人に向かってこう話した。
「俺は強くなった。前の俺とは違う。だから……だからまた、一緒にドラゴン討伐して……くれるか?」
「「もちろん!」」
俺は嬉しさで胸がいっぱいになった。
俺には帰ってくる場所がある。それだけで俺は胸が高鳴った。
涙が込み上げてくるのを必死にこらえ、
「さぁ、どっか行くか!」
2人が頷く。
そう言って俺たちは歩き始めた。
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マナとドラゴはあの一件のあと、あの男に合わないよう平野には行かず違うダンジョンで練習をしていたらしい。
「久しぶりにあの平野に行くか。今の俺ならマナも守れるし今日はドラゴもついてるからな」
「ライ君。それはいいんだけど……実は私戦闘練習しすぎてまだ加速体得してないんだよね……」
マナは少し不安そうに話した。
「じゃ、平野でまずは加速を体得するか! マナ、次は俺が教える番だ!」
そう言うとマナはにっこり笑って「わかった!」と答えた。
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平野に向かっていると見覚えのある男がいた。
「よぉ。久しぶりだな」
「おいおい。ちょっと誰だよ」
そう言ってドラゴが俺と男の間に割って入ろうとした。
俺はそれを止め、男にこう言った。
「俺はまだドラゴン討伐を目指しています。それだけは揺らがないので」
挑戦的な態度で俺はこう伝えると、顔色を変え男がこう叫んだ。
「まだそんなこと言ってんのか!? 俺にも勝てない雑魚の癖にいきがってんじゃねーよ!」
この声が街に広がる。後ろでマナが頬を膨らませ怒っている。
「今の発言は正解と間違いがあるぞ。……。俺は雑魚だけどな、もう、お前に勝てない俺じゃねーよ」
そう言うと男は「ほぉう」と言って指をバキバキ鳴らし始めた。
なるべくなら問題を起こしたくなかったが、これは正当防衛だ。
先手必勝と言わんばかりに殴りかかってきた男の拳をひらりと避け、足をかけて体をポンと押し、男は地面に倒れた。
後ろでマナとドラゴが目をキラキラさせて俺を見ている。
「これで分かったろ。俺は強くなった」
男は地面に倒れながら唖然としていた。
「行くぞ」
と、言って俺は歩き出す。
マナとドラゴは俺についてくる。
これでひとつ借りは返したかな。
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