Ep:6 命名 *
街の騎士が灯りを掲げて何かを調査している。
「何か分かったか……?」
一際体格の良い騎士が、低い声で部下らしき他の騎士に状況の確認をする。
「一回で首を斬られています。凶器はこの斧で間違いないでしょう」
「そうか、残留した魔力はあったか?」
「それなんですが……何故か魔力検知が出来ないんです……」
「何……!? それはどういう事だ」
「どういう訳か妨害されているみたいで……」
「分かった、この街の中に犯人が居るかも知れん。早急に全ての出口を封鎖しろ! 検問所に並んでいる者は誰一人帰すな!」
「はっ!」
騎士達の声が、静かな夜の平原に響いた。
急に街の中が騒がしくなって来た……。
「どうしたのかしら…普段はこんな事無いのに…」
女の人の手伝いも終わりに近付いて来た。
荷物は重くて時間が掛かったけど、何とか運び終わった。
「ありがとう助かったわ。お礼に好きなの選んでね?」
僕達はお店の中を見て回る。全部良い匂い……僕はその中で一際目を引くパンを見つけた。
「あ、そのパンうちの店で一番人気なんだよ。飾らない甘さと、柔らかい食感が人気なんだ~」
女の人はパンを自慢気に話してくれる。
「これにする?」
「うん……!」
僕と女の子はパンを貰って、お店の中の椅子に座って食べる。
「頂きます……」
美味しい……牢屋で食べてたパンなんか比にならないくらいだ……!
あっという間に食べ終わってしまった。
「今日は泊まってって。二階の部屋を使っていいから」
女の人は僕達を二階に案内してくれる。そこには大きなベッドがあった。
「ごめんね。ベッド一つだけど良い?」
僕と女の子は頷く。
むしろ嬉しいくらい。僕には初めてのベッドだから。
「私は隣の部屋で寝てるから、何かあったら言ってね。じゃあお休み」
女の人はそう言って部屋から出て行く。
僕と女の子はベッドに入り、女の子が明かりを消してそのまま眠りについた。
次の日、明るい光で目を覚ます。
「おはよう! 朝だよ!」
眼を開けると、そこには女の人が居た。
「朝ご飯にしよ?」
僕と女の子はベッドから降り、階段で下の階に下りる。今までで一番快適に寝れた……。
「ふぁ~あ……」
僕は欠伸をする。
「こんなのしか無くてごめんね」
女の人は干したお肉と昨日僕が食べたパン、ホットミルクを持って来てくれた。
僕達がご飯を食べているとお店に誰か入って来る。見てみるとお爺さんだった。
「あらいらっしゃい。いつもありがとうね~」
このお店のお客さんみたい。
「いつものパンを――おや、この子らは? 綺麗な白銀の髪じゃのう」
「その子達ね、私の考えだと奴隷に出されてたんだと思うの。どうやってか逃げ出したんじゃないかしら……?」
「そうか……奴隷なんて酷い事を……」
「あ、そうそう。ねぇ、君達名前が無いんでしょ? 私が付けてあげる」
女の人は僕達の方に手を置いて考え出した。
「う~ん……君達そっくりなのよねぇ……」
女の人は考える。そして僕に向いて言った。
「じゃあ、君は右に痣があるから、"ライト"。君は左にあるからレフト、は語呂が悪いから……あ! "エル"はどう? 安直過ぎかしら?」
僕は繰り返す様に呟く。
「ライト……」
女の子、いや、"エル"は呟く。
「エル……!」
「二人共気に入ってるようじゃぞ?」
「良かった、安直だけど」
女の人は微笑みと苦笑の混じった笑みでそう言った。