Ep:2 解放 *
僕が地下牢の中で女の子に出会ってから何年も経った。勿論僕達は成長していく。女の子は僕よりも少し大きくなった。
服は何度か交換して貰ったけど、足は裸足。
今日も美味しくないご飯が来る――と思っていたら、いつもと違うご飯が運ばれて来る。
シチューと渇いたパンじゃない……? 見た事の無い良い匂いのする食べ物がお皿に乗ってる。
「お、お肉……」
女の子は唖然として呟く。
「なんだ、お前は知ってるのか。そうだ、今日は肉だ。お前らに奴隷として買い手が付いたからな、地下牢生活は終わりだ。街に行くのは一週間後、それまで肉を食って筋肉でも付けとけ」
説明をした後、大人はご飯を置いて出て行った。
牢屋生活はもう終わり……? って事は――。
「外に出られるの……?! 僕、空を見た――」
「駄目!」
ようやく外に出られると思っていたら、突然女の子が大声を上げる。
「え……」
「さっきの人、奴隷って言ってたでしょ……! 奴隷って言うのは、捨てられた子供とかを買い取って、強制的に働かせたり拷問したりする事なの……! だから私達、このままじゃ死んじゃうかもしれないんだよ……?!」
そんな、死んじゃうの……? 折角外に出られる時が来たのに……。
「そんなの嫌だ、死にたくない……! 折角君と会えて楽しかったのに……」
思わず僕は大粒の涙を零す。
「確かにこのままじゃ私達は死んじゃうかも知れない。でも、それを変えれば私達は死ななくて済むの」
女の子は真剣な顔で言う。少し怖さすら感じる表情。
「でもどうやって…?」
「さっき街に行くって言ってたでしょ。でも街までは馬車でも時間が掛かるの。だから、そこまでは大人しく行って、馬車から降ろされる時に走って逃げよう。そうやって隙を突かないと大人からは逃げられない……」
「でも僕、走った事無いよ……」
「じゃあ死にたいの……?!」
女の子の剣幕に、僕は思わず後退る。でも直ぐに答えた。
「死にたくない……!」
「じゃあ死ぬ気で走って。努力せずに後悔するより、努力して後悔した方が良いでしょ……」
僕は怯えながらも、覚悟を決めて頷いた。
街に行く事を伝えられてからの一週間は、あっという間に経った。
筋肉を付ける為だって言われて出されたけど、お肉は美味しかった。
女の子が言うには、奴隷に出すまでに少しでも太らせた方が良く見えるかららしい。やっぱり何でも知ってる……。
そして、運命の時は訪れた。
軋む音と共に木の扉が開き、大人が一人入って来た。
「出ろ…!」
大人は牢の中に入って僕と女の子の足の鎖を解く。そして僕は、産まれて初めて牢屋の外に足を踏み出した。