Ep:100 敵意
僕は覚悟を決め、剣聖様に向けて顔を上げて言った。
「剣聖様、貴方はどっちですか…!?」
剣聖様は、僕の質問に動揺一つ見せず、さっきまで変わらない表情で口を開いた。
「敵だ。と言ったらどうする…?」
「…!?斬ります…!」
僕は立ち上がり、腰の剣に手を掛ける。椅子がガタッと音を立てて後ろに滑る。剣聖様は、全く動じていなかった。
「無駄だ。どちらにせよ、今の君では私には勝てない」
剣聖様は立ち上がり、下ろしていた前髪を掻き上げる。そしてはっきりと目を開けた。僕やエルと同じ紅い瞳がこちらを向く。
「私は手を出さない。万が一君が死んだら話にならないじゃないか」
「くっ…!」
僕は唇を噛む。その瞬間、僕の視界に一本の光の線が見えた。その線は、右から僕の前を通過し、左側の窓を破って外に出る。僕は咄嗟に右を向き、防御の姿勢を取った。そこに、何者かの拳が飛んで来た。
「がぁッ!?」
構えた腕の間を通り、その拳は僕の腹に直撃する。僕は思い切り窓を突き破って花壇に突っ込んだ。
「うぅ…!」
僕は生け垣に埋まった体を起こし前を見る。そこには、こちらを見据える剣聖様と、同じく王様が居た。
「王様!?」
僕は剣を抜き、壊れた窓を挟んだ奥の王様を見据える。
「久しいな、ライトよ。そなたらから逃げ隠れている間に、我は強くなったぞ…?そちらはどうだ…!?」
王様はそう言って僕に剣を向ける。
「君は、私達が積み上げて来た地位を悉く崩してくれる。君を捕える為にした事を、君が壊していく。宛ら破壊神のようだ」
剣聖様の言葉を背に、王様は僕に向かって歩み寄る。
「一騎討ちでは負けぬぞ、ライト」
そう言って王様が剣を振ろうとした瞬間、その顔面を誰かが蹴り抜いた。
「噴き出す炎!」
そう叫び着地した誰かは、吹き飛ばされ、何とか体勢を整えた王様に言った。
「残念だったな!二人だぜ!」
僕の前に現れた赤い光の正体は、ブルートの炎だった。
「ブルート!何でここに!?」
「会議を放って一人でどこか行くから気になって付いて来たら、まさかこんな事になってるなんてよ。大変だと思わねえか?剣聖様よぉ?」
そう言ってブルートは部屋の方を向く。
「知った事では無いな。K、後は任せたぞ」
「御意」
「K?ぴったりな名前だな」
「裏切りの王様って意味でね!」
僕は王様に剣を向ける。いつの間にか剣聖様は部屋から居なくなっていた。王様も剣を構え、その剣に魔力を流す。
「ライトは回収する。ブルート、そなたはここで死んで貰う」
「死ぬのはどっちかな!?」
そう言うとブルートは踵から炎を噴き出し、王様に物凄い勢いで肉薄した。そして、灼熱に燃え上がる剣を王様に向けて振るう。
「戯けが」
王様は呟き、魔力防壁でブルートの剣撃を防ぐ。
「腐敗するもの」
王様は黒紫色の魔力の塊を生成し、それをブルートに向けて放つ。ブルートは防壁から飛び退き、その魔力を断ち切る。その後ろから僕は飛び出した。
「第一段階!」
王様は同じ様に魔力防壁を展開する。想定通り。僕は右腕で剣を全力で振り、空気の斬撃を飛ばした。
「なっ…!?」
防壁を貫通した斬撃を、王様は寸での所で躱す。斬撃は芝生の地面に大きな溝を作った。
「魔法防壁を貫通する空気の斬撃…第一段階だからこそできる事か…」
王様がそう言った次の瞬間、突然上から何かが勢いよく降って来た。その何かは、落下の衝撃で突風を起こすと、その次に熱風が吹き付けて来た。土煙の奥に、王様以外の二人の影が見えた。
「何故そなたらがここに…?」
「我らが主人の思し召しだ。戦闘の邪魔はしない」
赤いローブを身に着けた屈強な男は立ち上がり言う。ブルートは、そのローブの袖口を見て呟いた。
「X…?まさか…!?」
赤いローブの男はこちらを見据えて言った。
「火炎のXth、フレイム見参」
もう一人の緑のローブの男は細身で、同じくこちらを見据えて言った。
「旋風のXth、サイクロン見参」
「Xth…!?」
僕は思わず呟いた。
遂に百話だ…長かったような短かったような…
今回結構長くなっちゃったな…まぁ、百話だし良いか…




