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狂歌衰傑  作者: ニリとん
始まったのは旅の始まり、終わったのは彼女の孤独
7/9

極地での闘争、前編

お久し振りですぅっふ。

私立入試が『一段落』しましたので投稿します。

知ってるか?東京と大阪に遠征するんだぜ?

受かって進学が決定しましたら活動報告でご報告させていただきます。


今回、蟹ウサギさんがパラーチさんの餌食になります。

あと、途中で視点が切り替わります。

 シベリアの森。そこには様々な生物がいる。

 例えば、草食の動物。鹿やその系統の生物は地球上の何処にでもいるであろう。トナカイ、カリブー、ラクダ、ヤク。彼等は家畜としても使われる。ヤクってシベリアにいたっけ。ラクダなんてもっといねぇな。

 例えば、肉食の動物。猫の系統、もしくは犬の系統の生物も、世界各地に生息している。ライオン、トラ、チーター、サーバル、オオカミ、ジャッカル、ハイエナ。絶対的な最高位捕食者として、彼等が君臨していることは稀ではぬい。だとしてもシベリアにはシベリアなタイガーと北極なクマしかいねぇかと。

 そのどちらの分類にも入れ難い生物が、シベリアにいた。







 樹を薙ぎ倒し、その生物は逃走していく。

 陸上の生物として、いやその哺乳動物であろう素体からしておおよそ想像の出来ぬ速度で駆け、殻のついた耳で木々に大穴を開け、その中を通り抜ける。

 それを追う形で一回り小さな個体が数匹駆ける。


「Урааааааааааааааааааааааааааааааааа!」


 その背後から真赤の掛け声が上がる。

 彼等の進行方向の樹に紫の、眩く太い光の筒が突き刺さると、その樹は幹の内部を大きく膨らまし、内部から樹液を撒き散らして爆散する。

 散らばる木屑を物ともせずに彼等は進む。




 そうして北極近くの海岸線へと走りながら他の個体と合流していくと、彼等は海際のある地点で停止した。

 総個体数は48、大きさはバラバラ。


 彼等が此方に振り向いた時、彼等の目は闘志に燃え、深く紅く染まっていた。






 その身体は兎である。


 耳には蟹の鋏が付けられ、ゴツゴツとしたソレは左右非対称だった。


 鋏むことよりも殴りかかることの方が得意そうな鋏をカチカチと鳴らし、スズメバチと同じように威嚇をする。


 鋏の付け根から目の上にかけ、蟹の殻で覆われた頭部はそのまま兎のものである。


 しかしその頭部が顔を出しているのは殻の中からであり、胴体は全て覆われていた。


 四肢は外骨格には覆われず、代わりに胴体の側面から節足動物の脚が4対飛び出している。


 タカアシガニの如く細長いソレは彼等の体重を支えるのには到底不向きであるが、彼等自身の四肢を使わずして身体を支えていた。


 臀部からは遊泳のための鰭が付いている節足が生え、殻で覆われてしまった彼等の尾部の代用品となっていた。


 くりくりと、陽の光を反射しているであろうその目は、血では作られ得ない程の深紅に染まる。


 意思、感情、その他不必要な要素を第三者に極限まで切り取られ、空白にされた思考回路が敵を認識する。


 彼等は外殻紅兎(クラビット)


 哀れなる、空虚なる、矮小なる、暴虐なる、冒涜なる、深紅の被験体(ルビー)である。











 我等の背後のシベリアの森からがさがさと音が立ち、我等の追っ手がその姿を顕した。


 褐色の肌の霊長類、そして透き通る白肌の霊長類。

 我等をここまで追い、大規模な光線で消し尽くそうとしてきた危険性の高い生き物。


「…追い詰めた感じかな?」


 褐色肌が空気を震わせる。


「…途中まで記憶が無かったけど、そんな感じじゃない?」


 白肌も空気を震わせる。

 2体は協力関係なのであろう、我等はそう悟った。


 我等が2体を見、そして2体が我等を見る。



「…ドーモ、パラーチ=デス」

「ど、ドーモ、ケーレ=デス」


 2体が挨拶をしてくる。

 我等は礼儀を弁え、鋏を打ち合わせて名乗りとし、節足を曲げて軽く頭を下げた。


「やっぱり喋れないんだね」

「えぇ…兎が話すとでも?」

「だって…」


 2体が空気を震わせ合う。

 我々にとって、それは大きな隙であった。


 友が単独で殴りかかろうとするが、2体を観察する限り、恐らく褐色の方は動きを警戒しているだろう。


 少しだけ抑えさせ、だが、戦闘態勢にだけは入らせる。


「いや、そのさ?」

「何」

「こんなファンタジーナマモノじゃん?」

「ロシア褐色少女ってだけでファンタジーなんですがそれは?」

「アッハイ」


 2体が空気を震わせ合い、頭部の筋肉を歪める。


 友よ、今だ。




 友が節足を伸ばし、溜めていたチカラで飛び出す。


 元々の身体のバネも使い、褐色の方へ飛びかかった友は、決死で右の鋏を振るう。


 背後からの奇襲であり、絶対に気付かれないよう、跳躍の際に砂が巻き起こらぬように、また音を立てぬように襲いかかる。






「…見切った」


 友の攻撃は最小限の動きで避けられ、そして森の入り口の方へと投げ飛ばされる。


 友は樹の幹に激突し、背側と鋏、頭の殻に皹が入った。


 それでも友は諦めずに節足で立ち上がり、樹の上に登っていく。


 彼の褐色はそれを見て左前足を友のいる樹の上に翳し、白色に目配せする。


 そして、友が褐色に殴りかかろうと樹から特攻すると、一線。



 例の光だ。


 友は光の有する熱量に数本節足を焼かれ、しかしその光が通り抜けたことにより、粗く軌道の変更をして褐色の左前足を鋏で叩き付ける。


 鈍い打撲音と共に、褐色の左前足の関節から足先にかけてが砕けた。


「っ!」


 まずはこれで1つ。




 生じた隙に乗じて友が更に攻撃を仕掛ける。


 節足で褐色の腹部を突き刺し、後ろ足で蹴り込む。


 褐色は白色へと飛ばされて縺れ合い、倒れる。


 口から赤い血液を吐き出し、褐色はそれでもなお立ち上がる。


 友は静かに立ち上がるのを待ち、そして立ち上がるのと同時に褐色へ再度躍りかかる。




「かかったね!」

「ナイス、タイミング…Хорошо」


 白色の手から水が放出され、友が空へと吹き飛ばされる。


 そして褐色は右前足を突き出し、友が落下していく地点を予測して極大の光を放射した。


 友はそれに巻き込まれ、全身の殻と毛皮を焼かれた。


 火達磨となった友は海へと駆け込み、身体を焼く炎を鎮火する。


「…冷やしたね?」


 褐色は空気を震わせると友の方へと駆け、そして後ろ足で友に打撃を加えた。


 金属よりも硬く作られている殻が粉々に砕かれると、褐色は友を掬い上げる。


 友は左側の脇腹を大きく砕かれ、節足が3本取れて海に浮いている。


 虫の息となった友に、褐色は首の骨を折って逝かす。


 友よ、良くやった。


 功績は偉大だ。


 友が命を捨ててまでして褐色と白色の手の内を暴いたのは大きい。


 反撃の狼煙は上がる。





「ふぅ、かなり手こずらせてくれるね?」


 褐色は空気を震わせる。


「じゃあ少しだけ、本気で行くよ。生け捕りは無理だから…」


 褐色の肩に、目が生まれた。


「絞めさせてもらうね。重瞳(イロオション)




 友が破裂した。


 友が倒れた。


 友が掻き混ぜられた。


 友が削られた。


 褐色が肩の目を開けてから、友が次々に倒れていく。


 我等が出来ることは何も無く、友が跳び上がって反撃を試みるも、すぐに無力化される。


 そして次第に我等は数を減らし、私だけになってしまった。


「…んー、ティミがボスというか長かな?」


 褐色が私に肩を向けて構える。あの眼球は未知数ではあるが、だが褐色の切り札であることに代わり無いだろう。これを見切れば勝利は見えると思われる。


「言葉は不要か…!いや通じてるかすら不明だけどさ。いっくよん?」


 私が後脚に力を籠めると、左の鋏が耳と共に消し飛ばされる。


 跳ぶと同時に右側の節足が全て捻切られ、ぽとぽとと落ちていく。


 残った鋏を全力で振り抜こうとして、腹部に穴が開けられた。


 口から体液が漏れ出るが、しかし褐色の肩の眼球に鋏を叩き込む。


 褐色は口から短く呼気を吐き出し、その場に崩れ落ちた。私の眼前に見えるのは前肢が共に砕かれた褐色。その様子を見て私は少し満足した。


 友よ、今そちらに行こう…。
















 ケーレは驚いた。必ずかのじゃちぼーぎゃくの王を…そこまでを思い出してから頭を振り、目の前の状況を確認する。あれ、なんか聞いたことあったんだけどなー。まーいいか。である。


 まずクラビットとかいうヤベーイ生物を狩りに来てることがおかしいが、それでも未知なる食材を探求する姿勢は分かるので良いとしよう。


「だがッ!なァんで!そのクラビットとガチバトルしてんだよォッッ!ムカつくぜ!畜生!舐めてんかオイッ!」


 イタリアの氷菓子なギャングみたいに目の前の状況にキレ散らすケーレ。実際ケーレは水の首飾りの方が能力的には近いが。


 一緒に来たオトモダチのパラーチはクラビットに両肩を砕かれてダウンしている。そしてそのパラーチの能力でクラビット達は見ただけでSAN値がもぎ取られていくような状態になってしまった。果たして今ケーレはどんな事をすれば良いんだろうか。


「…おーいパラーチさん」

「…」

「…おーいおーい」

「…」

「…」


 声をかけたがパラーチは答えずに倒れている。とりあえずユサユサしに向かう。


 目の前に飛び込んでくるのはぐちゃあ☆したクラビットさん。おなかにおっきな穴を開けられている。吐きそう。中身が見えてる。ぶぉえぇ。


「…あれ?」


 そこでケーレは違和感を覚えた。


「……殻の方に…ウサギさんの肉…?それに、モツが……痕跡すら…。これって…」


 クラビットだって生物だろう。そこら辺にぶちまけられている他の個体でも、この個体でも、口から血液を吐瀉している。


 だが。


 臓物が見当たらず、骨組織と筋繊維しか詰まっておらず。()()()()()()()()()()()()()()()()()()?それとも、それとも…。


 誰かが生体を(つか)って生み出したのか?


 ケーレはこの事実に気付くと、ひたすらに波の寄せては返す大海原へと目を向けた。そこから不穏な鳴き声がしたからだ。


 その声は肉食獣の、その地で最強とされるモノの声であった。


 水を泳ぎ、肉を食み、そして破壊する。


 透明な毛を白く染め上げ、その獣は流氷の上から吼える。


 その獣は、ホッキョクグマ。


 純白の狩人である。

ケーレ「パラーチ…?お、おいパラーチッ!」

パラーチ「なんて声…出してやがる…、ケーレェッ!」


こんなネタをぶちこみたかったパラーチさん。

でも予想した流れと違ったため、未だに倒れたまま。


パラーチ(アイエエエ…)


次回、くまさんとパラーチ&ケーレが色々やります。

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