反撃
「聞いているのですかっ」
再び、副会長の罵倒が飛んでくる。
「お前こそ、オレの質問に答えろ!
「・・何で、私があなたの質問に答えなければならないのですか?」
そう言って、誤魔化す彼に落ちぶれたものだなとがっかりした。
ちょっと前まで彼はこんな態度をとるような人間ではなかった。
仲間だと思っていたが・・そうではなかったようだ。
「そうか・・非常に残念だ」
「それはどういう意味ですか?」
副会長の言葉を最後まで聞かずに会長は親衛隊に合図を送った。
パッと灯りが消えて生徒たちが騒ぎ出す。
「きゃあ、何、停電?」
「何ですか、誰か灯りを・・」
「美咲どこだ?」
「琉浮、私はここですっ」
「おい、どうなっているんだ?」
暗闇の中、動揺して手を伸ばし、副会長は琉浮と呼ばれた転校生を探す。
そんな騒ぎの中、再び灯りがつくと天井から降りて来た大きなモニターに映像が流れ始めた。
映し出された映像が生徒会室。
そこには一人で作業をしている会長の姿があった。
他の役員たちの姿はどこにもない。
只々、延々と会長の姿だけ。
早回しで流れ一週間後。
そこでやっと、他の役員たちが映し出された。
つまり会長以外の役員は生徒会室で仕事をしていないという証拠。
そして、役員たちの中にいたのはあの転校生だ。
「おい、日向!」
顔色の悪い会長が立ち上がったとたんその場に倒れた。
「あ、会長がっ!」
「美しい会長の顔に隈が・・」
「そ、そんな・・」
その後、会長は訪ねてきた風紀院長によって保健医に連絡され運び出された。
風紀委員長と保健医しかしらない真実。
それが今ここで暴露された。
ざわついていた体育館内がシンと静まり返る。
突き刺さる視線は、副会長へと注がれる。
「な、何ですかこれは・・」
映像を見て真青になっている副会長と役員たち。
その後も、映像は続く。
「何ですかあれは?私たちの気を引こうとしているのがバレバレじゃないですか」
「そうだね・・」
「何やってんだろうね?」
「そんなこと言うなよ、友達だろ?」
副会長の日向美咲、書記の上村忍、庶務の成田洋介と転校生の冬矢琉浮のこの会話にただ一人会計の向井智也だけは違った。
手を震わせ今にも泣きだしそうな顔でドアを見つめている。
「瑞希・・」
やがて何かを決心したのかソファーから立ち上がると走って部屋から出て行った。
「どうしたんだ、智也の奴?」
ポカンとする転校生に彼らは甘い顔で微笑みかける。
「放っておきなさい。それよりクッキーはどうですか?」
「クッキー!いる、食べるっ」
「じゃあ、紅茶も入れますね」
キッチンに消えた副会長の後、二人が両サイドをがっちり固めてクッキーを彼の口元に運んで嬉しそうに笑みをうかべている。
その後も仕事もせず倒れた会長の心配もせず、イチャイチャする光景が延々と流れたのだった。
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