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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

不死鳥は斯く語る

作者: 十叶 夕海

基本的な歴史の流れは変わらないけれど、天然養殖問わず、超能力者が歴史の裏にいたという世界の架空戦記。

歴史には残らないけれど、それでも彼らはいたのだから。


社長と報告をしに来た女装青年のお話。

社長の一人称対話のみで構成します。


※また、アブサンの禁止時期は1930年頃と史実より少し遅いぐらいで。

 アメリカの禁酒法を受けて、本格的に禁止になった感じ。


 おう、嬢ちゃんのトコの坊主か。

 休むと子だったからいいぜ、聞く。

 報告書、寄越せ。

 じゃなきゃ、夜着姿とは言え通さないよ。


 あん?「この格好なんだから、坊主は辞めろって?」

 暗い緑に白のラインに銀ボタン。

 銃帯と刀帯は茶色で、どこぞの制服っぽいじゃねぇか。

 下はスカ-トなんだから、嬢ちゃんって呼べって?

 痕跡は消したいんだろうが、その髪と瞳だと女装ぐらいじゃ誤魔化せないぞ?

 膨らんだスカ-トの下にも隠してんだろ?

 そこは、嬢ちゃんと一緒だよなぁ。

 おうよ、貴婦人の時もシスターの時も、動きにくそうな足首丈でふわっとした格好の癖して色々仕込んでいやがんだぜ?

 どこぞのターミネータメイドかよって思う程度にはな。

 投げナイフと鍔迫り用のナイフにパイナップルだろ、其処にハンドガンだからなぁ、あの嬢ちゃん。

 その為に、シスター服には不似合いな緩いパニエを仕込んであるんだぜ。

 しかも、ナイフ戦に関しちゃ、うちのヴィットリオに三本に一本は勝つんだぜ?

 おうよ、あのヴィットリオだ。

 《背中ダブルクロスエッジ》のヴィットリオだ。

 黒猫の嬢ちゃんじゃねぇぞ。

 あっちの黒猫の嬢ちゃんも強いが、アイツのは外道として強いからな。

 あん?勝てば官軍だ。


 酒?呑んでるぜ?寝酒(ナイトキャップ)にしちゃ強いって?

 ホンモノのアブサンが飲めないんだ、これぐらい許せって。

 復刻されてる?

 バカヤロウ、あんなんアブサンじゃねぇ。

 発泡酒とビールを一緒にするよか、ヒデェよ。

 おうよ、俺の青春は酒と硝煙で彩られてたからな。

 アル坊と知り合ったのも、その酒と硝煙の青春の頃だな。

 あぁ、あの黄昏(トワイライト)の頃だ。

 ナチ公が上り調子で、ゲルニカの空爆があった頃だ。

 映画みてぇだが、そうさな、ジャパニーの小説にある“(スモール・エス)”みたいだったぜ、お前の爺さん。

 お前さんの一族は、能力持ちが多いがガキまで借り出されてたからな、あの戦争の時は。

 うん?ああ、表には残せねぇだろうな、あのガラリヤの髭親父の信者には不都合だからな。

 良く言うだろう、信者と書いて儲けるっていうだろうジャパニーで。

 ガラリヤの髭親父も能力持ちだったって言うし、あの頃は今より多かったらしいじゃないか。

 表に残せないのは、俺達のような戦争を商売してる連中も同じだ。

 戦争をエレガントにやるような表の軍連中でも、エレファントな部分がない軍人は軍人じゃねぇしな。

 まぁ、ミーネの一件で暴れたのとお嬢ちゃんの牽制もあって正規軍はお行儀いいからなぁ。

 俺や坊主達をナメ過ぎだった。




 なるほどな。

 わかった、報告書は来週中にな。

 ……どうした?

 あん?うちの制服?おう、ジャパニメ-ションに出てきそうだろう。

 黒地に銀の縁取り、同じ系統の銀ボタン。

 切り替えしが腰で丈が腿半分かふくらはぎ半分のがあるな、ロングブーツは男女共用。

 女性が膝丈のタイトの奴だな。

 ……ホント、お前、いくつだ?

 あぁ、外見は二十歳そこそこだな、若造だ。

 だけどな、多少のカラーチェンジを含めてこれがナチスのが原型だって知るのはいねぇぞ。

 少なくとも、生きてる中じゃ、俺かお前のじいさん含む何人かだけだ。

 同じ“スリーパ-”かそれを知ってるじいさんだけなんだがな。

 ナチのエリ-ト用の没案なんだからな。

 …………“・・”か“・・・”か?

 じゃなけりゃ、“・・・=・・・”か?

 そりゃな、性格もだが、髪と瞳の色、同じだろ、お前さん。

 じいさんの影にいた珍しく長生きした“双子”でじいさんの叔父叔母だよな。

 知ってる連中はほとんど居ないし、その上で知ってる知っていた連中を俺は把握してる。

 ふん、やけに素直だな。

 うん?「俺にとっての『昔の歌』で、アル坊やが覚えているとは思わなかった」って?

 ナメんなよ、“・・・”。

 お前が、昔のお前があんな時代でも身内には自分が気を許した人間にはクソ甘い人間だってのは知ってる。

 見捨てられると思った場面でもお前さんは見捨てなかった。

 顔を合わせたことは少なかろうとそれを何も思わないわけじゃない。

 だからこそ、俺やアイツらはあのちょび髭ヒトラーを見限ったのさ。

 アンジェリカ嬢のあれこれがきっかけでもあるが、それでも、カナンの民へのあれこれはなぁ。

 お前さん方の死がきっかけであのちょび髭を見限ったが。

 その後、あいつらが死んだのはお前さんのせいじゃない。

 市民の間にいるとな、ゲルニカやアウシュビッツのあれこれは、ちいと堪えた。

 “人間として死にたい”が、あの嬢ちゃんの言葉だが、あの場所場所にあった死は“人間”の死に方じゃない。

 あのクソ長い名前の偏屈画家のゲルニカは、一種の真理を付いているわけだな。

 少なくとも、あの場所やナガサキヒロシマの原爆投下のあれは、人間がしていい死に方じゃねぇ。

 一発で死ねない。

 今でも、後遺症があるんだろう。

 あぁ、感傷さ!!

 どうであっても、下手すりゃスペイン人として一生を過ごすかもしれないが結局は、ナチスとして、それを裏切った上で俺は戦後を迎えた。

 あれだ、あのイギリスを壊滅させたナチス吸血鬼軍団の傭兵隊長じゃねぇがな。

 外から来た俺らを受け入れて、喰えないってもジャガイモを山盛りにしたりエールを奢ってくれたりよう。

 好きだった。

 あと一年二年もありゃ嫁さん貰って、んで子どもや孫が出来て死ぬような“スリーパ-”として終わったんだろうが。

 それが許されなかった。

 だけど、好きだったんだよ、ウソな俺らを受け入れてくれたおっちゃんおばちゃんたちがよ。

 俺は、外回りだったから、ゲルニカなんかの空爆が無けりゃそうなってたし、多分、空爆で死ぬってこともあったろうな。

 その上で、その上でだ。

 俺は、ナチスも好きだった。

 ヨーゼフも、俺には可愛い後輩だったしな

 おう、“死の天使”なんて名前の付いているあの狂科学者マッドサイエンティストだ。

 好奇心旺盛で、少しばかり良心のたがが緩い、な。

 あん、お前の国のテロリストもそうだったろうが、高学歴テロリスト。

 地下鉄でサリンだかマスタードだか撒いただろうが。

 あの時の祖国は、テロ国家だった、それは認めるがな。

 認めるが、ユダヤ人やジプジー、エホバのバカ野郎共も入ってんだろうが始末されてんだろうが。

 それにな、他の欧州連中は無かったことにしてるがな、ユダヤ系の扱いは“ベニスの商人”がデフォルトだぞ。

 祖国を持てず、かと言って華僑のように根付けず。

 キリスト教徒には、イエスの件を抜いても嫌われているから、金貸しになるしかない。

 一応な、ベニスの商人のユダヤ人じゃない商人の事例もあるが、ああまで酷くないぞ。

 金貸しに借りて返さないのは泥棒だろうが。

 




 でだ、なんで今更制服のことだした?

 あぁ、まぁ、そうだな、六十年以上過ぎたせいもあるんだろうが、戦争映画が多いな。

 ヒトラー暗殺モノやら、ゼロ戦系の特攻もの。

 色々とあるな、見て気付いたか。

 嬢ちゃんが言わないなら、聞くことじゃねぇぜ?

 お前さん方、《御伽噺の幽霊》がこだわってることと同じだぜ?

 前の世界も数えて数万年は、やって幸せに老衰で死ねてないんだろ。

 それでも、お前さん方はこだわってる。

 あぁ、そうだ。

 感傷だな、何処まで行っても感傷だ。

 ゲルニカの後、裏切った。

 ドイツに帰らなかった。

 それで、こういう火傷面フライフェイスになって終戦した。

 結局国籍自体も、投げて、ひいじいちゃんの国の言葉で不死鳥の意味のヴァルフレッドを名乗り。

 PMCを作ったわけだ。

 まぁ、内縁の妻とその孫子ができちまったがな。

 それでも、あの頃は忘れられない。

 今更忘れることも捨てることもできねぇな。

 一緒に抜けた奴らの中には、天涯孤独もいたから俺らがおぼえてなきゃ誰が覚えてる。

 ナチスを抜けて、色々やったからな、欧州の諸政府の反抗勢力で。

 そういう意味じゃ、お前さんの過去世むかしも感傷込みで忘れられない奴らだ。

 没案といえど、うちの制服の元ネタがナチス軍服なのはそういうこった。

 うちの制服と言う形であっても、覚えている奴がいて欲しい。

 そういう、感傷、だ。




 ホンモノのアブサン?

 しかも、フランス産?

 そりゃ、公爵様のセラーなら無事だろうが。

 日本で言ういいちこだったか、そういう酒だぞ?

 アル坊が?

 あの時に少し舐めさせたが。

 そうか、わかった。

 美味いつまみでももって来月にでも遊びに行くと伝えてくれ。



 あん?俺がストライプスーツで柄シャツ、トンプソン装備なのは何故かって?

 カッコイイじゃねぇか。





ウェットだけども、戦争は機械を使うけれど機械でするわけではないのです。

残ってる記録だけでも、“死の天使”のあの人。

サイコパスだけど、単純に知的好奇心旺盛なだけだと思う程度。

やったことは思い切り、アレだけど、アレや日本のマルタのデータがないならわからなかったことも多いんですよ。



個人的な意見も混ぜはしましたが、Mr.クラプトンのようにあの時代を生きた人の話を複数聴いた上の小話です。

取材はしましたが、フィクションです。



あれですね、“愛国者”の敵は、“愛国者”なんです。

“正義の味方”の敵が、別の“正義の味方”であるように。

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