遥か彼方より
開いて下さりありがとうございます。休憩時間にちょこちょこっと考えた文章です。
「遠い遥か彼方に居る君へ
僕は恋に落ちました、深い深い底なし沼のような恋に。それは沼と例えたけれど、水は透明に澄み清らかだ。そうだな、湖にしよう。この恋心は目が覚めると消える儚い夢。または永遠に消えることのない業火だ。僕の心は後者である業火のように燃え盛っている。一目見た時からあなたに心を奪われた。あなたはなんとも思っていないかもしれない、むしろ迷惑かもしれない、それでも僕は思いを伝えずにはいられないのです。それは僕の命の炎が先に消えかけているからです。思いを伝えずに炎が絶えることが単に嫌だったと言う、個人のわがままです。ごめんなさい。ただ、一人の男として気持ちの一つも伝えられないのでは死んでも死にきれないので言わせてください、好きです。と、、返事は僕の命が無に還った時でも構いません。風に思いを乗せてくれれば天に伝わると思います。最後までわがままを言ってすみません。手紙を受け取ってくれてありがとう。 奏」
そうつづられた手紙には、涙の跡があり少ししわしわだった。私はその手紙を書いた主に一目でも会いたい気持ちであった。それは単に命の終わりを宣告されているというところに慈悲を覚えたからだ。手紙の表に書かれた住所を頼りに私はまだ薄暗い街を歩き出した。狭い街であったため、すぐにたどり着くことができた。早朝にインターホンを押すことはすごく気が引けたのだが思い切って押すことにした。インターホンがなってものの数秒で母親らしき女性が扉を開けた。「悠さん?その手にある手紙は奏の書いたものね?来てくれるなんて嬉しい。さぁ上がって」私が来ることが予知されていたかのようにことは順調に進んだ、すぐに奏の部屋に案内される。「ようこそ、悠さん」元気のなさそうに奏はベッドに横たわっている。「小学校以来だね」そう言って手を握る。「ずっと私を思っていてくれたんだね」当時と変わらないあどけない笑顔を奏は向けてくる。「手紙読んでくれたんだね、嬉しいよ」そう言ってまた笑顔を向けてくる。「奏、あなた卑怯だよ。命の炎が消えるなんて言われたら来ちゃうに決まってんじゃん」自然と涙がこぼれる。「私さ、あなたのことはただの友達と思ってるよ、今も昔も。たださ思いが膨らむなんてことはあとに起こることなんだよね、だから返事はもうちょっと待っててよ」「うん、上でずっと待ってるよ、そろそろお迎えが来る時間かな」そう言うと奏はゆっくりと目を閉じる。「好きな人に見守られて逝けるのか、僕は幸せ者だ」「何言ってんのバカ」そして、奏の命の炎は静かに消えた。それから数年がたち私の心を込めた手紙を書いた。
「遠く空の向こうの君へ
私の気持ちがまとまるまで長い年月がかかったことをまずは謝ります。ごめんなさい。いい返事を期待して待っててくれたのか、それともほかの人にうつつを抜かしているのかは定かではないけれど、私の答えを伝えます。奏、あなたは最高の幼なじみであり、親友であり、私の最初で最後の初恋の人でした。奏、私はあなたのことが好きで好きでたまりません。あなたが空で待ち続けてくれるとわかっている今、私の命の炎が消える時、何も寂しくないと思います、天の上にいる君がいつまでも私を見守ってくれるから。すぐそちらで一緒に暮らせると思います。なのでもう少し待ってて。 悠」
そうつづり、その手紙に火をつけ風に流す。天の向こうの君に届きますように。
おわり
いかがでしたか?少し鳥肌立ったりしましたか?もしそうなったのであれば少し嬉しいです。