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午前2時

作者: doubter



その日の夜はとても寝苦しい夜だった。



午前2:00

なんて事はないただの夜。そんな中、筴夜は起きていた。正しくは「起きてしまって寝れなくなった」だが、本人にしてみればどちらも同じ事だった。気温25度をわずかに下回っていて、熱帯夜の称号こそ逃したが十分寝苦しかった。なにより、7月の頭の気温としてはけっこう高いものである。その気も無しに今はベランダにいた。

「あ゛っぢ〜。もういっそここで寝てえ」

特に誰に向けた訳ではないただの独り言。しかし一人暮らしの彼には元から返事を期待してはいなかった。部屋の中を見れば男の一人暮らしの部屋としては割と片付いているがやはり散らかっていて、余計に暑さを感じさせた。気温も確かに涼しかったがあの暑苦しい部屋に戻る気がしない、それが筴夜のベランダに居る理由だった。

 そんな退屈な時間をしばらく過ごした。腕時計もはずし、携帯電話も部屋にあるのでどの位時間が経ったのか分からない。暑さは時間の感覚まで筴夜から奪っていたらしい。

「喉…渇いたな。小銭は……あぁ、あったあった」

散歩がてら自販機でジュースでも買って来よう。そう思い、着ていたTシャツを脱いで簡単に着替えた。見た目的にはそのまま出かけてもよかったのだが、あまり落ち着かないし汗ですっかりベトついていて気持ち悪かった。

「よし、じゃあ行きますか」

また誰にでもない独り言。今回は寝具のベトつきから解放されたという事でやや元気だった。もうすっかり眠気はない。むしろ彼は寝るという選択肢さえ忘れていた。

現代というのは便利なもので、道を歩けば5分以内に自動販売機が見つかる。別に探していなくてもだ。今回もご多分に漏れずものの3分で目的地に着いてしまった。ここまでの道のりは無性に暑く感じられた。夜はやたらに涼しくなるらしい砂漠に八つ当たりしたかった。

 ガタン、自動販売機からあの真っ黒な炭酸飲料の落ちる音が響く。思っていたよりも大きな音がして筴夜は少しばかし驚いた。

「しかし、なんでこんな暑いんだ?」

そうぼやきながら自動販売機の中の炭酸飲料を取り出す。

なんだよ、思いっきり常温じゃねぇかよ

筴夜は心の内で悪態を衝きつつも、散歩を長引かせる口実ができたと思っていた。もちろん、誰に言い訳するわけではないし、その必要も無いのだが


ふと、何の気もなしにアスファルトの上に寝転がってみる。見えたのはそこら中に張り巡らした電線電話線と淀んだ空だった。空はとても汚れていて、もし匂いがあるならばヘドロの匂いがしそうだった。よく分からないがただ曇ってるだけかもしれない。しかし、筴夜にはそうは思えなかった。空が青くてきれいなんてのはもう信じられなかった。誰かがペンキで着色している、そんな訳ないと分かっているけれども、そのイメージが頭から離れなかった。


ハァー

ため息をついて、起き上がった。筴夜は煙草は吸わないが、ため息のつき方はヘビースモーカーのそれに似ていた。大分長い時間横になっていたのだろうか。背中は思いっきり叩かれた時のようにジンジンと熱をもって鬱陶しかったし、脇に置いておいた炭酸飲料はぬるいを通り越してやや熱い位だ。いずれにしても、もう飲めたものじゃない。

「もういいや。帰ろ」

そう言ってまだ一口も飲んでないペットボトルをそのままゴミ箱に入れて帰途についた。もう一ヶ所自動販売機を探してもよかったのだが、もはやそんな気分ではなかった。帰ってもまた寝れないのだろうが、それもどうでもよかった。

ただあの偽物で、汚れた空に見下ろされながらは歩きたくはなかった。

初めて短編を書きました。う〜ん、少し短いですねw

勝手が分からないので、感想などでご指摘やご指導頂けると嬉しいです。

連載のお暇書き!!もよろしくお願いします!


以上、doubterでした!

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― 新着の感想 ―
[一言] このような何気ない日常を描いた作品は、このくらいの長さが丁度いいんじゃあないでしょうか?? スラッと気持ち良く読むことが出来ました。
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