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義教の野望  作者: ペロリん千代
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平穏な日々?

1430年 (正長二年)足利義教

このところ平穏な日々が続いている。結構なことだ。俺は今、左大臣である一条兼良の元へ向かっている。この人は結構有名な公家だ。史実では9代将軍足利義尚に政道を教えたりした。有職故実や和歌にも通じているらしいな。数年後には関白になるだろう。


なぜ俺がこの人の元に向かっているかというと朱子学について教えてもらうためだ。朱子学は江戸幕府に保護され、文治政治のために奨励された学問だ。俺は朱子学について詳しく知っているわけではないが安定した政権のために役に立つだろうか。


「上様、間もなく左府様のお屋敷になります」


近習の一人が教えてくれた。中々綺麗な屋敷だ。流石は左大臣邸、もっとも幕府の御所には劣るけどな。屋敷の前で下馬し、歩いて玄関に向かう。


「おお、よう参られました」


この人がそうか。中々賢そうな人だな。わざわざ待ってくれたのか。よく見るととても嬉しそうだ。俺が朱子学について教えて欲しいと言ったせいかな。


それとも俺を利用しようとしているのか。この人には二条持基という政敵がいるからな、幕府について貰ったら優位に立てるとでも考えたのかもしれない。まあ俺にとっても藤原氏長者になるであろう人物と親交を深めるのは悪い事ではない。朝廷工作が楽になるからな。


「出迎え感謝する」


「うむ、では早速屋敷で話し合おうかの。麿はそなたが朱子学について興味があると聞いて楽しみに待っておったのじゃ」


おお、思ったよりノリノリだった。これは暫く帰れそうにないな。


「はっはっは。世を治めるために必要になるかもしれぬと思いましてな」


「ほっほっほ。朱子学で世を治めるか。中々面白い事を考える方じゃ。ではこちらへ」


「うむ」


ようやく一条兼良との話が終わった。もう陽が傾いている。二刻も掛かったようだ。話というより兼良の一方的なマシンガントークだったな。相槌を打つのに疲れてしまった。


そして朱子学だが大陸から伝わったままでは駄目だな、統治に不都合な内容が幾つもある。林羅山みたいな人がいればいいんだが……。これを変えなければならないんだが大変そうだ。守護達に広めるのは暫く保留だな。後でどうするか考えよう。今回は一条兼良と仲良くなれた事で良しとしよう。さっさと帰るか。





「なんだと?今なんと言った?」


「は、ははっ、大内周防守様が討死なされたとの事です」


帰ってきたらこれだ。大内盛見が討死?にわかに信じ難いな、史実よりも1年早い。討死するなと言っておいたのに、完全にフラグだったようだ。余計な事言わんとけばよかった。あと君、まだ俺の顔に慣れてないのか?へこむからいい加減慣れて欲しい。


どうやら俺が山名を後詰めさせると言ったのがまずかったようだ。大内は俺が実力を疑っていると勘違いしたらしい。だから自身の武威を見せつけてやると。そして焦ったばかりに不覚をとって討ち取られた。俺はただ単に九州をさっさと平定したかっただけなんだがな。


大内家は大混乱らしい。そりゃそうだ、急に当主が死んだのだからな。そして跡継ぎ争いが起こった。候補は二人、大内持世と大内持盛だ。さて、どっちを応援するか。九州が平和ならばあえて放置して大内を弱体化させるのだが、現状こうもいかない。うっかりしていると大友や少弐がのさばってくるだろうし。ここは史実通り持世を応援しよう。優秀なのは歴史が証明している。


大内盛見が死んだ事で北九州は混乱したが幕府にとっては良い事もある。これで大友と少弐を討つ大義を得たのだ。なんせ盛見は幕府の御料所の代官だったのだ。これを討ったという事はすなわち幕府に敵対する、というわけだ。だが九州遠征は暫く後になるだろう。大内の家督争いが終わらないと何もできない。ま、それまでは内政を頑張るとしよう。


勘合貿易の再開や将軍の直属の軍である奉公衆の整備をしなければならない。やる事は非常に多いがそれが成果を挙げるのを見るとやる気が出るんだ。後は跡継ぎを作らなければならんな。ブラックすぎるだろう、将軍ってのは。こんなだとは思わなかったよ。臨時報酬くらい欲しいもんだ。


奉公衆は3代目義満が御馬廻として将軍直属の親衛隊を組織した事に始まる。そしてこの御馬廻、中々強いんだ。山名氏清の反乱である明徳の乱や大内義弘の反乱である応永の乱で目覚ましい活躍をした。


だが4代目の義持の時代では幕府軍は畠山氏らの軍にかなり依存していた。それゆえ軍事行動を起こそうとしても守護の同意を得なければ何もできないのだ、不便極まりない。


俺はこの奉公衆を義満の時代よりも発展させるつもりだ。必ず役に立つ。だが気をつけなければならない。幕府が強大な力を持つと守護が警戒してしまうからな。これもゆっくり進めなければならない。


勘合貿易は早めに再開したいと思っている。これは幕府に莫大な富をもたらすからだ。なぜかというと、この貿易は朝貢貿易だからだ。つまり子分である日本が親分である明と交易するということ。明は親分として日本にいい所を見せなければならない。


具体的には滞在費その他一切の費用は明が負担し、関税は無し。さらにこちらから輸出した商品には明は贈与という形で価格以上の金を支払う。聞いた話によると元金の5、6倍の利益が出たらしい。これは義満も笑いが止まらんかっただろうな。


これで幕府財政はさらに良くなるだろう。実際現在の幕府の財政は結構いい感じなのだ。無駄遣いはしてないし軍事行動も起こしていない。何より正長の土一揆の被害が史実よりも小さかったしな。この状態でさらに増収なのだ。俺も笑いが止まらん。これで得たカネを使って奉公衆を整備する。一万五千は動員できるようにしたいな。後で港を整備しとかないと。


既に明に使者を送っている。朝廷が嫌な顔するだろうな。ざまあみろ、今まで邪魔してきた事へのささやかなお返しだ。だがこれにも注意点がある。これをすると大内氏と細川氏が力をつけてしまうのだ。大内氏が力をつけすぎるとまた討たなくてはいけなくなるな。


……一つ一つ進めていっているはずなのに問題がなくならない。どういう事だろう?

朱子学って言葉、この頃からあったのかな……。なんか違和感

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