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義教の野望  作者: ペロリん千代
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新体制に向けて

1429年 (正長元年)三宝院満済

足利義教様、元々優秀だと聞いていたから将軍となった後もその手腕を発揮してくださるだろうと期待しておったが、どうやら私の期待を良い意味で裏切ってくれたようじゃ。幕府もしばらく安泰じゃろう。上様の前にはまだまだ難題が積み重なっておるがこれで当分の間は落ち着けるの。

「満済様、上様がお呼びです」

「ふむ、承知した」

また相談かの。上様は私のことを頼って下さっている。ならばそれに応えねばなるまい。


「よく来たな、門跡どの」

「またご相談でございますかな」

「うむ、父上の政について聞きたくてな」

確か上様は鹿苑院様の政を理想としておるのじゃったな。

「承知しました。では拙僧の知る範囲でお教えしましょう」


そして私は上様に一刻もの間鹿苑院様の政について語った。


「感謝するぞ、門跡どの。非常に参考になった」

「今度は何をなされるので?」

「うむ、訴訟と政務の効率化を図るつもりだ。特に訴訟については早急に進めねばならん」

確かに上様の仰る通りじゃ。現在は多数の訴訟が放置され、賄賂が横行しておる。これを放置しておけば幕府は信用を失うじゃろう。

「将軍親裁の裁判を推し進めるのですな」

「うむ、余の就任に合わせて人事を刷新しようと思ってな」

「それは良きことにございます」

「それと門跡どの、そなたに頼みたいことがあるのだ」

「はて、何でございましょうか。拙僧にできることなら何でもいたしましょう」

何であろうか?

「うむ、先日斯波左兵衛督に管領の就任を頼んだのだが頑なに拒まれてしまってな。別の者に管領を任せようと思ったが山名や細川、赤松は左兵衛督以外に適任者は居らぬと言う。どうしようか迷ってしまってな。説得を手伝って貰えるか?」

「なるほど、承知しました。助力させていただきましょう」

「頼むぞ」

左兵衛督殿か。あの方は頑固な所があるからの、説得は一筋縄ではいかないじゃろう。

「大した期間ではないというのに…。そんなに嫌か?管領というのは」

「まあ大変な仕事ではありますな。どれくらいの期間任せるおつもりなので?」

「3年ほどだな」

「3年ですか…。2年に減らしてみては?そしてこれ以降は管領になっていただかない、という条件で説得してみましょう」

「うむ、それで頼む」

上様は苦労なさっている。上様の理想はいつになったら実現するのじゃろうか。私がそれを見ることは叶わぬかもしれぬが、出来るだけ早く訪れて貰いたいものじゃ。


1429年(正長元年)足利義教

満済との話は中々為になった。にしても良く知っている。その事を尋ねたら日記をつけているのだと教えてくれた。確か『満済准后日記』とか言われているものだろうな。後世まで残っているやつだ。できれば俺の事は知勇兼備で超イケメンだとか書いて欲しい。この顔はあまり好きじゃないんだ。せめて後世の人々にはイケメンと呼ばれたい。


にしても疲れた。斯波義淳への管領就任のお願いは何とか上手くいった。だけど最終的に俺は義淳の屋敷を訪れて満済と共に直談判しなければならなかったんだ。どんだけ嫌なんだ。まあ俺もあんな仕事したくないけどな。結構な権力を持っているんだが心労が多そうだし。権力欲がある満祐なんかは喜んでやりそうだけど。とはいえようやく体制が整ってきたな。管領がいつまでも決まらないんじゃしまらないからな、良かった。


これから管領の権力を抑えていくつもりだが義淳はむしろ喜びそうだな。何たって仕事が楽になる。あいつは狩りが趣味だったり数奇に傾倒したりしているらしい。変な奴だ。面白いから放っておいてやる。最低限の仕事だけしてくれれば俺は満足だからな。くれぐれも余計なことをしないようにしてほしい。


「上様、大内周防守様がおいでになっています」

お、大内盛見(もりはる)が来たようだ。こいつは大内家の当主であり、九州探題と共に九州で大友や少弐らと争っていた奴だ。

「うむ、会おう」

俺にお願いがあるのだろう。大丈夫、ちゃんと聞いてやるさ。


「よく来たな、周防守」

「はっ、就任の挨拶に遅参したこと、申し訳ございませぬ」

「良い、そなたも忙しかろう。気にしておらぬよ」

「は、ありがとうございます」

ま、九州は今きな臭いからな。むしろ来てくれたことに感謝しているくらいだ。

「して、要件があるのだろう。聞こう」

「はっ、少弐や大友を抑えるのにご助力頂きたく」

「良かろう、そなたを筑前の代官に任命する。暫くは奴らを抑えておけ。後で山名に後詰めさせよう」

「は、感謝致します」

「くれぐれも討死などせぬようにな」

こいつは史実では1431年に討死するからな。忠告しとかないと。フラグではないよね。お、そうだ。あれを渡しておこう。

「周防守、そなたに太刀を与える。これで幕府に従わぬ不届き者を討つが良い」

「はっ、必ずや」

これで大丈夫だろう。西は討伐の目処が立ったな。東にも手を加えておこう。


現在、関東や奥州には京都扶持衆という将軍と直接主従関係を結んだ武士がいる。こいつらを使って幕府は反鎌倉公方活動を行わせているのだ。最近の鎌倉公方は露骨に将軍に逆らおうとしているからな、こいつらを支援して活動を一層強めさせるのだ。これで鎌倉公方を牽制する。


最近の京と鎌倉の関係は最悪と言っていいくらい悪化している。客観的に見ても戦は避けられないだろう。にもかかわらず俺が鎌倉公方に対して敵対行動しようとすると斯波義淳や畠山満家が反対する。義淳め、俺が管領に就任させたことに恨みでも持ってんのか。強硬に反対しやがって。お陰でこそこそするしかないじゃないか。まあ鎌倉については最後でいい。ゆっくりと進めていけばいい。邪魔者が死んでからが本番だ。目に物見せてやるよ、持氏。

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