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義教の野望  作者: ペロリん千代
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関東平定

1437年(宝暦四年) 足利義教


先年に西日本がほぼ平定できた。一年程民を慰撫して力を蓄えた。ようやく関東だ。


関東では山内上杉が没落した。上杉清方と憲忠は信濃守護の小笠原へと身を寄せて持氏に対抗している。


副将軍となった範忠は駿河から伊豆を攻撃しているが、関東を支配する鎌倉公方と駿河一国の守護ではやはり地力が違う。次第に押されているようだ。最近はしきりに援軍要請の手紙が届く。これから兵を集めると言っておいた。


治罰の綸旨が出されたが効果はあまり出ていない。やはり押しているからだろうか。史実ではなかなか効いたんだけどな。


「さて、ようやくか」


「ですな。これを討てば日の本の武士は等しく上様の前にひれ伏しましょう」


赤松満政が答える。


「そうだな。最近の持氏の振る舞いは目に余る。早急に討たねばならぬ」


「関東管領のことですな」


「そうだ」


関東管領と上様憲忠を信濃へ退却させた後、持氏は勝手に相模の扇谷上杉家当主、上杉持朝を関東管領に任命した。扇谷上杉は山内上杉と仲が良くないからな。関東管領に任命されて天狗になっているかもしれんな。


それに持氏は独自に関東の大名に対して安堵状を出している。自分が将軍だと言わんばかりの態度だ。全く気に入らない。さっさと討ってしまおう。助命はした方がいいだろうか。約束した憲実は死んだからな。反故しても大丈夫だろうけど。殺すなら皆殺しだな。中途半端に残しておくと結城合戦や享徳の乱みたいになる。


誰を送ろうか。前回サボった細川は決定だな。あとは斯波、土岐、畠山でいいか。そんなに数は要らないだろう。負けそうになったら離反するのは容易に想像できる。東海道から鎌倉を一気に攻め落とす。俺は京に留まり、今後の統治について考えればいいか。





皆を広間に集めた。これが最後の戦になればいいんだけどな。関東の統治に失敗すればまた混乱が起こる。それは避けなければならない。どっちみち反乱勢力はぶっ潰すんだ。鎌倉に本拠を移すのも面白いかもな。……やめよう。反対されるのがオチだ。


「聞け。朝敵、足利持氏が関東で好き勝手している。この増長を許してはならん。……斯波左衛門佐」


「はっ」


「朝廷より賜った錦の御旗、そなたに渡す。駿河の今川と共に討ち果たして来い」


「はっ」





あの後、斯波左衛門佐らに命令して、戦の支度をさせた。……こんな時満済がいればな。相談できないのがもどかしい。義賢はまだまだ青い。これから成長すれば次期将軍の時には良き相談役になってくれるだろう。それまで俺は一人で頑張らなきゃな。


それにしても今回は出兵がスムーズに進んでよかった。守護どもも多少は反感を抱いているんだろう。実際持氏は好き勝手しているからな。




1438年(宝暦五年) 斯波義有


ようやく軍勢が集まり、鎌倉へ向けて出陣した。総勢三万を超えるほどの大軍勢だ。そして信濃の小笠原信濃守殿や今川民部大輔殿、篠川御所様も此方へお味方している。つまり鎌倉殿は全方位を囲まれたのだ。よほどのことがない限り負けることはないだろう。



「これはこれは、斯波左衛門佐殿。お久しぶりでござる」


「おお、民部大輔殿ではないか。以前京で会った時以来だな」


今川民部大輔殿が話しかけて来た。以前話し合った時はお互い当主ではなかった。だが上様のはからいで私は斯波家当主に、民部大輔殿は今川家当主になった。真、何が起こるかわからぬものよ。


「これで全てが終われば良いのだが……」


「全ては我等の働き次第、という訳だな」


そう、これで終わらせねばならぬのだ。長年の戦で民は疲弊している。戦が終われば民も穏やかに暮らせよう。


「敵は箱根で待ち構えているらしい」


「数は?」


「およそ二万」


なるほど、二万か。数の上ではこちらが上だが相手方には地の利がある。油断はできぬな。





「かかれ!」


箱根では大激戦となっている。敵は一色宮内大輔直兼。鎌倉殿の軍事の中心となる人物だ。つまり鎌倉殿はここが抜かれるのをなんとしてでも防ごうとしていると言っていい。ならば尚更負けられぬ。


敵は地の利を生かして攻めてくる。箱根には両軍合わせて六万近くもの軍勢が集結できるような広大な平原はない。敵二万に対してこちらも二万ほどが戦っている。こちらは全軍で戦えない。畠山と土岐は後ろで接敵できないでいる。戦況はなんとか互角、といったところか。


「左衛門佐殿!」


民部大輔殿か。如何したのだろうか。


「我等が囮になる。敵を引きずりだす故、宮内大輔を討ちなされ!」


なんと、囮になる⁈だが……。


「それでは民部大輔殿が危険ではないか。その役は我ら斯波がしよう」


「いや、我等はここで一度戦っている。敵は一番我等を警戒しているはずだ。ならば囮にかかる筈」


「……承知した」


私がそういうと民部大輔殿は馬を引いて自陣に戻っていった。不安ではあるが民部大輔殿ならば見事成し遂げるだろう。ならば我等は確実に一色宮内大輔を討ち取るのみ。


「常治!弓衆を集めよ!」


「はっ。選りすぐりの精鋭を集めまする!」


甲斐常治。傲慢ではあるが有能な男だ。こういう時には役に立つ。


常治に命じてしばらくして弓衆が百ほどあつまった。そしてそれと同時に今川勢がゆっくりと下がり始める。敵が今川を討ち取ろうと前に出てくる。今だ!


「弓衆、放てぇぇ!」


弓衆が矢を放つ。矢は敵の指揮官目掛けて飛んで行く。幾らかが討たれ、敵が動揺する。だが宮内大輔を討ち取った気配はない。高台からではないとうまく狙えぬか。


だが敵が前に出て来たことで隙間が開いたのだろう。そこから畠山勢、土岐勢が突撃していった。敵が大きく動揺する。そして一部の戦線が崩壊していった。勝負あったな。


「ゆけ、敵を討ち取れ!」


敵はがこちらの追撃にたまらず潰走していく。深くは追撃できぬか。まあ良いだろう。これで敵も離反者が出てくる筈だ。





「大勝でしたな」


「民部大輔殿のおかげだ。だが肝を冷やしたぞ」


私の言葉に民部大輔殿は“はっはっは”と笑う。大した胆力よ。平気であのようなことを行うとは。私にはとてもできぬな。


「さて、鎌倉を落としましょうぞ」


「そうだな」


我が軍はそのまま鎌倉へ向けて進軍する。鎌倉についた時、そこはすでに何者かによって攻められていた。

我が軍へ使者と思しき者が向かってくる。


「何者の使いか」


「相模守護、三浦時高」


なるほどな。すでに離反がでたか。三浦時高といえばかなりの重臣。そのような者に見放されたとあっては終わりであろうな。


使者の後、三浦時高本人が供回りを数人連れて陣まで来た。


「御苦労だった。鎌倉殿は?」


「永安寺に居られます。降伏なさると」


なるほど、降伏か。随分呆気なかったな。


「他の戦線は如何したのだ」


「北部では小笠原殿、上杉殿の軍勢に打ち破られたようです」


離反者が出るわけだ。これだけ負ければな、致し方あるまい。


「持氏様と御子息の命は保証するとの言伝を預かっておる。処分は京にて伝えるとの仰せだ」


「はっ。上様のご温情に感謝いたします」


さて、これで戦は終わった。あとは上様に任せよう。関東が如何なるかは上様次第か。

そろそろ終わります。


次作については現在資料を漁っている途中です。戦国物になりますが投稿するのはしばらく後になる予定です

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