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義教の野望  作者: ペロリん千代
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悩みの種

すいません、一度は書いたのですが気に入らなくて書き直してました。小説を書くのって大変なんですね。

1428年 (応永35年)足利義宣

俺は今、還俗して義宣と名乗っている。義教じゃないのと言いたいかもしれない。でもこの名前は将軍宣下の時に変えるつもりだ。ここらへんは、史実と同じでいい。これからのことをある程度理解しているというのが俺の唯一の強みなのだ。余計なことを変えてこの強みを潰すわけにはいかない。


将軍宣下は来年になるだろうな。本当はすぐに将軍宣下を受けたかったのだが公家どもが反発した。曰く『法体の者に官位を与えるのは罪人に官位を与えるのと同じ』だとさ。舐められたものだ。公家なんておとなしく和歌でもやってればいいのだ。でも幕府はこれに従うしかない。


室町幕府というのは、将軍の権力が弱いのだ。義満の時代は将軍の専制政治を行っていたが次代の義持のときには重臣たちとの合議制になっていた。足利将軍は権力が弱いが故に国内統治のためには朝廷の権威を利用するしかない。だから朝廷に対してあまり強く出られないのだと思う。ましてや俺は無位無官なのだ。ここで朝廷と対立してしまえば、権威付けに支障をきたす。これだけは避けたい。将軍が空位である期間はできるだけ短いほうがいい。ましてや現在の状況ではなおさらだ。すでにいくつもの騒乱の種が発生している。


まずは関東。ここは鎌倉公方と言われる足利尊氏の次男基氏の子孫が継いでいるのだが、義満の時代から宗家と対立してきた。奴らは将軍位を狙っているのだ。特に現在の鎌倉公方、足利持氏はその野心が人一倍大きい。こいつは史実で永享の乱を起こし、義教に討たれたやつだ。まあ馬鹿なんだろう。俺はこいつを討ち、幕府の勢力を拡大しなければならない。いつかは必ず戦が起こるだろう。今は不味いんだ。やるなら10年後くらいにしておいて欲しい。


二つ目は九州だ。ここは今、大内、大友、少弐などが勢力争いをしている。ちなみに九州探題は渋川満直(みつなお)である。足利氏一門なのだが大した力は持っていない。こいつは今大内氏を頼っている。だから幕府も大内に近い。


九州はさっさと安定させて関東に大軍を送れるようにしたいからな、宿老の一人である山名時熙(ときひろ)でもつけて早めに討伐したいと思ったのだが……、事はそううまく運ばないようだ。


三つ目は朝廷問題だ。現在の帝、称光天皇は病気がちで子供がいない。だからかつての南朝勢力がうごめき始めているのだ。北朝の血が途絶えたのなら次は南朝だと。やっかいなことだ。すでに南朝の後胤である小倉宮が大覚寺を出奔し伊勢の北畠満雅に身を寄せているという。この問題をはやく解決するために俺は宿老たちと話しあって伏見宮彦仁王を即位させるべく動いている。


最後は一揆だ。史実でも正長の土一揆が起こった。すでにいつ一揆が起こってもおかしくないところまで来ている。厄介なことだ。こいつらは徳政を求めるのだろう。だが当然幕府はこの要求を受け入れるつもりはない。なんせ幕府の収入の一つに土倉、酒屋役というのがあるのだが、ここからの収入は馬鹿に出来ないほど大きいのだ。今、勘合貿易をしていない中でこの収入はかなりの割合を占める。徳政をするということはここからの収入を落とすということになる。


だが土民どもは幕府に拒否されるやいなや土倉、酒屋を襲い始めるだろうな。そして借金の証文を焼いて私徳政をしようとする。とんでもない奴らだ。だから俺は山名、赤松、細川、畠山らに命じて史実よりも強固に京周辺の防備を固めさせている。家臣たちにそこまでする必要はあるのかと言われたが、とんでもない。農民だからと言って馬鹿には出来ない。


これらが今俺が片付けなければならない問題だ。流石に多すぎだろう。眩暈がしそうだ。朝廷の問題はすぐに終わりそうだが他のはどれも厄介なものばかりだ。

時間をかけて一つずつ片付けていくしかない。


1428年 (応永35年) 三宝院満済

今、私は義宣様に呼ばれて御所に向かっている。朝廷の問題で義宣様に命じられたことがあり、その結果の報告に向かっているのじゃ。


「おお、門跡どのか。よう来た。で、如何だった、院の御意志は」


「は、どうやら伏見宮の彦仁王の即位を望まれているようでございます」


「ふむ、では重臣たちとの会談で決めた通りにするか」


「は、それがよろしいかと」


私は義宣様に命じられて院が誰の即位を望んでいるのか確認に行っていたのじゃ。案の定、院は彦仁王を望んだ。これで大丈夫じゃろう。あとは北畠を下すだけとなるの。


「これで問題の一つの解決の目処がだったな。ところで土民たちの様子は如何だ?」


「いつ爆発してもおかしくないかと」


「京周辺の防備は余の言った通りになっているか?」


「大丈夫でございます。ですが…このように複数の守護を動員するのはやりすぎでは?」


「余としてはまだ足らんぐらいだ。土民の力を馬鹿にしては痛い目を見るぞ」


「はっ」


どうして義宣様はこんなにも恐れておるのだろうか?まるでどうなるか知っておるようじゃ。まあ気にしてもしょうがあるまい。


「はあ」


ふと義宣様がため息をついた。


「どうかなさいましたか」


「いや、これからやらねばならぬことを考えるとな」


「ほっほっほ。拙僧をいともたやすく言いくるめた義宣様らしくありませんな。ひとずつやっていくしかありませんの、すべてを一気に終わらせられるような完璧な存在などどこにもおらんのですから」


「それはわかっておるがな、ただ…」


「ただ?」


「余は将軍の権威を父 の代と同じにまで戻したいのだ。ただそのためには余は恐怖によって政を行わねばならぬのかと思ってな」


「そんなのは必要ではありませぬ。鹿苑院様も守護を討ちはしたものの、時には寛大な処置をしておりました。硬軟織り交ぜてやっていけば良いのです」


「そうか……。感謝するぞ、門跡どの。お陰で決心がついた」


「それはようございました」


義宣様の道は険しい。私が支えなければ……。





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